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第三話
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レイ、カレン、グレイの三人は、街の入り口付近に有る教会の門を潜った。
「海賊が大手を振って教会に入るのは違うよな」
ふと思い至ったグレイが自慢の海賊帽を脱ぐ。
「海賊が教会に入っちゃダメなの?」
カレンが不思議がっているので、レイが説明する。
「戦争時、教会が避難場所になるって説明を受けたでしょう? どんなに戦況が悪くなっても、教会は不可侵であると」
「うん。その時の為の通信を使って許可証を申請してるんだよね」
「凶悪なテロリストも、よほどの目的が無ければ教会を襲ったりはしません。しかし、海賊はお構いなしです。お金持ちの家を襲うノリで教会を焼いたりします。だから海賊は野蛮だと嫌われているんです」
「へぇ、そんな事してるんだ。怖いね」
「ここは内陸だから海賊に襲われた事は無いだろうが、それでも余計な波風は起こさない方が良いだろう。教会の力でハンターになるんだからな」
グレイは自分が放った言葉で顔を歪ませた。
「陸の上の俺は海賊の恰好をしたハンターって事になるのか。親父やおふくろはこんな俺をどう思うのかな……」
「何独り言言ってるの?」
立ち止まって暗い顔をしているグレイを気にするカレン。
「なんでもない。今は一文にもならない拘りを気にしている場合じゃないって確認しただけだ。――行くぞ」
グレイが先頭になって教会の玄関ドアを開けた。
広い礼拝堂は誰も居らず、閑静な空間になっている。
「ごきげんよう。どなたかいらっしゃいませんか?」
レイが先頭に立って声を張ると、奥から中年のシスターが出て来た。
「はい、何か御用でしょうか」
「テルラティア様がこちらにいらしているはずですので、御取り次ぎを願いますわ。レインボーが来たと伝えて頂ければ十分ですので」
「レ、レインボー姫!? 少々お待ちください」
慌てて奥に戻る中年のシスター。
ここが貴族の家だったらお茶やお菓子が出て来るのだろうが、教会内は女神を敬う場なので、王女と言えども特別扱いされない。なので、普通の客人と同じく、規則正しく配置されている長椅子のひとつに座って待つ。
「みなさん、お疲れ様です。どうでしたか?」
金髪のテルラが礼拝堂にやって来た。旅支度のままだが、大きなリュックは背負っていない。
「役所に行ってハンター向けのクエストが張り出されているって説明された掲示板を見たんだけどさぁ。ロクな依頼が無いのよ」
カレンが肩を竦め、その後を継ぐ様にレイが続ける。
「猫探し。ハチの巣駆除。ドブ川のネズミ退治。そんな仕事ばっかり。そんな物がハンターの仕事なのかと言う疑問は脇に置いて、48の魔物を探すと言うわたくし達の目的に沿う依頼は有りませんでしたわ」
「だからリーダーの意見を聞きに来たって訳だ」
グレイは女神の絵のステンドグラスを物珍しそうに見上げている。
「ここも聖都から徒歩一日の都会ですから、魔物はそんなに居ないんでしょうね」
テルラも適当な長椅子に座る。
「都会だから魔物が居ないってんなら、俺のハンター証明証が来たらすぐに田舎に移動するか?」
「仕事が無いのならグレイの言う通りにするしかないでしょうね。ハンター証明証は明日明後日には来るでしょうから、取り敢えず今日一日は様子を見ましょう」
「なら、猫探しをしますか? わたくし、ネズミ退治は嫌ですわよ?」
レイが嫌そうな顔をしたら、テルラは苦笑した。
「旅費はまだ十分に有りますから、今日のところは無理に仕事をする必要は無いでしょう。勿論、お金を稼ぎたいのなら、一人用の仕事をしても構いません」
「俺はまだ仕事出来ないよな?」
「はい。グレイはまだハンターではありませんから。ハンターでなくても受けられる仕事が有るのなら、許可証が来るまでの間だけならそれをしても構いませんけど」
