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前編 ミーナは糸を紡ぐ
第5話 ミーナの告白(4)
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「ミーナ、さっき、どうしてお前達の肩を持つのか、コンラートが私に尋ねたろう?」
イェルクは一つ一つの言葉をゆっくりと噛み締めるように話し出した。
「コンラートの前では言わなかったが、理由はもう一つあってな。それは……」
「それは?」
ミーナは泣きじゃくりながら続きを待った。
「お前に自分の姿を、クラーラ様に実の母の面影を重ねたからだ」
「どういうこと?」
「これから話すことは、とても難しい話だから、わからないこともあるだろう。ただ、ひとつだけ、わかってほしいことがある。聞いてくれるか」
ミーナは涙を拭った。イェルクが自分を子ども扱いせずに話してくれているようで、嬉しかったのだ。
今から二十五年ほど前、まだイェルクが生まれていなかった頃、リタラント国とデゼルタ国の戦いは、デゼルタ国が圧倒的優位に立っていた。デゼルタ国は、当時見つかった銀山のもたらす莫大な富をもとに、遠い異国の遊牧民を傭兵として大量に雇ったのだ。その遊牧民は掠奪や陵辱の限りを尽くすことで有名な、悪名高い連中で、リタラント国の民は彼らを言葉どおりの意味で「蛮族」と呼んだ。蛮族の多くは、ミーナと同じ、赤毛に茶色の瞳をもち、皮膚が薄く赤ら顔をしていた。
幼い頃のミーナは、自分の外見をさほど気にしていなかった。今のミーナからすれば、あの愛されているという自信はどこからきたのだろう、と思うほどだ。ミーナは修道院で他の娘たちから散々「蛮族の子」とからかわれ、自分の外見にすっかり自信をなくしていた。もっとも、赤毛の人は蛮族だけとは限らない。リタラント国にもミーナと同じように赤毛の者はいた。ただ、珍しいだけのことだ。そうした人々は、おしなべて蛮族とからかわれるはめになった。
おぞましい蛮族たちは、剣術にも槍術にも、馬術にも長けていた。なかでも特に武術に優れ、かつ、凶悪極まりない男がいた。その男は「赤髭」と呼ばれていた。
戦果を上げ、報賞をもらうことだけを考えていた赤髭は、貴族の子息に狙いを定め、戦場を駆け回った。多くの若い貴族が戦場に命を散らした。そのうち、貴族たちは自分の息子を戦場に出すのを嫌がるようになった。それがリタラント国の武力の低下を招いた。リタラント国はあっという間に不利な状況に置かれた。
そんな中、打倒赤髭を掲げて立ち上がった貴族たちがいた。それが、ビルング家の三人の息子、つまりイェルクの兄たちだった。ビルング家の長男は、領主マルクスの後を継いで次の領主となるはずだったが、自分より優秀な一歳年下の弟が後を継いだ方がいいと考え、戦場で赤髭に一騎打ちを申し込んだ。激しい戦いの結果、彼は命を落とした。二男は兄の思いを知らぬまま、赤髭に敵討ちを申し込み、やはり命を失った。まだ従騎士だった三男は、戦場で赤髭の姿を見かけるなり無謀にも斬りかかり、返り討ちにあった。
息子たちを相次いで失ったマルクスは、激しい復讐心に駆られた。必ず敵を討ってやると、息子たちの墓前で誓いを立てた。彼はどうしても、自分の手で、あるいは自分の血を分けた息子の手で、赤髭にとどめを刺したいと考えた。しかし、既に四十を迎えていた妻カタリーナに、新たな子どもを望むのは難しかった。
夫の気持ちを察したカタリーナは策を講じた。彼女には全幅の信頼を寄せる若いメイドがいた。そのメイドはカタリーナの親戚で、若い頃のカタリーナにとてもよく似ていた。カタリーナはメイドに高い報奨金を与え、自分の代わりに夫マルクスとの子どもを産むように依頼したのだ。この国では子どものいる夫婦は離婚することができなかった。かといって、妾を持てば、家の中で無用な争いを産むかもしれない。賢明なカタリーナは、貴族の妻として最良の決断をしたのだ。
カタリーナは、正体をなくすほど強い酒をマルクスに飲ませ、メイドを若い頃のカタリーナと誤認させたまま、ことに及ばせた。翌日、カタリーナはマルクスにすべてを打ち明けた。マルクスは妻がそこまでして、夫の復讐をかなえようとしたことに深く感謝した。その後、メイドは妊娠し、内密のまま一人の男の子を出産した。
