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前編 ミーナは糸を紡ぐ
第10話 アラリケの呪い(1)
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「本当に行くの!考え直しなさいよ、ウィルヘルミーナさん!」
修道院の礼拝堂のステンドグラスの前で、ミーナはアラリケに乱暴に腕を引っ張られ、痛い痛いと声を上げた。
「院長先生が、どれほどがっかりしておられるか、わからないの!院長先生はあなたにもっと高等な薬の知識を身につけさせようって期待なさっていたのよ!」
アラリケはさらにミーナの腕を強く引っ張った。まるで、人を地獄に引きずり込もうとしている魔女のようだ。
「もう、離してよ!院長先生ご自身が、わたしに、これからは人の愛のもとで生きなさいっておっしゃったのよ」
「愛…」
アラリケはミーナの腕から手を離し、だらりとうなだれた。ミーナはアラリケに優しく声をかけた。
「わたしの仕事は、あなたに引き継ぐって、院長先生がおっしゃっていたわ。大変なこともあるだろうけど、頑張って。いい修道女になってね。さようなら」
アラリケはまだうなだれていた。わたしと別れるのがそんなに寂しいのかしら、アラリケにもしおらしいところがあるのねとミーナは思った。
「あなたの結婚相手のイェルクさまは、デゼルタ軍から、黒髪の復讐鬼とよばれていたとか」
突然、アラリケは首を持ち上げ、左側のステンドグラスを指さして、叫ぶようにこう言った。
「それに緑の瞳をしてらっしゃるとか!まるであの悪魔みたいに。きっと恐ろしい方に違いないわ!そんな人の元に嫁ぐなんて、ウィルヘルミーナさん、あなたなんてかわいそうなんでしょう!」
アラリケは涙を流して去って行った。そのときのミーナには、アラリケの言葉が負け惜しみだと受け止める余裕があった。その言葉が、ミーナとイェルクの結婚生活に大きな影響を与えるとは、少しも思っていなかった。
ミーナは修道院の門を開き、手にしていた円錐形の帽子をかぶった。修道院と同じように、赤毛を隠すためだ。用意された馬車に乗り込み、長い時間をかけてイメディング城に戻った。悲しみと怒りでいっぱいだった幼い日と違って、戻ってきた日のミーナは幸せいっぱいの気持ちでいた。
ミーナは生まれて初めてイメディング城内に入った。この国では珍しく、赤い絨毯が床に敷いてあった。調度品はみな美しく、それにきっちりとそろえて並べてあった。飾り棚にはちり一つ落ちていなかった。ゲルトルートが亡くなったあとも、メイドたちは言いつけを守って暮らしているのがうかがわれた。
ミーナは大広間のさらに奥にある、領主の執務室に通された。そこには十年ぶりに会う義理の兄コンラートが、ふんぞり返って座っていた。
「ウィルヘルミーナ、よく戻ったな」
「コンラートお兄さま。お久しぶりです。まずはゲルトルート奥さまのこと、お悔やみ申し上げます」
ミーナは一礼をしたあと、心を込めて発言した。嘘っぽく聞こえてはいけないからだ。
「ふん。修道院で、礼儀は覚えてきたようだな。あの野生児が見違えたぞ。だが、母上は、お前なんぞに哀悼の意を表されても、嬉しくもなんともないだろうな」
コンラートの発言一つ一つから悪意が感じられた。ミーナは、お兄さまも大人になれば少しは優しくなるだろうと期待していたのに、がっかりだわ、と思ったが、顔に出さないように努力した。
「お父さまが亡くなったことをお伝えくださり、ありがとうございました。あとでお墓参りをしたいのですが、よろしいでしょうか」
「勝手にしろ」
コンラートはぶっきらぼうに言い放った。
「あとお兄さま。立派なご領主になられたそうで。街中の民が噂しておりました。妹のわたしとしても、鼻が高いですわ」
「当然だ」
コンラートは昔と変わらない、自身たっぷりの笑みを浮かべた。ミーナは、早く結婚が決まってよかった、と思った。この兄とずっと一緒に暮らすと思ったら、耐えられない。ご機嫌とりをしながら暮らすのはまっぴらごめんだと、心の底から感じていた。
「お父さまは、わたしを正式に、養女として迎えてくださったとか。くわしいことを教えていただけますか?」
