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第十話

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 宿に帰ったテルラ一行は、ご機嫌な酔っ払いで溢れている食堂を避け、部屋への夕食の出前を頼んだ。時間が遅くなったので食材切れで終売となったメニューも有ったが、半分以上は望み通りの料理が注文出来た。
「あの女魔法使いの事ですが、僕達に出来る事は無いでしょうか」
「出来る事って?」
 部屋の中心に有る円卓に並んでいる料理を食べながら訊くカレン。
「王子の命令でやったのに、犯罪者として扱われるのは可哀そうで。せめて何か喋れば情状酌量の余地も有ると思うんです。治癒魔法も掛けられる。ですので、なんとか喋らせる事は出来ないかな、と」
 テルラの役に立とうと必死に考えてから喋るレイ。
「王子の命令でやったと断定するのは早計ですわ。わたくし達だって、リーダーは王女のわたくしではなく、テルラですもの。彼等もその様な関係かも知れませんわよ」
「確かに。その真偽も彼女が喋らない事には……。どう思いますか、グレイ」
「テルラがグレイを真っ先に頼ってしまう様になりましたわ……」
 話を振られたグレイは、鬼の様なレイの視線から顔を逸らしながら咀嚼を続ける。
「うーん、俺は海賊の頭領としての教育しか受けていないから役には立たないなぁ」
「海賊としての知恵でも良いですので。何がヒントになるか分からない状況ですからね」
「海賊は海の上で暮らすもんだから、船には船員の分の食料しか乗せない。だから、口を割らないならさっさと海に捨てるしかない。部下を餓死させる訳には行かないからな。つまり、俺がリーダーだったら女魔法使いを速攻で切り捨てて次の手を考える事になる」
「そうですか……」
「テルラが思い悩む必要は無いっスよ。数日後には然るべき隊が来て彼女を連れて行くっスから、喋ろうが黙ろうがそっちが何とかする問題なんスよ」
「プリシゥアの言う通りなんですけど……うーん」
「優しいのがテルラの良いところですけど、気に病み過ぎですわ。女魔法使いが捕まった事で、きっと王子も動きます。明日はそれに期待しましょう」
「そう……ですね。レイの予想を信じ、明日は全員で大聖堂周辺を見回りましょう。見捨てて逃げようとするのなら門番の方に見付かるでしょうし」
 パーティーメンバーは食事をしながら頷いたが、グレイだけは頭を動かさなかった。
「俺は変わらず水の出口を見張る。魔法結晶を狙っていたのは確実だから、王子がしつこく取りに来るかも知れないからな」
「また夜明け直後から?」
「ああ。――あ、そうなると明日の朝食を用意しないとな。これを食い終わったら下に行く」
「分かりました。では、明日も頑張りましょう」
「はーい」
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