しかし、ここで大きな問題が起こった。生まれた男の子は、緑色の目をしていたのだ。メイドは狼狽して、身の潔白を訴えた。そのとき、カタリーナはこう言ったそうだ。
「この子はマルクスとわたしの子です。間違いありません」
あとで判明したことだが、メイドの身内に、西の国出身の緑の目をした男がいて、イェルクと名付けられた男の子は、その血を濃く受け継いだのだ。メイドは報奨金を持ってふるさとに帰り、そこで結婚して幸せに暮らしているという。
マルクスは他の子どもたち以上に、イェルクに厳しく剣術を仕込んだ。イェルクは、生まれながらに復讐の使命を課せられた子どもだった。だがカタリーナは、他の子どもたちと同様に、イェルクに深い愛情と慈しみを注いだのだ。
「お兄さまは大きな使命を持って生まれてきたのね」
幼いミーナはため息をついた。何のために生まれてきたのか、と、陰口を叩かれたこともあるミーナは、大きな使命を持って生まれてきたイェルクをうらやましいと思ったのだ。
「私は使命を持って生まれてきたことを、誇りに思っている。もし、コンラートの言うとおり、私に才能があるとしたら、それは人が……死んだ兄上達や、父上母上が与えてくれたものだ。私は自分の使命のためなら、命を投げ出しても惜しくないと思っている。それくらいの覚悟がないと、恐ろしい赤髭を倒すことはできないだろう。私はそのためだけに生きているのだ。どうかそれだけはわかってくれ」
「わかりました。お兄さま、頑張って……。どうか、使命を果たしてください」
ミーナは愛する人を戦場に送り出す娘の気持ちになっていた。
「でも、お兄さま。もし、お兄さまが使命を果たしたら、そのときにはわたしを迎えに来てくれる?」
イェルクは驚いた表情をし、じっと考え込んだ後、優しく微笑んだ。
「わかった。そのときは迎えに行く。だから、いい子にして待っているんだ。さあ、もう帰るんだ。辺りが暗くなってきた。ミーナは暗いのが嫌いだったな。なにより、クラーラ様が心配しているはずだ」
ミーナはうれしくて、こぼれるような笑みをうかべた。その頭を、イェルクは優しくなでた。
「お母さま、聞いて聞いて!」
ミーナは家に帰るなり、クラーラの胸元に飛び込んだ。
「まあ、ミーナ。こんな遅くまで何をしているのかと思ったら」
クラーラはミーナを優しく抱きしめた。
「イェルクお兄さまがね、将来、わたしと結婚してくれるって言うの! 修道院に迎えに来てくれるって言うの!」
「修道院? どういうこと……?」
ミーナは完全に舞い上がっていて、クラーラの顔から血の気が引いたのに気づかなかった。
「ゲルトルート奥さまがね、この秋になったら、わたしを修道院にやるっておっしゃっているらしいの。でも大丈夫よ。いつかきっと、イェルクお兄さまが迎えに来てくれるから。それからまた、お母さまも一緒に暮らしましょう」
「いやよ!」
クラーラは大声で叫ぶと、ミーナをきつく、きつく抱きしめた。
「ミーナ、あなたのことはどこにもやらない。貴族の娘のしきたりなど、どうでもいい。レオポルトさまにお願いするわ。どうか、ミーナをどこにもやらないでって! わたしが生きているうちは、いえ、たとえ死んだとしても、絶対にそんなことは許さない!」
「お母さま、お母さま、離して!」
クラーラが巻き付けた腕があまりにも痛いので、ミーナはじたばたした。
レオポルトはクラーラに、ミーナはずっとこの城に置いておく、と約束した。クラーラは心底ほっとした様子を見せた。ミーナはイェルクにそのことを伝えたかったが、恥ずかしさの余りイェルクに会うことははばかられた。
秋になってイェルクはビルング家に帰った。今度は従騎士となり、数年後に待つ叙勲式に備えるためだった。ミーナはイェルクに別れの挨拶をすることができなかった。夏の終わりに、クラーラが胸を押さえながら倒れ、程なくして亡くなったからだ。
ミーナは悲しくて、頭が割れそうなほど泣き叫んだ。しかし周りの大人は非情にも、ミーナを修道院行きの馬車にむりやり押し込んだ。そのときに、ミーナは大事な鞠を落としてしまった。ミーナは、口先ばかりで結局何もしてくれなかった、父レオポルトが憎いと思っていた。