ミーナは言葉を一つ一つ、丁重に発音しながら義理の兄に尋ねた。コンラートは、そんなことをいちいち答えなければならないのか、と言いたげな態度を取った。
「もうわかっていると思うが、お前は父上の血を引いていない。父上は死の淵で、あの女とは何もなかったと告白された」
コンラートは「父上」という言葉を、まるで下々の者が父親を「親父」と呼ぶような、ぞんざいな口調で用いた。ミーナはそんなことを気にするより、お母さまにはきっとお父さまに会う前から愛する人がいたんだわ、と考えて胸がいっぱいになった。
「だが父上はお前のことをずっと気にかけていた。修道院に手紙を送って、お前の様子をうかがっていたようだ。父上の死後、修道院からの手紙がいくつか見つかった。まあ、読め」
コンラートから差し出された手紙の束には、修道院でのミーナの様子が事細かに記されていた。こんなにまめなやりとりをしていたなんて、ミーナは全く知らなかった。中でも嬉しかったのは、ミーナがまだ幼かった頃、礼拝堂のステンドグラスにまつわる物語をすらすらとそらんじたことを、レオポルトはなんと賢い娘だろう、と思ってくれたことだ。
「晩年は国王陛下の元にうかがって、どこの馬の骨とも知れぬお前をイメディング家の養女として迎える、正式な許可を与えてくださるよう直談判されていた。その甲斐あって、お前は今日ここにいるんだ。せいぜい感謝するといい」
「お父さま…」
思いかけない養父の優しさに、ミーナは心を打たれた。生き別れた幼い頃から、今日に至るまで、レオポルトのことをどこか恨んでいた自分のことが恥ずかしくなった。
「さらに、父上は、お前のためにいい男を見つけるよう、わざわざこの私に頼んできた。そこで息を引き取った。私は、イェルクが幼いお前を可愛がっていたことを思い出した」
イェルクの名前が出てきたのでミーナは舞い上がってしまった。コンラートの言葉の節々から感じられるとげとげしいものに、ミーナは全く気づいていなかった。
「赤髭を倒し、戦が終わらぬ限り、イェルクは結婚しないことくらい、わかりきっていたからな。亡くなられた父上には天上で待っていただくことになったが、戦が終わったのちにイェルクにお前との結婚を打診した。イェルクは二つ返事で承諾した」
ミーナは天にも昇る気持ちになった。足下がふわふわして、今なら空を飛べそうだ。しかし、少し冷静になろうと思い立ち、ミーナはあえてコンラートに釘を刺すことにした。
「ですがお兄さま。そんなに期間があいていたならば、わたしの気持ちを確認してから、結婚の話を進めるべきでした。結婚には男女の愛が必要だと、神さまもおっしゃっています。ええ、わたしは、その、あの、もちろん…」
「お前の気持ちなどどうでもいい」
もじもじしているミーナに対して、コンラートは冷たく言い放った。ミーナは自分の気持ちをばっさりと切り捨てられて腹が立ったが、義兄の機嫌を損ねて結婚話が台無しになっては困ると思い、笑ってごまかすことにした。
「お前はしばらくここで暮らして、結婚に向けた準備をしろ。式は春の予定だ」
そう言うと、コンラートは、鈴を鳴らして誰かを呼び出した。
「失礼いたします」
一人のメイドが丁重に扉を開けて入ってきた。年は二十歳前で、素朴な顔立ちをした、人の良さそうな女性だった。
「ヘリガ、これは私の義理の妹、ウィルヘルミーナだ。今日からお前が世話をしろ。たっぷり香油を塗って綺麗にしてやれ。念入りにやるんだぞ、嫁ぎ先から突き返されたら困るのでな」
「かしこまりました」
ヘリガと呼ばれたメイドはうやうやしく礼をした。
「お前はこれの嫁ぎ先についていくのだ。嫁ぎ先はビルング家だ。わかったな」
「かしこまりました」
ヘリガは先ほどと寸分違わぬ口調で返事をした。一生を左右しかねない事態でも、口を挟む権利など、少なくともこの城のメイドにはなかったのだ。ヘリガはミーナの側に寄り、そっと背中に手を差し出した。
「さあ、ウィルヘルミーナさま、こちらへ…」
ヘリガに促されて執務室を出ようとしたミーナの背中に、コンラートは辛辣な声を浴びせた。
「私の元へはもう来るなよ。お前の不細工な顔など、できれば二度と見たくないのだから。おい、ヘリガ。これの顔には、しっかりと化粧を施しておけ」
「かしこまりました」
