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第十八話

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 テルラは青褪めているが、何も見えない仲間達は戸惑うばかりだ。
「聖女様が食べられたって、どう言う意味っスか? テルラ」
「そのままの意味です、プリシゥア。黒風船が突如合体し、建物ほどもある巨大な顔になったんです。そして、そのまま……」
 剣の柄に手を添えているレイが隊列を崩して前に出て来る。
「巨大な顔を倒そうにも、見えないのではどうにもなりませんわ。どうやって助けましょうか」
「テルラに見て貰って、居るところを攻撃すれば良いんじゃない? 取り合えず攻撃力を奪ってみる?」
 カレンは額にダブルピースを当て、いつでも戦いを始められる形になっている。
「待ってください、様子がおかしいです!」
 緊張感から早口になるテルラ。
 しかし他の者には相変わらず何も見えないので、何か分かる事はないかと周囲を見渡してみる。
 明らかに周囲の空気が変わっていた。先程までギスギスしていた若者達がポカンと呆けた顔になっている。
「突然巨大な顔が消えました。次元の穴も有りません。これは一体……?」
「もしや、周囲の黒風船も消えていませんか? 通りの様子もおかしいですわ」
 レイに言われ、テルラは指の輪をそのままにして周囲を見る。
「消えていますね。見えなくなった? それとも――」
「聖女様が巨大な顔の中で何とかしてくれたっスかね。ちょっと訊いてくるっス」
 プリシゥアは、近くに居た兵士に話し掛けた。
 雑談風味な会話を交わした後、一行の許に帰って来る。
「あの兵士さんもこの状況を元に戻ったって認識してるっス。クエストクリアっスね」
「クリア、なのかなぁ? 私達、何もしてないけど」
 ダブルピースを下すカレンの肩に手を置いて微笑むプリシゥア。
「私達がここに来て『見えない相手に何かをした』から状況が元に戻ったって、あの兵士さんが証言してくれるって約束を取り付けたっス。まぁ、王女の言葉を疑う役所も無いと思うっスが、念のためっス」
「普通のハンターならそんな証言は信じて貰えないだろうねぇ。優遇されてるねぇ」
 カレンがレイを見て言うと、銀髪美女は剣の柄から手を放して肩を竦めた。
 プリシゥアもレイを見ながら戦闘用のグローブを外す。
「状況を証明出来ないっスから、王女の威光を利用しても満額報酬は無理かも知れないっスが、貰えるなら貰うっス。旅費は必要っスからね」
「とにかく平和になったのなら良かったです。聖女様の事は気掛かりですが、問題が解決したのですから、無事に帰れたと信じましょう。僕達もカミナミアに帰らなければならないので、速やかに旅費を補充しましょう」
 指の輪を解いたテルラは、その足で仲間達と共に役所に向かった。
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