イェルクは一つ一つの言葉をゆっくりと噛み締めるように話し出した。
「コンラートの前では言わなかったが、理由はもう一つあってな。それは……」
「それは?」
ミーナは泣きじゃくりながら続きを待った。
「お前に自分の姿を、クラーラ様に実の母の面影を重ねたからだ」
「どういうこと?」
「これから話すことは、とても難しい話だから、わからないこともあるだろう。ただ、ひとつだけ、わかってほしいことがある。聞いてくれるか」
ミーナは涙を拭った。イェルクが自分を子ども扱いせずに話してくれているようで、嬉しかったのだ。
今から二十五年ほど前、まだイェルクが生まれていなかった頃、リタラント国とデゼルタ国の戦いは、デゼルタ国が圧倒的優位に立っていた。デゼルタ国は、当時見つかった銀山のもたらす莫大な富をもとに、遠い異国の遊牧民を傭兵として大量に雇ったのだ。その遊牧民は掠奪や陵辱の限りを尽くすことで有名な、悪名高い連中で、リタラント国の民は彼らを言葉どおりの意味で「蛮族」と呼んだ。蛮族の多くは、ミーナと同じ、赤毛に茶色の瞳をもち、皮膚が薄く赤ら顔をしていた。
幼い頃のミーナは、自分の外見をさほど気にしていなかった。今のミーナからすれば、あの愛されているという自信はどこからきたのだろう、と思うほどだ。ミーナは修道院で他の娘たちから散々「蛮族の子」とからかわれ、自分の外見にすっかり自信をなくしていた。もっとも、赤毛の人は蛮族だけとは限らない。リタラント国にもミーナと同じように赤毛の者はいた。ただ、珍しいだけのことだ。そうした人々は、おしなべて蛮族とからかわれるはめになった。
おぞましい蛮族たちは、剣術にも槍術にも、馬術にも長けていた。なかでも特に武術に優れ、かつ、凶悪極まりない男がいた。その男は「赤髭」と呼ばれていた。
戦果を上げ、報賞をもらうことだけを考えていた赤髭は、貴族の子息に狙いを定め、戦場を駆け回った。多くの若い貴族が戦場に命を散らした。そのうち、貴族たちは自分の息子を戦場に出すのを嫌がるようになった。それがリタラント国の武力の低下を招いた。リタラント国はあっという間に不利な状況に置かれた。
そんな中、打倒赤髭を掲げて立ち上がった貴族たちがいた。それが、ビルング家の三人の息子、つまりイェルクの兄たちだった。ビルング家の長男は、領主マルクスの後を継いで次の領主となるはずだったが、自分より優秀な一歳年下の弟が後を継いだ方がいいと考え、戦場で赤髭に一騎打ちを申し込んだ。激しい戦いの結果、彼は命を落とした。二男は兄の思いを知らぬまま、赤髭に敵討ちを申し込み、やはり命を失った。まだ従騎士だった三男は、戦場で赤髭の姿を見かけるなり無謀にも斬りかかり、返り討ちにあった。
息子たちを相次いで失ったマルクスは、激しい復讐心に駆られた。必ず敵を討ってやると、息子たちの墓前で誓いを立てた。彼はどうしても、自分の手で、あるいは自分の血を分けた息子の手で、赤髭にとどめを刺したいと考えた。しかし、既に四十を迎えていた妻カタリーナに、新たな子どもを望むのは難しかった。
夫の気持ちを察したカタリーナは策を講じた。彼女には全幅の信頼を寄せる若いメイドがいた。そのメイドはカタリーナの親戚で、若い頃のカタリーナにとてもよく似ていた。カタリーナはメイドに高い報奨金を与え、自分の代わりに夫マルクスとの子どもを産むように依頼したのだ。この国では子どものいる夫婦は離婚することができなかった。かといって、妾を持てば、家の中で無用な争いを産むかもしれない。賢明なカタリーナは、貴族の妻として最良の決断をしたのだ。
カタリーナは、正体をなくすほど強い酒をマルクスに飲ませ、メイドを若い頃のカタリーナと誤認させたまま、ことに及ばせた。翌日、カタリーナはマルクスにすべてを打ち明けた。マルクスは妻がそこまでして、夫の復讐をかなえようとしたことに深く感謝した。その後、メイドは妊娠し、内密のまま一人の男の子を出産した。
しかし、ここで大きな問題が起こった。生まれた男の子は、緑色の目をしていたのだ。メイドは狼狽して、身の潔白を訴えた。そのとき、カタリーナはこう言ったそうだ。
