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第十四話

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 誰かに目撃される事もなく港の外周を走ったグレイは、倉庫らしき小屋の陰から港を見た。人対人の、血生臭い戦いが繰り広げられている。
 オカロ・ダイン小隊も戦いに加わっており、戦闘のプロである騎士に斬られて血の海に沈んでいる海賊が何人も居る。
 猟師の男や勇者っぽい死体も有るが、戦況は街側有利な感じだ。
「ハンターごっこをしているあいつらと一緒だと縁遠い光景だな。――あれがリバース海賊団の親分か」
 巨大な海賊船の上で巨躯を揺らして指示を飛ばしている男に長銃を向けるグレイ。しかし、親分の横で狙撃銃を構えている数人の男が邪魔で引き金が引けない。
「長年畜生働きをしてきた男はさすがにスキを見せないな。下手に撃ったら絶対に反撃が来るな」
 命あっての物種、無茶は出来ない。
 とは言え、このまま引いたらクエスト参加が認められず、報酬はゼロだ。
 再び港を見る。
 海賊側に元仲間の顔なじみは無い。
「誰を撃っても問題は無いな。次はこっちの身の安全の確認、と」
 周囲の建物を確認する。敵の狙撃手が潜んでいそうな高い建築物は無い。灯台替わりの塔の様な櫓は有るが、丸太を組んだだけのスカスカな構造なので誰も潜んでいない様子が丸分かりだった。海風で揺れない様にそんな形になっているのだろう。グレイの方もあそこを利用する事は出来ない。
「銃での反撃は船からのを注意すれば良いだけか。楽勝な時ほど気を抜かずに、っと」
 銃の心得を教えてくれた母の言葉を復唱しながら、手頃な海賊の頭を撃ち抜いた。
 手応え有り。
 すぐに小屋の陰に隠れ、次の狙撃ポイントを探して走る。
 人を殺すのも魔物を殺すのも、やる事は同じ。無心で引き金を引くのみ。
「無心は良いが、働いてるアピールも必要だな。姿を隠したままだと、どうすれば効果的かな」
 陸揚げされている漁船の陰で長銃を構えると、オカロ・ダインが戦っている様子が見えた。部下の騎士達と連携して戦っている。さすが、強い。海賊が港から出られないのは彼等の奮闘のお陰だろう。
「援護は要らないだろうが、彼を助ければアピールになるな。良し」
 船の上からの狙撃の的にならない様に、オカロ・ダインは止まる事無く動いている。その動きを読んで、彼に切り掛かった海賊の頭を撃つグレイ。聡い彼なら、今の狙撃が国境要塞で共闘したハンターの物だと気付いてくれるだろう。
「ん? 煙幕? ――撤退か」
 海賊船から手の平大のボールが投げ込まれ、それが白い煙を吹き出した。
 海風に煽られ、あっと言う間に港全体が白い煙に包まれた。海賊はそれに紛れて敗走し、お互いに多数の死者を出しつつもなんとか追い返す事が出来た。
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