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第十二話

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 要塞から避難して来たランドビーク兵やカワモトがテントを張っていた広場に武装した人が集まった。100人を超える大人数だが、今回は日帰り侵攻なので、補給部隊は街中で待機している。
「北へ向かう軍に参加される方はこちらに、西に向かう軍はあちらです。次回の本番も同じ分け方になりますので、各自覚えておいてください」
 案内役の男性が大声で人員を整理している。
 人間同士でする戦争の訓練を受けている騎士兵士にはこんな点呼は必要無いのだが、相手は魔物、二国混合軍、噂を聞き付けてやって来た数組のハンターパーティも居る、等の理由であえてこうしている。
「状況はいかがですか? レインボー姫」
 エルカノート援軍の長であるジェイルク・ジールドがテルラパーティの様子を窺いに来た。彼の率いる援軍はエルカノートの騎士なので北軍のメンバーなのだが、王女が西軍に参加するので、今回のみ護衛として彼直轄の小隊が西軍に参加している。
 ランドビークからの援軍がまだ到着していない西軍担当のランドビーク避難兵と、たまたま近くに居たので参加させられたオカロ・ダイン率いる護送団だけでは少ないからだ。
 オカロ・ダイン本来の役目である女魔法使いの護送は、必要最小限の人員に任せる事になったそうだ。女魔法使いは観念して大人しくなっているし、逃走出来る体調でもないので、問題は無いだろうとの判断だ。
「準備万全ですわ」
 メンバーを代表して応える銀髪のレイ。銀色の鎧とラベンダー色のスカート姿で広場の中心に立っている。
「要塞内を攻めるので、曲がり角確認用の手鏡を支給します。使い方は分かりますか?」
「いいえ。みなさんはどうですか?」
 レイが訊くと、仲間達は揃って首を横に振った。
 なので、ジェイルクは身振りを加えて説明してくれた。
「廊下の角や部屋の中を確認する時、不用心に頭を出したら敵に見付かります。ですので、この小さい鏡越しにこっそりと向こうを見るんです。理解出来ますか?」
「なるべく敵に見付からない様に手だけを出して、鏡に映った向こう側を見るんですね」
 テルラが理解を示したので、ジェイルクは全員に手鏡を配った。割れない材質で作られているので曇りが酷い。お洒落用ではないので、微妙な色合いが見れなくても構わないのだろう。
「使う時は光の反射に気を付けて。一応全員に配りますが、みなさんの場合は非戦闘員であるテルラ君とカレンさんが確認し、戦闘員のレインボー姫様達は戦闘態勢で待機した方が良いでしょう」
「役割分担ですわね。分かりましたね、プリシゥア、グレイ」
「了解っス」
「おう。まぁ、隊列的に俺は後方を警戒する役だから、緊急時以外は関係無いがな」
「準備完了ですね。では、テルラ君。手を挙げましょう」
「はい」
 ジェイルクとテルラが案内役の男性に向かって手を挙げ、準備完了の合図を送る。
 あちこちで隊長やリーダーが手を挙げていて、案内役の男性はそれを指差し確認してメンバー表にチェックを入れ、手を下させる。
「全ての準備が整いましたので、作戦を開始します。全軍、進軍開始!」
 案内役の男性が大声で宣言すると、騎士と兵士とハンターのごちゃまぜ連合軍は二手に分かれて進み始めた。
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