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第十五話
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一人残されたカレンは、失礼にならない程度の視線をゴスロリ少女に向けた。自分と同じくらいの年齢の様だが、表情に覇気が無いので年齢不詳になっている。
「えっと、私カレン。よろしく」
「私はポツリ。よろしく」
声にも活力が無く、とても小さいので聞き取り難い。ここが洞窟内じゃなかったら風の音で掻き消え、何て言ったかと聞き返していただろう。
「お姫様達は行っちゃったけど、私達はどうしたら良いのかなぁ」
「私はまだやる事が有るので、そっちに行くわ」
そう言ったポツリは、メイド達に「どこ?」と聞いた。メイドは迷い無く有る方向を指し示したので、ここの地理に明るい様だ。渡りに船とばかりに、再び話し掛けるカレン。
「お姫様達が戻って来るまで一緒に行動しても良いかな。来たばっかりで右も左も分からないから」
「別に良いけど。本を探すだけだよ」
「何の本?」
「色んな国の歴史から魔物の発生した原因とかを調べるの。そんなの無意味だと思うんだけど、どんな小さな手掛かりでも見付けないとウチの国で暴れている魔物を退治出来ないから」
「退治出来ないって事は、もしかして不死の魔物?」
「不死? そう言われればそうね。倒しても復活する、氷の魔物よ。そのせいで、寒気が南下して来る季節でもないのに凍死者が出てるのよ」
「それならテルラに話を聞いた方が早いかも。さっきの金髪の男の子。彼は女神様から直接魔物退治をお願いされたからね。テルラ達の仲間になる時、魔物の発生した原因とか聞いた気する。難しくて覚えてないけど」
「マジで? 彼に話が聞ければ、山の様に有る本で調べ物をしなくて良いのね?」
「多分だけどね。こっちも不死の魔物の情報を求めてるから、話を聞きたいと思うよ」
一転、明るい笑顔になるポツリ。
「わーい、じゃ仕事終わり。面白そうな小説でも買おっと。カレンも何冊か買っちゃえば? ランドビークの姫様がお金出してくれるよ」
「タダなら買おうかな――っていつもなら言うけど、本に興味無いからなぁ。あ、欲しい本は有るか」
「ここでも本は高級品だから、買わないと損だよ。持って帰って売っても良いし」
「お金かぁ。でも、荷物が重くなるのはなぁ」
「ふーん。私、もう行くよ? 人の事気にしないタイプだから」
「どうぞどうぞ。私も適当に付いて行くから」
メイド達に案内され、壁の中に有る本屋に入った。本は手書きの模写か版画で作られるので、王都で一番大きい本屋でも品揃えは多くない。しかし、この本屋はその何倍もの量が有る。
「ふわーぁ、さすが図書都市。伊達に洞窟掘ってないなぁ」
常識を覆されたカレンは、感心しながら本棚を眺めた。表紙がこちら側に向けられた本が平積みで並んでいる。
ポツリは目的のジャンルが決まっているらしく、メイド達を引き連れて一直線に本棚のひとつを目指して行った。
「レインボー姫のお連れ様。何か有ればお申し付けください」
メイドの一人がカレンの脇に残り、そう言ってくれた。
「ありがとう。って言っても、私が欲しい本は無いだろうしなぁ」
「ここはランドビーク中の知が集まっていますから、無いジャンルはございませんよ。外国からも本を集めていますし」
「そう言われてもなぁ。ん?」
『君と僕の錬金術』と言うタイトルの本が目に付いた。
手に取り、開いてみる。会話的な文章が並んでいるので、小説の写本の様だ。さすがに本格的な錬金術の書が普通の店で売ってる訳がない。
「錬金術に興味が有るの?」
