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後編 龍の少年と龍の少女
第18話
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征服者たちは、リグノア教国の軍隊と、シュトノク教国の軍隊の連合軍だった。とてもとても敵う相手ではなかった。数が違いすぎた。彼らは宮殿内までやってきた。リグノア軍の将軍と、シュトノク軍の将軍が、声をそろえてこう言った。
「我々は、大陸を挟んで、長いこと争っていた。しかし、元々は同じ神を信仰する一つの宗教であった。我々は和解し、二度と争わぬよう誓いを交した。そして、今度は邪教を駆逐することにした。
お前たちは、龍神などという、よこしまな神を信仰している。しかも、よりにもよって、我らの神聖なる信仰を、あろうことか、土着の信仰と一つにした。許しがたいことである。
よって、我らがこの島を正しく導く。この島の北側が、リグノア教国の一部となり、南側がシュトノク教国の一部となるのだ!
この島では、龍神の化身たる少年と少女を崇めていると、調べがついている! 龍神の神託を聞き、政治に役立てていたそうではないか! その少年と少女を差し出せ! さすれば、住民に危害は加えぬと、我らが神に誓おう!」
ハジミとクジャがいる星見の部屋にも、その大声は聞こえてきた。一同は、血の気の引いた顔で将軍たちの演説を聴いていた。
「言っていることが、めちゃくちゃだ……」
頭のいいクジャも、これだけ口にするのが、精一杯だった。
ハジミはがたがた震えていた。わたしの命と引き換えに、みなが助かる。と、なれば……。優しいクジャはともかく、わがまま放題だったハジミなら、突き出されても、おかしくない。いや、それより、クジャがすすんで将軍たちの所へ行きそうで、怖かった。ハジミはクジャに手を伸ばし、その手をぎゅっと握りしめた。クジャの隣にはジャポがいた。ダイポは、というと、ハジミの部屋にある、飼い猫用のかごから一歩も出てこなかった。
「あははははは」
ナリム王の大きな笑い声が響いた。ナリム王は、降伏を認める条件として、将軍たちのもとに捕らわれていた。
「この王だけでなく、子どもまで捕らえたいと申すのか。臆病なことだ。勇敢な将軍の名に傷がつくぞ」
「何!」
兵士たちが怒り、ナリム王の喉元に剣の先を突き出した。
「龍神の化身など、今は誰も信じておるまい。ただの形式じゃ。その証拠に、わしは、その子たちに、くだらぬことしか聞いておらぬ」
「それは何だ」
将軍たちが重々しい口調で尋ねた。
「昨日のお祭りで、何の出し物を披露するか、城内の花壇に何を植えるか。いや、まて、重要なことも聞いていたな……」
「それは何だ」
「我が妻に、何の贈り物をすればいいか、じゃ。これは重要なことじゃろう」
兵士たちがどっと笑い出した。将軍たちは槍の柄で石畳をどん、と叩き、兵士たちを黙らせた。
「わかった。悪魔や魔女の類いではなさそうだ。今すぐに捕らえずともよい。子ども相手にむきになったとあれば、神の名をお借りする我らが軍の名折れだ」
その声を聞いて、ハジミはひとまず安心した。
「我々は、大陸を挟んで、長いこと争っていた。しかし、元々は同じ神を信仰する一つの宗教であった。我々は和解し、二度と争わぬよう誓いを交した。そして、今度は邪教を駆逐することにした。
お前たちは、龍神などという、よこしまな神を信仰している。しかも、よりにもよって、我らの神聖なる信仰を、あろうことか、土着の信仰と一つにした。許しがたいことである。
よって、我らがこの島を正しく導く。この島の北側が、リグノア教国の一部となり、南側がシュトノク教国の一部となるのだ!
この島では、龍神の化身たる少年と少女を崇めていると、調べがついている! 龍神の神託を聞き、政治に役立てていたそうではないか! その少年と少女を差し出せ! さすれば、住民に危害は加えぬと、我らが神に誓おう!」
ハジミとクジャがいる星見の部屋にも、その大声は聞こえてきた。一同は、血の気の引いた顔で将軍たちの演説を聴いていた。
「言っていることが、めちゃくちゃだ……」
頭のいいクジャも、これだけ口にするのが、精一杯だった。
ハジミはがたがた震えていた。わたしの命と引き換えに、みなが助かる。と、なれば……。優しいクジャはともかく、わがまま放題だったハジミなら、突き出されても、おかしくない。いや、それより、クジャがすすんで将軍たちの所へ行きそうで、怖かった。ハジミはクジャに手を伸ばし、その手をぎゅっと握りしめた。クジャの隣にはジャポがいた。ダイポは、というと、ハジミの部屋にある、飼い猫用のかごから一歩も出てこなかった。
「あははははは」
ナリム王の大きな笑い声が響いた。ナリム王は、降伏を認める条件として、将軍たちのもとに捕らわれていた。
「この王だけでなく、子どもまで捕らえたいと申すのか。臆病なことだ。勇敢な将軍の名に傷がつくぞ」
「何!」
兵士たちが怒り、ナリム王の喉元に剣の先を突き出した。
「龍神の化身など、今は誰も信じておるまい。ただの形式じゃ。その証拠に、わしは、その子たちに、くだらぬことしか聞いておらぬ」
「それは何だ」
将軍たちが重々しい口調で尋ねた。
「昨日のお祭りで、何の出し物を披露するか、城内の花壇に何を植えるか。いや、まて、重要なことも聞いていたな……」
「それは何だ」
「我が妻に、何の贈り物をすればいいか、じゃ。これは重要なことじゃろう」
兵士たちがどっと笑い出した。将軍たちは槍の柄で石畳をどん、と叩き、兵士たちを黙らせた。
「わかった。悪魔や魔女の類いではなさそうだ。今すぐに捕らえずともよい。子ども相手にむきになったとあれば、神の名をお借りする我らが軍の名折れだ」
その声を聞いて、ハジミはひとまず安心した。
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