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第十話

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 朝食後、グレイを除いた三人の女性は部屋で身支度を整えた。今日はこの街の人間に見える格好をするので、いつもより時間が掛かる。
 その間、テルラは一階の食堂でお茶を飲みながら待つ。レイはテルラが居ても気にしないが、むしろ着替えを見ていて欲しいくらいだが、カレンとプリシゥアは常識として男女別々を希望したからだ。
 しかしプリシゥアはテルラの護衛なので、速攻で身支度を終えて一階に降りた。
 剣を目立たない様に仕込む手間が有るレイはどんなに急いでも二番目、特に急いでいないカレンは最後に降りて来た。
「お待たせ。戸締りはちゃんと確認したから大丈夫だよ。行こう」
 大聖堂近くの宿は街の中心地なので、その前の通りは早朝から人出が多い。
 気温が上がって乾燥する昼は家に引き籠る人が多いので、むしろ朝と夕方の方が人の動きが多い。何日もこの街に居る王子もこのサイクルに気付いているだろうから、人混みに紛れて動くならこの時間だろう。
「って思っても、こう人が多いとキツイっすね」
 今日は聞き込みではなくて居るかどうか分からない人探しなので、昨日までより神経を使う。
 人探しは、すれ違う全ての人間の顔形を慎重に観察しなければならない。女子供にじっくりと顔を見られるとイキリ出す悪そうな人が居るので、無関係な人との無駄な戦闘も起こってしまう。
 カレンの潜在能力で攻撃力を奪い、怪我人ゼロで事を進めて行くと、大聖堂の鐘が鳴り響いた。街の端まで届くので、大聖堂の近くに居るとかなりうるさい。
「お昼ですわ。どこで食事にします?」
 相変わらず成果が無く、人通りも減って来たので、パーティーメンバーはだらけていた。真面目なテルラでさえ、乾燥した日差しに気を抜いて日陰を探していた。
「え? あれ?」
 急に急に視点が高くなったテルラは、レイとカレンのつむじを見た。
「テルラ!?」
 怪しい気配に振り向いたレイとカレンは、三メートルは有る骨女に握られているテルラを見た。テルラの足はすでに地面から離れているので、急いで助けないと連れ去られてしまう!
「テルラがピンチならわたくしの潜在能力が発動しますわ! ハーッ!」
「昼間ならこっちの物よ! 第三の目!」
 レイは掌を魔物に向け、カレンはおでこにダブルピースを当てた。
 二本の光線が女の魔物を貫く。
「うわわっ!」
 レイの光線が魔物の鎖骨から上を砕き、カレンの光線がテルラを握っている腕の力を奪った。
 結果、テルラは魔物から解放されて地面に落ちる。
「テルラ、大丈夫ですの?」
 落下の衝撃で痛がっているテルラの腕をレイが引き、魔物から引き剥がした。
 それを見て首を傾げるカレン。
「おかしいな。前の時は、あ、間違えてレイが攫われた時だけど、あの時は物凄い勢いで逃げられたよね。でも、今回は全然逃げなかった」
 巨大なよみがえりの登場に、周囲の人間が悲鳴を上げて逃げている。
 頭部を失った魔物の身体は崩壊を始めているので、普通の恰好をしているハンター達はすでに戦闘態勢を解いている。
「そうですわね。前の魔物はプリシゥアに頭をもがれても身体は崩れませんでしたのに……って、プリシゥアはどこに行きましたの? テルラが危険に晒されたのは護衛が居ないからじゃありませんの!」
 怒ったレイが周囲を見渡しても、逃げ回る人々が居るだけで、少女僧兵の姿はどこにもなかった。
 カレンは逃げる人達の中に不自然な動きをしている人が居ないかを観察している。
「って言うか、逃げ過ぎじゃない? もう魔物は倒したのに。よみがえりって、そんなに怖がられてるのかな」
「それは怖いでしょう、死体が動いているんですもの。大丈夫ですか? テルラ」
「ええ、大丈夫ですよ、レイ。落ちた時にヒザを打ちましたが、治癒魔法を使うまでも無いです」
「おーい、みんなー。こっち来て欲しいっスー!」
「プリシゥア! 貴女、仕事中に単独で――」
 レイが叱ろうとしたが、遠くに居るプリシゥアはそれを無視して手招きを続ける。
「よみがえりの大群が大聖堂を襲ってるっス! このままでは大変な事になるっス! 私らも退治の手伝いをするっス!」
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