「役所には無かったな。一般人はどこで仕事を探すんだろう?」
「それは――僕には分かりません。取り敢えず、今日の行動は各々の判断に任せます。勿論、仲間に迷惑を掛けない範囲でお願いします」
「なら、わたくしはテルラと一緒に居ますわ。テルラはこれから何をなさるんですか?」
「何も予定は有りませんが、大聖堂から質問が飛んで来たら対応しなければならないのでここから動けません。ですので、祭事のお手伝いでもしようかと」
「わたくしも、お邪魔にならない程度にお手伝い致しますわ。どうせ退屈ですから」
「ありがとう、レイ。カレンとグレイはどうしますか?」
帽子を小脇に抱えて座っているグレイが首を捻る。
「俺はどうしようかな。――なぁ、カレン。朝飯の金、余っただろ? 昼飯分は貰えるのか?」
「テルラ?」
「どうぞ」
カレンに視線を向けられたテルラは頷きを返す。
「じゃ、私もこのお金でお昼を食べるから山分けね。おつりはちゃんとテルラに返してね」
カレンはグレイと自分で一食分ずつ分け、余った小銭をテルラに返した。その小銭を共用のサイフに仕舞うテルラ。
「では、午後は自由行動で。日が暮れる前にこの教会に帰って来てください。無料で泊めてくれるそうです。夕飯は出ますが、精進料理のポテトサラダのみですので、外で食べて来ても良いですよ」
「分かった。ところで、プリシゥアは?」
護衛でリーダーから離れられないはずの少女モンクの姿を探し、礼拝堂を見渡すカレン。お昼ご飯の時間帯なので、礼拝に訪れる人は一人も居ない。
「僕が教会から出ないと知ったら、いつの間にか居なくなりました。まぁ、教会内なら護衛は要りませんからね。構わないでしょう」
「もう、テルラは優し過ぎですわ。代わりにわたくしが叱って差し上げますわ」
レイが腕を組んで頬を膨らませると、カレンがクスクスと笑った。
「自由時間だから別に良いじゃない。って事で、お昼食べに行って来ます。行こう、グレイ」
「ああ。夕方までブラブラして来る」
「行ってらっしゃい」
立ち上がったテルラに見送られ、カレンとグレイは教会を後にした。
「海賊が大手を振って教会に入るのは違うよな」
ふと思い至ったグレイが自慢の海賊帽を脱ぐ。
「海賊が教会に入っちゃダメなの?」
カレンが不思議がっているので、レイが説明する。
「戦争時、教会が避難場所になるって説明を受けたでしょう? どんなに戦況が悪くなっても、教会は不可侵であると」
「うん。その時の為の通信を使って許可証を申請してるんだよね」
「凶悪なテロリストも、よほどの目的が無ければ教会を襲ったりはしません。しかし、海賊はお構いなしです。お金持ちの家を襲うノリで教会を焼いたりします。だから海賊は野蛮だと嫌われているんです」
「へぇ、そんな事してるんだ。怖いね」
「ここは内陸だから海賊に襲われた事は無いだろうが、それでも余計な波風は起こさない方が良いだろう。教会の力でハンターになるんだからな」
グレイは自分が放った言葉で顔を歪ませた。
「陸の上の俺は海賊の恰好をしたハンターって事になるのか。親父やおふくろはこんな俺をどう思うのかな……」
「何独り言言ってるの?」
立ち止まって暗い顔をしているグレイを気にするカレン。
「なんでもない。今は一文にもならない拘りを気にしている場合じゃないって確認しただけだ。――行くぞ」
グレイが先頭になって教会の玄関ドアを開けた。
広い礼拝堂は誰も居らず、閑静な空間になっている。
「ごきげんよう。どなたかいらっしゃいませんか?」
レイが先頭に立って声を張ると、奥から中年のシスターが出て来た。
「はい、何か御用でしょうか」
「テルラティア様がこちらにいらしているはずですので、御取り次ぎを願いますわ。レインボーが来たと伝えて頂ければ十分ですので」
「レ、レインボー姫!? 少々お待ちください」
慌てて奥に戻る中年のシスター。
ここが貴族の家だったらお茶やお菓子が出て来るのだろうが、教会内は女神を敬う場なので、王女と言えども特別扱いされない。なので、普通の客人と同じく、規則正しく配置されている長椅子のひとつに座って待つ。
