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中編 ミーナは糸を染める
第35話 カタリーナの炎(3)
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カタリーナは手元の布で涙を拭って、話を再開した。
「わたしは実家に帰された。両親はわたしの再婚相手をすぐに見つけてきた。それは、辛い過去を忘れ、早く次の人生を歩めという、親心からだったわ。だけどわたしは、深い悲しみに暮れて、親の心を慮る余裕など、とてもなかった。わたしは子を亡くし、親にまで捨てられたと絶望した。そのうえ、嫁ぎ先は北の果て、貧しい貴族の家だと聞いて、いっそ死のうとさえ思った。だけど、自ら命を絶てば、あの子が逝った天国に昇ることは決してできないと思い、必死になって耐えたわ。
ビルング家の両親は、わたしに何が起きたかすべてご存じだった。だから、青白い顔をして、うつむいたまま嫁いだわたしを、何もおっしゃらずに笑顔で迎えてくださった。けれどもマルクスは、わたしの過去など聞きたくないと言ったらしいの。あの人らしいわね。あの人がどんな気持ちで、わたしと夜をともにしたのか、今でも怖くて聞けないわ。
そうして、すぐに子どもができた。誰もが皆喜んだけれど、わたしは恐怖に震えた。また、かわいい我が子を死なせてしまうのだと思うと、恐ろしくて恐ろしくて。わたしは、一人になるのが怖かった。だからマルクスにすがりついた。そのころのわたしは、あの人を好きだったわけではなかったと思う。誰でもよかったのよ。ただ、わたしの恐怖を紛らわせてくれれば。
ある日、マルクスはわたしに贈り物をくれた。それがさっき見せた珊瑚の首飾りよ。わたしは自分の誕生日のことなんて、すっかり忘れていたから、驚いたわ。それが高価なものだということは、一目でわかったわ。それを、この家の経済状況で買うのが、どれほど大変だったかもね。この人は、青白い顔をして、うつむいて、泣いて甘えてばかりのわたしに、ここまでの情熱をかけてくれるのかと驚いたわ。だって、この炎のような燃える思いをわたしに抱いているってことでしょう?本当の気持ちを知ったのは、ずいぶんあとのことなのよ。何より嬉しかったのは、珊瑚って、子どもを守る護符なの。マルクスは若いころは口数が少なかったから、直接言われたわけではないけれど、『私がついているから心配するな』って言われたような気分になったわ。その日から、わたしは少しずつ元気を取り戻した。ビルング家の女の務めも、果たすようになった。そして、わたしはかわいい男の子を産んだ。立て続けに二男を、少しおいてから三男を産んだ。私はこの上なく幸せだったわ。だけど…」
カタリーナは両手を強く握りしめた。その手はぶるぶると震えていた。
「わたしの幸せはまたしても崩れ去った。あのおぞましい赤髭が、すべて奪っていった!あの子たちをすべて喪ったあと、わたしの心に、決して消えない炎がおこった。赤い、赤い、血のような、あの珊瑚のような炎がおこった。その炎がなければ、わたしはまたしても死のうと思ったかもしれない。マルクスがくれた炎は、わたしに生きる希望を与えてくれたけれど、そのときわたしの心におこった炎は…あれは…確かにわたしを生かしたけれど…」
カタリーナはうつむいて黙り込んだ。ミーナはカタリーナの強く握られたままの両手に自分の両手をそっと重ねた。しばらくしてから、カタリーナは重い口を開いた。
「わたしは、生まれて初めて男になりたいと願った。騎士になりたいと願ったわ。そうして、この手で、わたし自身の手で、あの憎くき赤髭の息の根を止めたいと思った!だけど、どんなに願ってもわたしは男にはなれない。今さら女の身で騎士になることもできない。けれども、心におこった炎を消し去ることは、もっともっとできなかった!そのとき、わたしは思いついたの。わたしが子を産んで、その子に、わたしの思いを託すって、ね」
ミーナは驚きのあまり、カタリーナから手を離した。
