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第四話

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 合計6匹の魔物を倒した証明に、切り取った緑色の右耳を役所に提出した。
 最大報酬の5万クラゥを受け取るテルラ。
「本来のルールなら共用のサイフを満タンにするんですが、そうすると分配が微々たる物になってしまいます。今回はゲストが居る、初クエスト成功、まだ余裕が有る、を理由に、分配を優先したいと思います」
 役所の中に有る来客用テーブルに着いているテルラが言う。
「ルールは絶対じゃなかったの?」
 テルラと同じテーブルに着いているカレンが訊いた。
「そうですけど、最初から無報酬だと縁起が悪いですから。――そうですね、ではルールを追加しましょう。『ゲストやヘルプが居る場合、共用サイフに余裕が有る状態なら、報酬の分配を優先する』としましょう」
「そんな簡単にルールを足して良いのかなぁって思うけど、この緩さが好きだからこれで良いや」
 カレンが納得したので、テルラは仲間達を見渡した。
「ルール追加に反対する人は居ますか?」
 お互いの出方を見るだけで誰も反応しなかったので、テルラは「ではルールを採用します」と断ってから話を続ける。
「5万÷6人は約8300クラゥですが、さすがに共用財布にも多少は入れないといけませんので、一人7000クラゥを報酬としたいと思います。異論は有りますか?」
「無いっス」
「ありませんわ」
 テルラと同じテーブルに着いているプリシゥアと、隣のテーブルに着いているレイが返事をした。
 エディもレイと一緒に隣のテーブルに着いているが、ゲストなので一切口出しはしないつもりでいる。
 唯一立っている黒コートのグレイが無反応だったので、そちらに顔を向けるテルラ。
「グレイはどうですか?」
 考え事をしていたのか、名前を呼ばれて驚くグレイ。明らかにビクリと身体を震わせていたが、何事も無かった風を装った。
「ん、ああ、構わないぞ。ただ、やはり真っ当な仕事は儲けが少ないな。――なぁ、エディ。お前ハンター経験者なんだよな?」
「そうです」
「もっと実入りの良い仕事をした事が有るか?」
「勿論有りますよ。今回のは運が良ければ日帰りでこなせるから安かったけど、何日何週間も調査する様な仕事だと何倍何十倍にもなります。勿論、その分危険ですけど」
「危険だと、勿論報酬が増えるよな?」
「勿論。死の危険が高確率な場合は、報酬とは別に危険手当が付く場合も有りますよ」
「そうか。ありがとう、参考になった」
 話が終わったので、テルラは分配を始めた。あらかじめカウンターで両替しておいたので、問題無く分配出来た。
「確かに。では、また何か有ったらよろしくな」
 大人が貰う報酬としては少額だったが、エディは丁寧に頭を下げてから去って行った。
 テルラ達は立ち上がり、色々教えてくれた礼を言いつつ見送った。
「さて。僕達も解散したいですが、その前にクエストが追加されていないかを確認しますか。さすがに儲けが少ないですから」
「賛成だ」
 全員で掲示板の前に移動する。
 しかし昼過ぎと言う時間のせいか、張り紙は1枚しか残っていなかった。
「幽霊屋敷の調査か。これは前にも有った奴だな。誰も受けなかったのか」
「報酬が少ないですし、ハンターがやる仕事でもないですしね。他にクエストが無い様ですので、解散しますか」
 テルラは諦めムードになっていたが、グレイは真剣に張り紙を読み込んでいる。
「なぁ。これを受けないか?」
「なぜですか? 僕達の目的は魔物退治です。確かに報酬は欲しいですけど、これはグレイが満足する額じゃないと思いますけど」
「受けた後に取り下げても罰金は無いって書いてある。って事は、調査にかこつけて幽霊屋敷に泊まれば宿代が浮くぞ。解決出来れば金も入って来るし、メリットしかない」
「なるほど……節約ですね。時間的に出発は明日以降になりますので、一晩だけの調査でも良いのか聞いて、良かったらこのクエストを受けようと思います。どうですか?」
「わたくしは構いませんわ」
 レイは相変わらずノータイムでテルラに従う。
 しかし、プリシゥアとカレンは難色を示した。
「私はテルラの護衛っスから同行はしますが……幽霊は苦手って言うか、対処の仕方が分からないっス……」
「幽霊が出るのは、多分夜でしょ? 私、夜は第三の目が使えないから役立たずになるし、どうかなぁ……」
 渋る2人の前に立つグレイ。
「受けるのはタダだから、受けるだけ受けよう。明るい内に下見をして、泊まれない様だったら夜になる前に引き上げよう。それでどうだ? 失敗してもタダだし」
「……そうね」
「分かったっス」
 2人が頷いたので、テルラが張り紙を剥がした。
「では、このクエストを受けて来ます」
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