「みなさん、お疲れ様です。どうでしたか?」
金髪のテルラが礼拝堂にやって来た。旅支度のままだが、大きなリュックは背負っていない。
「役所に行ってハンター向けのクエストが張り出されているって説明された掲示板を見たんだけどさぁ。ロクな依頼が無いのよ」
カレンが肩を竦め、その後を継ぐ様にレイが続ける。
「猫探し。ハチの巣駆除。ドブ川のネズミ退治。そんな仕事ばっかり。そんな物がハンターの仕事なのかと言う疑問は脇に置いて、48の魔物を探すと言うわたくし達の目的に沿う依頼は有りませんでしたわ」
「だからリーダーの意見を聞きに来たって訳だ」
グレイは女神の絵のステンドグラスを物珍しそうに見上げている。
「ここも聖都から徒歩一日の都会ですから、魔物はそんなに居ないんでしょうね」
テルラも適当な長椅子に座る。
「都会だから魔物が居ないってんなら、俺のハンター証明証が来たらすぐに田舎に移動するか?」
「仕事が無いのならグレイの言う通りにするしかないでしょうね。ハンター証明証は明日明後日には来るでしょうから、取り敢えず今日一日は様子を見ましょう」
「なら、猫探しをしますか? わたくし、ネズミ退治は嫌ですわよ?」
レイが嫌そうな顔をしたら、テルラは苦笑した。
「旅費はまだ十分に有りますから、今日のところは無理に仕事をする必要は無いでしょう。勿論、お金を稼ぎたいのなら、一人用の仕事をしても構いません」
「俺はまだ仕事出来ないよな?」
「はい。グレイはまだハンターではありませんから。ハンターでなくても受けられる仕事が有るのなら、許可証が来るまでの間だけならそれをしても構いませんけど」
「役所には無かったな。一般人はどこで仕事を探すんだろう?」
「それは――僕には分かりません。取り敢えず、今日の行動は各々の判断に任せます。勿論、仲間に迷惑を掛けない範囲でお願いします」
「なら、わたくしはテルラと一緒に居ますわ。テルラはこれから何をなさるんですか?」
「何も予定は有りませんが、大聖堂から質問が飛んで来たら対応しなければならないのでここから動けません。ですので、祭事のお手伝いでもしようかと」
「わたくしも、お邪魔にならない程度にお手伝い致しますわ。どうせ退屈ですから」
「ありがとう、レイ。カレンとグレイはどうしますか?」
帽子を小脇に抱えて座っているグレイが首を捻る。
「俺はどうしようかな。――なぁ、カレン。朝飯の金、余っただろ? 昼飯分は貰えるのか?」
「テルラ?」
「どうぞ」
カレンに視線を向けられたテルラは頷きを返す。
「じゃ、私もこのお金でお昼を食べるから山分けね。おつりはちゃんとテルラに返してね」
カレンはグレイと自分で一食分ずつ分け、余った小銭をテルラに返した。その小銭を共用のサイフに仕舞うテルラ。
「では、午後は自由行動で。日が暮れる前にこの教会に帰って来てください。無料で泊めてくれるそうです。夕飯は出ますが、精進料理のポテトサラダのみですので、外で食べて来ても良いですよ」
「分かった。ところで、プリシゥアは?」
護衛でリーダーから離れられないはずの少女モンクの姿を探し、礼拝堂を見渡すカレン。お昼ご飯の時間帯なので、礼拝に訪れる人は一人も居ない。
「僕が教会から出ないと知ったら、いつの間にか居なくなりました。まぁ、教会内なら護衛は要りませんからね。構わないでしょう」
「もう、テルラは優し過ぎですわ。代わりにわたくしが叱って差し上げますわ」
レイが腕を組んで頬を膨らませると、カレンがクスクスと笑った。
「自由時間だから別に良いじゃない。って事で、お昼食べに行って来ます。行こう、グレイ」
「ああ。夕方までブラブラして来る」
「行ってらっしゃい」
立ち上がったテルラに見送られ、カレンとグレイは教会を後にした。
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