「皆、マルクスがそう考えたと思っているようだけど、本当は違うのよ。わたしなのよ、我が子に自身の復讐を託すと決めたのは!でも、わたしはもう子どもを産めないと、お医者さまは言ったわ。月のものがもう来なくなってしまってね。わたしは泣いて泣いて泣き続けた。こんなに泣いたのは、初めて産んだ子を喪って以来だったわ。そして、私は恐ろしいことを思いついたの。誰かに代わりに産んでもらえばいいってね。マルクスは、長く連れ添ったわたしの半身。マルクスの子はわたしの子だって、ね」
ミーナはカタリーナの深い情念に驚きを隠せなかった。日だまりのように温かいお義母さまのどこに、こんな思いが隠されていたのだろうと思っていた。しかし、ミーナは懺悔を聞くものの務めとして、カタリーナの懺悔が終わるまでは決して口を開くまいと決意していた。
「当時この城には、わたしの遠縁が働いていたの。その娘はわたしの若いころにそっくりでね、わたしはこの娘にしようと思ったわ。ちょうどそのころ、娘の実家が困窮状態にあることを、わたしは知っていたの。わたしは全財産をかき集めて、娘に頼んだわ。わたしの代わりにマルクスの子を産んでちょうだい、そうしてくれたらこの財産をすべてあげるって、ね。娘は承諾したわ。承諾するよりほかなかったのよ。だって、この家の奥方の頼み事よ。どうせ断ればこの家にはいられなくなると、家族を支えることはできなくなると、娘はよくわかっていたのよ!そのうえ、わたしはマルクスが拒否するのを恐れて、だまし討ちのように酒に酔わせてことに及ばせた!翌朝、すべてを知ったときのマルクスの顔を、わたしは死ぬまで忘れることはないでしょう…。
わたしは娘にむごい仕打ちをし、命がけで出産させて、そのうえ生まれた子どもをわたしの子だと言って奪ったわ。それは、どんな財産を積んでもあがなえることかしら。娘は、お金はいらないと言ったわ。だけど、わたしは娘にむりやり財産を持たせた。これでご家族を助けなさい、あなたの新しい暮らしのために使いなさい、と言ってね。娘は半分だけ持っていったわ。わたしは自己満足のために、娘にお金を持たせた。わたしの心を少しでも和らげようとするために!
そして、わたしは生まれた子どもに、自分が背負ったこともないような重荷を負わせた。真面目なあの子は、それこそ一つも疑わずに、与えられた使命を果たそうとした!将来、領主として、この土地をいかに治めるか考えることもなく。自分の幸せすら考えることもなく!たとえ、どんなに愛情を注ごうと、優しい言葉をかけようと、どんなに、どんなに、あなたはわたしのかわいい子どもだと抱きしめたとしても!わたしは、なんて、残酷なことをしたのでしょう!だけど…」
カタリーナは目から大粒の涙をこぼし、真っ直ぐにミーナの顔を見つめた。すがるような顔をしていた。
「だけど、それを罪と呼んだら、あの子の存在そのものを否定することになる。わたしの心に炎がおこらなかったら、マルクスを騙さなかったら、娘に子どもを産ませなかったら…わたしのために命をかけて頑張ってくれた、あの優しい子は、今もどこかで戦っているあの子は、この世のどこにもいないのよ…。だから、わたしは、わたしの罪を、罪と呼ぶことすらできず、死ぬまで心の奥底にしまっておくことしかできなかった…たとえそれが、死ぬよりも辛いことだとしても。だって、それが、神さまがわたしに与えた罰なのだから」
カタリーナが話し終えると、ミーナはカタリーナの身体を包み込むように抱きしめた。
「お話ししてくださってありがとうございます、お義母さま。お義母さまはもう充分に苦しみました。きっと、神さまもお許しのことと思います。何よりも、イェルクは…イェルクはお母さまのなさったことを、罪だとは思っていませんわ。イェルクは自身の使命に誰よりも誇りを持っていましたし、自分の力は、お義母さまやお義父さま、それに亡くなったお兄さまたちからいただいたものだと言っていましたわ。イェルクはお義母さまを深く愛しているのです。母の形をしたものに傷をつけることさえ許さないくらいに。もちろん、お義父さまたちのことも。だから、もう、苦しまないで…」
そこまで言うと、ミーナは感極まって泣き出した。ミーナは子どものように泣きじゃくった。いつの間にか、カタリーナがミーナの背中をさすっていた。
「ミーナ。あなたは本当に優しい子。あなたがこの家に来てくれてよかったわ。わたしはずいぶん、救われた思いがするわ。本当にありがとう。どうか、イェルクにとっての救いにもなってちょうだいね。もう、そうなっているかしら…」