ヘリガはくるりときびすを返してコンラートに一礼し、またくるりとミーナの方に向き直り、何事もなかったように執務室を出て行った。
修道院の礼拝堂のステンドグラスの前で、ミーナはアラリケに乱暴に腕を引っ張られ、痛い痛いと声を上げた。
「院長先生が、どれほどがっかりしておられるか、わからないの!院長先生はあなたにもっと高等な薬の知識を身につけさせようって期待なさっていたのよ!」
アラリケはさらにミーナの腕を強く引っ張った。まるで、人を地獄に引きずり込もうとしている魔女のようだ。
「もう、離してよ!院長先生ご自身が、わたしに、これからは人の愛のもとで生きなさいっておっしゃったのよ」
「愛…」
アラリケはミーナの腕から手を離し、だらりとうなだれた。ミーナはアラリケに優しく声をかけた。
「わたしの仕事は、あなたに引き継ぐって、院長先生がおっしゃっていたわ。大変なこともあるだろうけど、頑張って。いい修道女になってね。さようなら」
アラリケはまだうなだれていた。わたしと別れるのがそんなに寂しいのかしら、アラリケにもしおらしいところがあるのねとミーナは思った。
「あなたの結婚相手のイェルクさまは、デゼルタ軍から、黒髪の復讐鬼とよばれていたとか」
突然、アラリケは首を持ち上げ、左側のステンドグラスを指さして、叫ぶようにこう言った。
「それに緑の瞳をしてらっしゃるとか!まるであの悪魔みたいに。きっと恐ろしい方に違いないわ!そんな人の元に嫁ぐなんて、ウィルヘルミーナさん、あなたなんてかわいそうなんでしょう!」
アラリケは涙を流して去って行った。そのときのミーナには、アラリケの言葉が負け惜しみだと受け止める余裕があった。その言葉が、ミーナとイェルクの結婚生活に大きな影響を与えるとは、少しも思っていなかった。
ミーナは修道院の門を開き、手にしていた円錐形の帽子をかぶった。修道院と同じように、赤毛を隠すためだ。用意された馬車に乗り込み、長い時間をかけてイメディング城に戻った。悲しみと怒りでいっぱいだった幼い日と違って、戻ってきた日のミーナは幸せいっぱいの気持ちでいた。
ミーナは生まれて初めてイメディング城内に入った。この国では珍しく、赤い絨毯が床に敷いてあった。調度品はみな美しく、それにきっちりとそろえて並べてあった。飾り棚にはちり一つ落ちていなかった。ゲルトルートが亡くなったあとも、メイドたちは言いつけを守って暮らしているのがうかがわれた。
ミーナは大広間のさらに奥にある、領主の執務室に通された。そこには十年ぶりに会う義理の兄コンラートが、ふんぞり返って座っていた。
「ウィルヘルミーナ、よく戻ったな」
「コンラートお兄さま。お久しぶりです。まずはゲルトルート奥さまのこと、お悔やみ申し上げます」
ミーナは一礼をしたあと、心を込めて発言した。嘘っぽく聞こえてはいけないからだ。
「ふん。修道院で、礼儀は覚えてきたようだな。あの野生児が見違えたぞ。だが、母上は、お前なんぞに哀悼の意を表されても、嬉しくもなんともないだろうな」
コンラートの発言一つ一つから悪意が感じられた。ミーナは、お兄さまも大人になれば少しは優しくなるだろうと期待していたのに、がっかりだわ、と思ったが、顔に出さないように努力した。
「お父さまが亡くなったことをお伝えくださり、ありがとうございました。あとでお墓参りをしたいのですが、よろしいでしょうか」
「勝手にしろ」
コンラートはぶっきらぼうに言い放った。
「あとお兄さま。立派なご領主になられたそうで。街中の民が噂しておりました。妹のわたしとしても、鼻が高いですわ」
「当然だ」
コンラートは昔と変わらない、自身たっぷりの笑みを浮かべた。ミーナは、早く結婚が決まってよかった、と思った。この兄とずっと一緒に暮らすと思ったら、耐えられない。ご機嫌とりをしながら暮らすのはまっぴらごめんだと、心の底から感じていた。
「お父さまは、わたしを正式に、養女として迎えてくださったとか。くわしいことを教えていただけますか?」
ミーナは言葉を一つ一つ、丁重に発音しながら義理の兄に尋ねた。コンラートは、そんなことをいちいち答えなければならないのか、と言いたげな態度を取った。
「もうわかっていると思うが、お前は父上の血を引いていない。父上は死の淵で、あの女とは何もなかったと告白された」