「この子はマルクスとわたしの子です。間違いありません」
あとで判明したことだが、メイドの身内に、西の国出身の緑の目をした男がいて、イェルクと名付けられた男の子は、その血を濃く受け継いだのだ。メイドは報奨金を持ってふるさとに帰り、そこで結婚して幸せに暮らしているという。
マルクスは他の子どもたち以上に、イェルクに厳しく剣術を仕込んだ。イェルクは、生まれながらに復讐の使命を課せられた子どもだった。だがカタリーナは、他の子どもたちと同様に、イェルクに深い愛情と慈しみを注いだのだ。
「お兄さまは大きな使命を持って生まれてきたのね」
幼いミーナはため息をついた。何のために生まれてきたのか、と、陰口を叩かれたこともあるミーナは、大きな使命を持って生まれてきたイェルクをうらやましいと思ったのだ。
「私は使命を持って生まれてきたことを、誇りに思っている。もし、コンラートの言うとおり、私に才能があるとしたら、それは人が……死んだ兄上達や、父上母上が与えてくれたものだ。私は自分の使命のためなら、命を投げ出しても惜しくないと思っている。それくらいの覚悟がないと、恐ろしい赤髭を倒すことはできないだろう。私はそのためだけに生きているのだ。どうかそれだけはわかってくれ」
「わかりました。お兄さま、頑張って……。どうか、使命を果たしてください」
ミーナは愛する人を戦場に送り出す娘の気持ちになっていた。
「でも、お兄さま。もし、お兄さまが使命を果たしたら、そのときにはわたしを迎えに来てくれる?」
イェルクは驚いた表情をし、じっと考え込んだ後、優しく微笑んだ。
「わかった。そのときは迎えに行く。だから、いい子にして待っているんだ。さあ、もう帰るんだ。辺りが暗くなってきた。ミーナは暗いのが嫌いだったな。なにより、クラーラ様が心配しているはずだ」
ミーナはうれしくて、こぼれるような笑みをうかべた。その頭を、イェルクは優しくなでた。
「お母さま、聞いて聞いて!」
ミーナは家に帰るなり、クラーラの胸元に飛び込んだ。
「まあ、ミーナ。こんな遅くまで何をしているのかと思ったら」
クラーラはミーナを優しく抱きしめた。
「イェルクお兄さまがね、将来、わたしと結婚してくれるって言うの! 修道院に迎えに来てくれるって言うの!」
「修道院? どういうこと……?」
ミーナは完全に舞い上がっていて、クラーラの顔から血の気が引いたのに気づかなかった。
「ゲルトルート奥さまがね、この秋になったら、わたしを修道院にやるっておっしゃっているらしいの。でも大丈夫よ。いつかきっと、イェルクお兄さまが迎えに来てくれるから。それからまた、お母さまも一緒に暮らしましょう」
「いやよ!」
クラーラは大声で叫ぶと、ミーナをきつく、きつく抱きしめた。
「ミーナ、あなたのことはどこにもやらない。貴族の娘のしきたりなど、どうでもいい。レオポルトさまにお願いするわ。どうか、ミーナをどこにもやらないでって! わたしが生きているうちは、いえ、たとえ死んだとしても、絶対にそんなことは許さない!」
「お母さま、お母さま、離して!」
クラーラが巻き付けた腕があまりにも痛いので、ミーナはじたばたした。
レオポルトはクラーラに、ミーナはずっとこの城に置いておく、と約束した。クラーラは心底ほっとした様子を見せた。ミーナはイェルクにそのことを伝えたかったが、恥ずかしさの余りイェルクに会うことははばかられた。
秋になってイェルクはビルング家に帰った。今度は従騎士となり、数年後に待つ叙勲式に備えるためだった。ミーナはイェルクに別れの挨拶をすることができなかった。夏の終わりに、クラーラが胸を押さえながら倒れ、程なくして亡くなったからだ。
ミーナは悲しくて、頭が割れそうなほど泣き叫んだ。しかし周りの大人は非情にも、ミーナを修道院行きの馬車にむりやり押し込んだ。そのときに、ミーナは大事な鞠を落としてしまった。ミーナは、口先ばかりで結局何もしてくれなかった、父レオポルトが憎いと思っていた。
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