「お義母さま…」
ミーナはカタリーナと本当の母娘のように抱き合い、幸せな涙を流した。
「わたしは実家に帰された。両親はわたしの再婚相手をすぐに見つけてきた。それは、辛い過去を忘れ、早く次の人生を歩めという、親心からだったわ。だけどわたしは、深い悲しみに暮れて、親の心を慮る余裕など、とてもなかった。わたしは子を亡くし、親にまで捨てられたと絶望した。そのうえ、嫁ぎ先は北の果て、貧しい貴族の家だと聞いて、いっそ死のうとさえ思った。だけど、自ら命を絶てば、あの子が逝った天国に昇ることは決してできないと思い、必死になって耐えたわ。
ビルング家の両親は、わたしに何が起きたかすべてご存じだった。だから、青白い顔をして、うつむいたまま嫁いだわたしを、何もおっしゃらずに笑顔で迎えてくださった。けれどもマルクスは、わたしの過去など聞きたくないと言ったらしいの。あの人らしいわね。あの人がどんな気持ちで、わたしと夜をともにしたのか、今でも怖くて聞けないわ。
そうして、すぐに子どもができた。誰もが皆喜んだけれど、わたしは恐怖に震えた。また、かわいい我が子を死なせてしまうのだと思うと、恐ろしくて恐ろしくて。わたしは、一人になるのが怖かった。だからマルクスにすがりついた。そのころのわたしは、あの人を好きだったわけではなかったと思う。誰でもよかったのよ。ただ、わたしの恐怖を紛らわせてくれれば。
ある日、マルクスはわたしに贈り物をくれた。それがさっき見せた珊瑚の首飾りよ。わたしは自分の誕生日のことなんて、すっかり忘れていたから、驚いたわ。それが高価なものだということは、一目でわかったわ。それを、この家の経済状況で買うのが、どれほど大変だったかもね。この人は、青白い顔をして、うつむいて、泣いて甘えてばかりのわたしに、ここまでの情熱をかけてくれるのかと驚いたわ。だって、この炎のような燃える思いをわたしに抱いているってことでしょう?本当の気持ちを知ったのは、ずいぶんあとのことなのよ。何より嬉しかったのは、珊瑚って、子どもを守る護符なの。マルクスは若いころは口数が少なかったから、直接言われたわけではないけれど、『私がついているから心配するな』って言われたような気分になったわ。その日から、わたしは少しずつ元気を取り戻した。ビルング家の女の務めも、果たすようになった。そして、わたしはかわいい男の子を産んだ。立て続けに二男を、少しおいてから三男を産んだ。私はこの上なく幸せだったわ。だけど…」
カタリーナは両手を強く握りしめた。その手はぶるぶると震えていた。
「わたしの幸せはまたしても崩れ去った。あのおぞましい赤髭が、すべて奪っていった!あの子たちをすべて喪ったあと、わたしの心に、決して消えない炎がおこった。赤い、赤い、血のような、あの珊瑚のような炎がおこった。その炎がなければ、わたしはまたしても死のうと思ったかもしれない。マルクスがくれた炎は、わたしに生きる希望を与えてくれたけれど、そのときわたしの心におこった炎は…あれは…確かにわたしを生かしたけれど…」
カタリーナはうつむいて黙り込んだ。ミーナはカタリーナの強く握られたままの両手に自分の両手をそっと重ねた。しばらくしてから、カタリーナは重い口を開いた。
「わたしは、生まれて初めて男になりたいと願った。騎士になりたいと願ったわ。そうして、この手で、わたし自身の手で、あの憎くき赤髭の息の根を止めたいと思った!だけど、どんなに願ってもわたしは男にはなれない。今さら女の身で騎士になることもできない。けれども、心におこった炎を消し去ることは、もっともっとできなかった!そのとき、わたしは思いついたの。わたしが子を産んで、その子に、わたしの思いを託すって、ね」
ミーナは驚きのあまり、カタリーナから手を離した。
「皆、マルクスがそう考えたと思っているようだけど、本当は違うのよ。わたしなのよ、我が子に自身の復讐を託すと決めたのは!でも、わたしはもう子どもを産めないと、お医者さまは言ったわ。月のものがもう来なくなってしまってね。わたしは泣いて泣いて泣き続けた。こんなに泣いたのは、初めて産んだ子を喪って以来だったわ。そして、私は恐ろしいことを思いついたの。誰かに代わりに産んでもらえばいいってね。マルクスは、長く連れ添ったわたしの半身。マルクスの子はわたしの子だって、ね」