コンラートは「父上」という言葉を、まるで下々の者が父親を「親父」と呼ぶような、ぞんざいな口調で用いた。ミーナはそんなことを気にするより、お母さまにはきっとお父さまに会う前から愛する人がいたんだわ、と考えて胸がいっぱいになった。
「だが父上はお前のことをずっと気にかけていた。修道院に手紙を送って、お前の様子をうかがっていたようだ。父上の死後、修道院からの手紙がいくつか見つかった。まあ、読め」
コンラートから差し出された手紙の束には、修道院でのミーナの様子が事細かに記されていた。こんなにまめなやりとりをしていたなんて、ミーナは全く知らなかった。中でも嬉しかったのは、ミーナがまだ幼かった頃、礼拝堂のステンドグラスにまつわる物語をすらすらとそらんじたことを、レオポルトはなんと賢い娘だろう、と思ってくれたことだ。
「晩年は国王陛下の元にうかがって、どこの馬の骨とも知れぬお前をイメディング家の養女として迎える、正式な許可を与えてくださるよう直談判されていた。その甲斐あって、お前は今日ここにいるんだ。せいぜい感謝するといい」
「お父さま…」
思いかけない養父の優しさに、ミーナは心を打たれた。生き別れた幼い頃から、今日に至るまで、レオポルトのことをどこか恨んでいた自分のことが恥ずかしくなった。
「さらに、父上は、お前のためにいい男を見つけるよう、わざわざこの私に頼んできた。そこで息を引き取った。私は、イェルクが幼いお前を可愛がっていたことを思い出した」
イェルクの名前が出てきたのでミーナは舞い上がってしまった。コンラートの言葉の節々から感じられるとげとげしいものに、ミーナは全く気づいていなかった。
「赤髭を倒し、戦が終わらぬ限り、イェルクは結婚しないことくらい、わかりきっていたからな。亡くなられた父上には天上で待っていただくことになったが、戦が終わったのちにイェルクにお前との結婚を打診した。イェルクは二つ返事で承諾した」
ミーナは天にも昇る気持ちになった。足下がふわふわして、今なら空を飛べそうだ。しかし、少し冷静になろうと思い立ち、ミーナはあえてコンラートに釘を刺すことにした。
「ですがお兄さま。そんなに期間があいていたならば、わたしの気持ちを確認してから、結婚の話を進めるべきでした。結婚には男女の愛が必要だと、神さまもおっしゃっています。ええ、わたしは、その、あの、もちろん…」
「お前の気持ちなどどうでもいい」
もじもじしているミーナに対して、コンラートは冷たく言い放った。ミーナは自分の気持ちをばっさりと切り捨てられて腹が立ったが、義兄の機嫌を損ねて結婚話が台無しになっては困ると思い、笑ってごまかすことにした。
「お前はしばらくここで暮らして、結婚に向けた準備をしろ。式は春の予定だ」
そう言うと、コンラートは、鈴を鳴らして誰かを呼び出した。
「失礼いたします」
一人のメイドが丁重に扉を開けて入ってきた。年は二十歳前で、素朴な顔立ちをした、人の良さそうな女性だった。
「ヘリガ、これは私の義理の妹、ウィルヘルミーナだ。今日からお前が世話をしろ。たっぷり香油を塗って綺麗にしてやれ。念入りにやるんだぞ、嫁ぎ先から突き返されたら困るのでな」
「かしこまりました」
ヘリガと呼ばれたメイドはうやうやしく礼をした。
「お前はこれの嫁ぎ先についていくのだ。嫁ぎ先はビルング家だ。わかったな」
「かしこまりました」
ヘリガは先ほどと寸分違わぬ口調で返事をした。一生を左右しかねない事態でも、口を挟む権利など、少なくともこの城のメイドにはなかったのだ。ヘリガはミーナの側に寄り、そっと背中に手を差し出した。
「さあ、ウィルヘルミーナさま、こちらへ…」
ヘリガに促されて執務室を出ようとしたミーナの背中に、コンラートは辛辣な声を浴びせた。
「私の元へはもう来るなよ。お前の不細工な顔など、できれば二度と見たくないのだから。おい、ヘリガ。これの顔には、しっかりと化粧を施しておけ」
「かしこまりました」
ヘリガはくるりときびすを返してコンラートに一礼し、またくるりとミーナの方に向き直り、何事もなかったように執務室を出て行った。
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