歴史と社会学の本を一冊ずつ持っているポツリがカレンの手元を覗いた。
「うん、まぁ、ちょっとね。そっちは凄い難しそうな本を持ってるね」
「元々はこれを目的に来たからね。買っておけば仕事してましたよって言い訳出来るし。――それ、買う?」
「錬金術の勉強になりそうもないし、止めとく」
「ガチめの錬金術の本を探す?」
「うーん。仲間に見付かったら面倒だから止めとく」
「あ、そっか。女神教の国では錬金術はご法度だっけ」
「うん。ダメらしいね」
「ウチの国、北のハープネット国の宗派だとそんなに敬遠されてないんだ。職人が使う技術のひとつみたいな感じで。だから、カレンの国で禁書でも他の国なら平気って本ならどこかに有るはず。もちろん原本は触れないけど、写本なら読めるし、需要が有って量産されてたら買える事も有るよ」
「へぇー。……でも、うーん、どうしよう」
「秘密にしておけば大丈夫だって。姫様達が帰って来るまでヒマだし、付き合うよ。私も前から錬金術に興味有ったし。金が生み出せるなら、働かなくても生きて行けるじゃん?」
「金を作るのって難しいんでしょ? 人造人間と同じくらい」
「詳しくは知らないけど、まずは勉強しなきゃ。知らなきゃ行きたい道の入り口にも立てないし。あ、これシオン教の教えね。ウチの宗派」
「知らなきゃ入り口にも立てない、か。そっか。じゃ、探すだけ探してみよっか」
「じゃ、行こう。で、カレンは何を研究する錬金術の本を探す?」
「人造人間。人造人間が作れるなら、その練習として人体の一部が作れるかもって思って」
「え、グロい。何でそんなもんが作りたいワケ?」
ポツリが嫌悪感を顔に出したので、カレンは慌てて言い繕う。人体の一部を作りたいなんて言ったら、普通は引く。
「ちょっと前に別れた仲間が居てね。別れた原因が右目が潰れたからなの。だから、錬金術が使えれば失った右目を復活させられるかも、ってね」
「なるほどね。そんな事が出来る様になったら凄いじゃん。滅茶苦茶大勢の人が救えるじゃん。頑張ってね」
「うん」
「えっと、私カレン。よろしく」
「私はポツリ。よろしく」
声にも活力が無く、とても小さいので聞き取り難い。ここが洞窟内じゃなかったら風の音で掻き消え、何て言ったかと聞き返していただろう。
「お姫様達は行っちゃったけど、私達はどうしたら良いのかなぁ」
「私はまだやる事が有るので、そっちに行くわ」
そう言ったポツリは、メイド達に「どこ?」と聞いた。メイドは迷い無く有る方向を指し示したので、ここの地理に明るい様だ。渡りに船とばかりに、再び話し掛けるカレン。
「お姫様達が戻って来るまで一緒に行動しても良いかな。来たばっかりで右も左も分からないから」
「別に良いけど。本を探すだけだよ」
「何の本?」
「色んな国の歴史から魔物の発生した原因とかを調べるの。そんなの無意味だと思うんだけど、どんな小さな手掛かりでも見付けないとウチの国で暴れている魔物を退治出来ないから」
「退治出来ないって事は、もしかして不死の魔物?」
「不死? そう言われればそうね。倒しても復活する、氷の魔物よ。そのせいで、寒気が南下して来る季節でもないのに凍死者が出てるのよ」
「それならテルラに話を聞いた方が早いかも。さっきの金髪の男の子。彼は女神様から直接魔物退治をお願いされたからね。テルラ達の仲間になる時、魔物の発生した原因とか聞いた気する。難しくて覚えてないけど」
「マジで? 彼に話が聞ければ、山の様に有る本で調べ物をしなくて良いのね?」
「多分だけどね。こっちも不死の魔物の情報を求めてるから、話を聞きたいと思うよ」
一転、明るい笑顔になるポツリ。
「わーい、じゃ仕事終わり。面白そうな小説でも買おっと。カレンも何冊か買っちゃえば? ランドビークの姫様がお金出してくれるよ」
