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第十八話

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 この街の勇者や役所の人に聞き込みをした結果、乱心する者が多く発生する地域が分かった。訊いたらすぐに返事が来るほどハッキリと数が多く、事件の初期から大勢の青年団や兵士がその区画を警備しているそうだ。
 しかしテルラ達はこの街の地理に詳しくないので、役所の人に簡単な地図を描いて貰った。
「特殊なクエストですが、クリアへの道筋が確定しました。時間が経つと人的被害が積み重なってしまうので、間を置かずにチャレンジします。今回の脅威は魔物ではなく、人間です。しかも本当の相手は見えない存在です。ですので、今回のみ隊列を変えます」
 テルラに従い、プリシゥアが先頭、レイがしんがりになった。
「レイの剣は、よほどの状況にならない限り、抜かないでください」
「相手は黒風船に憑り付かれているだけの市民ですものね。分かりましたわ」
「プリシゥアは、乱心した人がこちらに向かって来た場合のみ、怪我をさせない様に倒してください。黒風船の浄化は聖女様にしか出来ないので、それの補助になります」
「難しいっスが、不埒者を倒せば良いってのは了解したっス。肝心の聖女様も見えないんスが、私はどう動けば補助になるんスかねぇ」
 眉をハの字にしたプリシゥアが頭を掻くと、横の何もない空間から声がした。
「プリシゥアさんは思う通りに動いて結構です。私が存在すると皆様が認識して姿が見える様になってしまったら帰れなくなる恐れが有るので、なるべく気にせずに」
「私は?」
「カレンは、プリシゥアが倒した人を拘束してください。これを」
 テルラは、一メートルほどのロープ三本をカレンに持たせる。
「後ろ手で縛ってください。きつく縛らなくても大丈夫です。聖女様が黒風船を浄化してくださればすぐに大人しくなるのは留置場で確認済みなので、一時的に動きを止められればそれで済みます」
「一時的って事は、大人しくなったらすぐに解いても良いの?」
「正気に戻ったのなら解いても良いでしょう。大人しくならなかったら、縛ったまま放置するしかないでしょうね」
「縛ったまま放置するとロープが足らなくならない? 三本しかないし」
「大人しくならなかった時は、聖女様に異常が起きて浄化出来なくなったと考えられます。作戦の要が不全になった場合は、他のクエストと同様に強行突破か撤退かの二択になるでしょう。逃げる時は反転するのでレイが先頭になります。抜刀の判断はレイに任せます」
「了解です。プリシゥアほどではありませんが、体術の心得も有ります。素人相手なら、剣は不要でしょう」
「僕もなるべく左目を使わず、体力を温存します。現場に着いたら、次元の穴を探すためにガーネットの左目を使い続ける事になりますから。では、進みましょう」
 地図を持ったテルラの道案内に従い、乱心した者を恐れて閑散となっている道を進んだ。
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