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少年ブルーノは奇妙な店の前で呼び鈴を鳴らした。
そこは本来ならば店の者や仕入れ関係者が出入りするための裏扉。
部外者、まして彼のような小さな子が鳴らしたところで相手にされないはずだ。

しかしブルーノは呼び鈴に反応があると確信していた。

淡い色、ふわふわとした少し長めの前下がりな髪。ほっそりとした身体。
いかにも利口そうな顔を澄ました面持ちにして彼は待ち構える。

程なくして足音が聞こえてくる。それはひどくだった。

「ぁ、ぁ……っ♥♥ い、いらっしゃ、いぃ……♥♥♥ ブルーノく、ぅんっ♥」

現れたのはチョコレート色の長い髪が腰まで広がっている、落ち着いた風貌の婦人だ。

「あ、う……っ♥ あぁ、ん……っ!?♥♥♥ ん……っ、あ、あがって、いってぇ……♥♥♥」

女性は頼りない手つきでドアを開ける。が、突然身体を震わせて、ゆさり、と勢いよく豊かな乳房が跳ねる。
エプロンらしき布を纏ってはいるが、彼女のそれは服としての役割をほとんど果たしておらず、
貧相な前掛けから丸々と膨らんだ乳房の横っ面が覗いている。
とてもじゃないが、少年の前に現れる服装ではない。

薄暗くて見えづらくはあるが、彼女は腰を退き、奇妙に背中を丸めて前かがみになっている。

一度は乳房を隠す風に片腕をもう片方の手で抱くようにしたが、膨らみはそうすると却って強調されてしまう。
薄い布を巻き込み、こぼれてしまいそうになっているそこを恥じらい、
困り眉ではにかむ姿はやさしく清廉な大人の女性といった雰囲気だ。

その瞳はどこかぼんやりとしている。ぽってりとした唇は半端に開いてほ、ほ、と息を堪えきれずにいる。
頂が生地を押し上げ、くっきりと影を作って浮かび上がってしまっている淫らな姿を
少年の眼前へ晒していることに興奮を覚えているようだった。

少し肉付きのいい太腿は狭間を擦り合わせるようしきりにくねっている。
悩ましげな声を上げ、ふりふりと尻を揺らしながら、柱に掴まることで自身を支えている状態だった。

「んっ、ん……♥♥ い、いらっ、しゃ、あぁっん♥ ん、ぁあ……♥♥♥ あ、はぅ……っ、
ブルーノくん、だよね……?♥」

彼女は下手に出て機嫌を取るような、媚びた笑みを浮かべて言う。

「はい。そうです。あの、ここがニーナさんのお店、ですよね……?」

ブルーノはやけに不規則だった足音を思い出して、心の中でくつくつ嗤いながら、
やさしく微笑み返す。

「ん、ん……っ♥ う、ん……っ、そう、……っ!?♥♥♥ ……あ、あぁあっ♥ あっ、くっ♥」
「大丈夫ですか?」

女性は息も絶え絶えに返していたが、突然膝をガクンと折り、その場にへたり込んでしまった。
ブルーノは眉根を寄せて、心配手を差し出した。

「ん♥♥♥ あぅ……っ♥♥♥ だ、だいじょうぶ……♥ だいじょうぶ、だからぁ……っ、
はや、く……っ、ん、くっ♥ あが、って……!」

すると女性は慌てた風に頷き、下腹を隠すかのようにエプロンを手繰り寄せる。
そうして覚束ない足でどうにか立ち上がろうとするので、ブルーノは彼女の手を握った。

「あっ♥♥♥」
「立てそうですか?」

両の手を握って、ふわり、と笑みを浮かべて問うと、女性は頬を上気させ何か不明瞭な言葉を呟きながら頷く。

「だ、だいじょうぶぅ、だいじょうぶだからぁ……♥」
「そうですか? では、改めて案内をお願いできますか」

ブルーノは彼女の手を取り、支えてやった状態のまま店の中へと一歩踏み出す。
体勢を立て直したにもかかわらず、女性の方から手を離す様子はない。
それどころか彼女は彼の滑らかで小さい手に縋って握り返してくる。
照れくさそうに困り笑いを浮かべて、目を合わさないよう泳がせているが、
時折交わされる視線はじっとりとしていて、彼に対して何かを期待している素振りがあり、
瞳の奥底にはどろりとした情欲が渦巻いている。

ブルーノはそれをねっとりと精察しながら、顔には品のいい笑みを浮かべて一礼をする。

「おじゃましますね」

よくできた息子。息子が連れてきたら少し喜ばしいような育ちのいい友人。
誰が見てもそう感じる、いかにも優等生然とした柔和な態度だった。

その品のいい少年は目の前の――友人の手で堕とされ、哀れにも自分のような雄を求めるようになった――女性に喜色を覚え、
これから何をしようかと期待に胸を昂らせていた。
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