ミーナはカタリーナの深い情念に驚きを隠せなかった。日だまりのように温かいお義母さまのどこに、こんな思いが隠されていたのだろうと思っていた。しかし、ミーナは懺悔を聞くものの務めとして、カタリーナの懺悔が終わるまでは決して口を開くまいと決意していた。
「当時この城には、わたしの遠縁が働いていたの。その娘はわたしの若いころにそっくりでね、わたしはこの娘にしようと思ったわ。ちょうどそのころ、娘の実家が困窮状態にあることを、わたしは知っていたの。わたしは全財産をかき集めて、娘に頼んだわ。わたしの代わりにマルクスの子を産んでちょうだい、そうしてくれたらこの財産をすべてあげるって、ね。娘は承諾したわ。承諾するよりほかなかったのよ。だって、この家の奥方の頼み事よ。どうせ断ればこの家にはいられなくなると、家族を支えることはできなくなると、娘はよくわかっていたのよ!そのうえ、わたしはマルクスが拒否するのを恐れて、だまし討ちのように酒に酔わせてことに及ばせた!翌朝、すべてを知ったときのマルクスの顔を、わたしは死ぬまで忘れることはないでしょう…。
わたしは娘にむごい仕打ちをし、命がけで出産させて、そのうえ生まれた子どもをわたしの子だと言って奪ったわ。それは、どんな財産を積んでもあがなえることかしら。娘は、お金はいらないと言ったわ。だけど、わたしは娘にむりやり財産を持たせた。これでご家族を助けなさい、あなたの新しい暮らしのために使いなさい、と言ってね。娘は半分だけ持っていったわ。わたしは自己満足のために、娘にお金を持たせた。わたしの心を少しでも和らげようとするために!
そして、わたしは生まれた子どもに、自分が背負ったこともないような重荷を負わせた。真面目なあの子は、それこそ一つも疑わずに、与えられた使命を果たそうとした!将来、領主として、この土地をいかに治めるか考えることもなく。自分の幸せすら考えることもなく!たとえ、どんなに愛情を注ごうと、優しい言葉をかけようと、どんなに、どんなに、あなたはわたしのかわいい子どもだと抱きしめたとしても!わたしは、なんて、残酷なことをしたのでしょう!だけど…」
カタリーナは目から大粒の涙をこぼし、真っ直ぐにミーナの顔を見つめた。すがるような顔をしていた。
「だけど、それを罪と呼んだら、あの子の存在そのものを否定することになる。わたしの心に炎がおこらなかったら、マルクスを騙さなかったら、娘に子どもを産ませなかったら…わたしのために命をかけて頑張ってくれた、あの優しい子は、今もどこかで戦っているあの子は、この世のどこにもいないのよ…。だから、わたしは、わたしの罪を、罪と呼ぶことすらできず、死ぬまで心の奥底にしまっておくことしかできなかった…たとえそれが、死ぬよりも辛いことだとしても。だって、それが、神さまがわたしに与えた罰なのだから」
カタリーナが話し終えると、ミーナはカタリーナの身体を包み込むように抱きしめた。
「お話ししてくださってありがとうございます、お義母さま。お義母さまはもう充分に苦しみました。きっと、神さまもお許しのことと思います。何よりも、イェルクは…イェルクはお母さまのなさったことを、罪だとは思っていませんわ。イェルクは自身の使命に誰よりも誇りを持っていましたし、自分の力は、お義母さまやお義父さま、それに亡くなったお兄さまたちからいただいたものだと言っていましたわ。イェルクはお義母さまを深く愛しているのです。母の形をしたものに傷をつけることさえ許さないくらいに。もちろん、お義父さまたちのことも。だから、もう、苦しまないで…」
そこまで言うと、ミーナは感極まって泣き出した。ミーナは子どものように泣きじゃくった。いつの間にか、カタリーナがミーナの背中をさすっていた。
「ミーナ。あなたは本当に優しい子。あなたがこの家に来てくれてよかったわ。わたしはずいぶん、救われた思いがするわ。本当にありがとう。どうか、イェルクにとっての救いにもなってちょうだいね。もう、そうなっているかしら…」
「お義母さま…」
ミーナはカタリーナと本当の母娘のように抱き合い、幸せな涙を流した。
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