「タダなら買おうかな――っていつもなら言うけど、本に興味無いからなぁ。あ、欲しい本は有るか」
「ここでも本は高級品だから、買わないと損だよ。持って帰って売っても良いし」
「お金かぁ。でも、荷物が重くなるのはなぁ」
「ふーん。私、もう行くよ? 人の事気にしないタイプだから」
「どうぞどうぞ。私も適当に付いて行くから」
メイド達に案内され、壁の中に有る本屋に入った。本は手書きの模写か版画で作られるので、王都で一番大きい本屋でも品揃えは多くない。しかし、この本屋はその何倍もの量が有る。
「ふわーぁ、さすが図書都市。伊達に洞窟掘ってないなぁ」
常識を覆されたカレンは、感心しながら本棚を眺めた。表紙がこちら側に向けられた本が平積みで並んでいる。
ポツリは目的のジャンルが決まっているらしく、メイド達を引き連れて一直線に本棚のひとつを目指して行った。
「レインボー姫のお連れ様。何か有ればお申し付けください」
メイドの一人がカレンの脇に残り、そう言ってくれた。
「ありがとう。って言っても、私が欲しい本は無いだろうしなぁ」
「ここはランドビーク中の知が集まっていますから、無いジャンルはございませんよ。外国からも本を集めていますし」
「そう言われてもなぁ。ん?」
『君と僕の錬金術』と言うタイトルの本が目に付いた。
手に取り、開いてみる。会話的な文章が並んでいるので、小説の写本の様だ。さすがに本格的な錬金術の書が普通の店で売ってる訳がない。
「錬金術に興味が有るの?」
歴史と社会学の本を一冊ずつ持っているポツリがカレンの手元を覗いた。
「うん、まぁ、ちょっとね。そっちは凄い難しそうな本を持ってるね」
「元々はこれを目的に来たからね。買っておけば仕事してましたよって言い訳出来るし。――それ、買う?」
「錬金術の勉強になりそうもないし、止めとく」
「ガチめの錬金術の本を探す?」
「うーん。仲間に見付かったら面倒だから止めとく」
「あ、そっか。女神教の国では錬金術はご法度だっけ」
「うん。ダメらしいね」
「ウチの国、北のハープネット国の宗派だとそんなに敬遠されてないんだ。職人が使う技術のひとつみたいな感じで。だから、カレンの国で禁書でも他の国なら平気って本ならどこかに有るはず。もちろん原本は触れないけど、写本なら読めるし、需要が有って量産されてたら買える事も有るよ」
「へぇー。……でも、うーん、どうしよう」
「秘密にしておけば大丈夫だって。姫様達が帰って来るまでヒマだし、付き合うよ。私も前から錬金術に興味有ったし。金が生み出せるなら、働かなくても生きて行けるじゃん?」
「金を作るのって難しいんでしょ? 人造人間と同じくらい」
「詳しくは知らないけど、まずは勉強しなきゃ。知らなきゃ行きたい道の入り口にも立てないし。あ、これシオン教の教えね。ウチの宗派」
「知らなきゃ入り口にも立てない、か。そっか。じゃ、探すだけ探してみよっか」
「じゃ、行こう。で、カレンは何を研究する錬金術の本を探す?」
「人造人間。人造人間が作れるなら、その練習として人体の一部が作れるかもって思って」
「え、グロい。何でそんなもんが作りたいワケ?」
ポツリが嫌悪感を顔に出したので、カレンは慌てて言い繕う。人体の一部を作りたいなんて言ったら、普通は引く。
「ちょっと前に別れた仲間が居てね。別れた原因が右目が潰れたからなの。だから、錬金術が使えれば失った右目を復活させられるかも、ってね」
「なるほどね。そんな事が出来る様になったら凄いじゃん。滅茶苦茶大勢の人が救えるじゃん。頑張ってね」
「うん」
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