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第二十一話
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しおりを挟む「魔物なら不死の魔物を退治しなければ事態は収まりません。無償で構いませんから、僕達も中に入れてくださいませんか?」
テルラがお願いすると、役所の人は渋い顔をした。
「そうして貰えるのはありがたいのですが、ネズミが外に出ない様に門をガッチガチに封印しているので入れないんですよ。ここは南門ですが、北門の方にも同じ様に避難キャンプが有り、そちらも入れない様にしてあるはずです」
「もしや、わざわざ門前にこうして集まっているのは、ネズミが逃げたら分かる様に、ですか? 数が増えて飢えているのなら、必ずどこかを齧るから」
ミマルンが言うと、役所の人は頷いた。
「その通りです。入り口付近はネズミに怯まない者を配置しています。本来なら兵士や武芸の心得が有る者が適任なんでしょうが、そう言った人達はキャンプの外周で魔物や獣を注意して貰ってます。街を壁で囲っているのは、獣や野盗から住民を守るためですからねぇ。その外に居る今は、住民の安全を最優先にしなければならないんです」
「まぁ、街を囲んでるのは木の壁だからねぇ。逃げようと思ったらどこからでも逃げられるでしょ。ネズミは何でも齧って穴を開けるし」
カレンの独り言を聞いたレイが首を傾げる。
「門前以外にも人員を配置してネズミの流出を警戒していますか?」
「そうしたいのはやまやまですが、人員が足りないので無理ですね。全くしてない訳ではありませんが、警戒しているかと問われたら、されていませんと応えるしか」
レイは視線を落として数秒考えてから続ける。
「それなのに門前だけ警戒していると言う事は、門の開閉自体は可能のままにしてある、と言う事ですか? ネズミの穴が開かない様な補強は一切なされていない?」
「おっしゃる通りです。魔法通信で中と連絡し合って細心の注意を払う、と言う条件は付きますが、門も通用口もすぐに開けられます。食糧の補給が必要ですからね。怪我人の心配も有ります」
「では、僕達が中に入る事自体は可能ですよね?」
諦めないテルラに渋々頷く市の職員。
「僕の一存では判断出来ませんが、街の許可が出れば、数日後の補給の時に入れるかも知れません。補給の食料以外タダ働きですが。どうされますか?」
「無理に入る必要は無いよね、テルラ。街中に溢れるネズミの中から一匹の不死の魔物を見付けるなんて、普通に無理だよ。だって、ネズミって見えないところに居る物だし。私が不死の魔物だったら、絶対外に出ない。だから早く次の街に行こう」
ネズミ塗れの街に入りたくないと言う願いが漏れ出ているカレンの言葉に、真面目なミマルンが同意する。
「無理と言う事は無いでしょうが、相当な運と時間が必要でしょう。ただのネズミである可能性も捨てられませんし、目的地ではない街に長期間留まるのは効率が悪いと言わざるをえません」
「そうですね。正直、ハンターが数人増えたところで、と言える状況ですね」
苦笑いする役所の人。聞きようによっては街を見捨てたいと言っているに等しいカレンの失礼な言葉を、むしろ肯定している。
「こんな事態ですので、被害の保証をして欲しいと王都と交渉中です。同時に騎士団にも協力要請をしていますので、近い内にそれなりの人数で街に入って頂く事になるでしょう。レインボー姫様にネズミ退治をしていただく必要性は低いかと……」
役所の人も自国の王女がネズミ退治をする事を好ましく思っていない様だ。常識で考えれば、国民に愛される美しい姫がやる仕事ではない。
「……そうですわね。テルラ。ここは……」
言葉少なに伺うレイに頷いて見せるテルラ。
「不死の魔物退治は確立されていますので、後は騎士団にお任せしましょう。僕達は休憩を兼ねた一泊の後に出発します。それで構いませんね?」
パーティメンバーは揃って頷いた。
テルラがお願いすると、役所の人は渋い顔をした。
「そうして貰えるのはありがたいのですが、ネズミが外に出ない様に門をガッチガチに封印しているので入れないんですよ。ここは南門ですが、北門の方にも同じ様に避難キャンプが有り、そちらも入れない様にしてあるはずです」
「もしや、わざわざ門前にこうして集まっているのは、ネズミが逃げたら分かる様に、ですか? 数が増えて飢えているのなら、必ずどこかを齧るから」
ミマルンが言うと、役所の人は頷いた。
「その通りです。入り口付近はネズミに怯まない者を配置しています。本来なら兵士や武芸の心得が有る者が適任なんでしょうが、そう言った人達はキャンプの外周で魔物や獣を注意して貰ってます。街を壁で囲っているのは、獣や野盗から住民を守るためですからねぇ。その外に居る今は、住民の安全を最優先にしなければならないんです」
「まぁ、街を囲んでるのは木の壁だからねぇ。逃げようと思ったらどこからでも逃げられるでしょ。ネズミは何でも齧って穴を開けるし」
カレンの独り言を聞いたレイが首を傾げる。
「門前以外にも人員を配置してネズミの流出を警戒していますか?」
「そうしたいのはやまやまですが、人員が足りないので無理ですね。全くしてない訳ではありませんが、警戒しているかと問われたら、されていませんと応えるしか」
レイは視線を落として数秒考えてから続ける。
「それなのに門前だけ警戒していると言う事は、門の開閉自体は可能のままにしてある、と言う事ですか? ネズミの穴が開かない様な補強は一切なされていない?」
「おっしゃる通りです。魔法通信で中と連絡し合って細心の注意を払う、と言う条件は付きますが、門も通用口もすぐに開けられます。食糧の補給が必要ですからね。怪我人の心配も有ります」
「では、僕達が中に入る事自体は可能ですよね?」
諦めないテルラに渋々頷く市の職員。
「僕の一存では判断出来ませんが、街の許可が出れば、数日後の補給の時に入れるかも知れません。補給の食料以外タダ働きですが。どうされますか?」
「無理に入る必要は無いよね、テルラ。街中に溢れるネズミの中から一匹の不死の魔物を見付けるなんて、普通に無理だよ。だって、ネズミって見えないところに居る物だし。私が不死の魔物だったら、絶対外に出ない。だから早く次の街に行こう」
ネズミ塗れの街に入りたくないと言う願いが漏れ出ているカレンの言葉に、真面目なミマルンが同意する。
「無理と言う事は無いでしょうが、相当な運と時間が必要でしょう。ただのネズミである可能性も捨てられませんし、目的地ではない街に長期間留まるのは効率が悪いと言わざるをえません」
「そうですね。正直、ハンターが数人増えたところで、と言える状況ですね」
苦笑いする役所の人。聞きようによっては街を見捨てたいと言っているに等しいカレンの失礼な言葉を、むしろ肯定している。
「こんな事態ですので、被害の保証をして欲しいと王都と交渉中です。同時に騎士団にも協力要請をしていますので、近い内にそれなりの人数で街に入って頂く事になるでしょう。レインボー姫様にネズミ退治をしていただく必要性は低いかと……」
役所の人も自国の王女がネズミ退治をする事を好ましく思っていない様だ。常識で考えれば、国民に愛される美しい姫がやる仕事ではない。
「……そうですわね。テルラ。ここは……」
言葉少なに伺うレイに頷いて見せるテルラ。
「不死の魔物退治は確立されていますので、後は騎士団にお任せしましょう。僕達は休憩を兼ねた一泊の後に出発します。それで構いませんね?」
パーティメンバーは揃って頷いた。
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