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7巻
7-3
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◆
野営地で無事合流した俺達は、少し早いが早々に野営の準備を始める。
なんと言っても、この野営地は人が少ない。
もう少し行けばコルニアの町があるので、他の旅人はわざわざここで野営する必要などないからだ。
「何それ、ずるい!」
「また……これは珍妙な技を」
短距離の〈異空間跳躍〉をやって見せると、ミントは口を開けて固まり、レンジュウロウは額を押さえて黙った。
一方、ユユは手を叩いて喜んでいる。
「すごい、アストル! ユユにもできる、かな?」
……素直に褒めてくれるのはユユだけだな。
「短距離なら負担も少ないし、頑張ればできるかもしれない。塔に帰ったら魔法式の解析からやってみよう」
「いや、そうじゃなくて……アストル、何? 今の」
ミントが呆れた様子でユユとの会話に割り込んできた。
「〈異空間跳躍〉」
「魔法名を聞いてるんじゃなくて、見えてる範囲なら例のアクセスなんたらがなくても跳べるってこと?」
「条件さえ揃っていれば? 戦闘中に使うには練度が足りないけどな」
これを戦闘時に使えればかなり意表を衝いた戦いができると思うんだけどな。
「アストルはすごい。すごいヘンよ……」
「失礼な奴だな」
「ああ、でも……ほっとしちゃった。アストルが戻ってきたって実感するわ。ねぇ、他にはヘンな魔法はないの?」
「魔法にヘンも何もないだろうに……」
そんな会話を交わしながら、夕食の準備を整える。
幸い、薪にできそうな木片は簡単に集められたし、近くに湧き水もあった。
一通り準備を終えた俺は、散歩がてらユユと共にそばにあった見晴らしの良い小さな丘に上る。
準備前はまだずいぶん高いところにあったような気がした太陽が、紅に染まりながら地平線の向こうへ沈もうとしていた。
「こんなに綺麗なのに、ここは誰も、使わないんだね」
夕焼けに照らされて輝く草原を見ながら、ユユが呟く。
「ああ、なんだか得した気分だな。しかし、早く塔に帰ってベッドで寝たい欲求もある」
「そうだね……一緒に、ごろごろ、しようね」
俺の手をそっと握って、ユユが微笑む。
夕日に照らされたストロベリーブロンドが、きらきらと鮮やかに艶めいて揺れる。
目を奪われていると、振り返ったユユと目が合う。
「ん? どうしたの、アストル」
「ユユに見惚れてたんだよ」
「ふふ。前も、こんなこと、あったね」
ふわりとした笑顔を俺に向ける。
「レンジュウロウさんの屋敷だったよな」
「あの時は、すごくドキドキ、しちゃった……。今も、だけど」
照れるユユが可愛すぎて、こっちまでドキドキしてきた。
誘われるように、顔を近付け唇を重ねる。
「おーい! イチャイチャしてないで食事にしましょ。お腹空いちゃったわ」
ミント……本当にお前というやつは生粋のスイッチアタッカーだよ!
見えているわけではないはずなのだが、このタイミングとは。少しくらいこのロマンチックな空気を続けさせてくれてもいいだろうに。
「……続きは、帰ってから、ね?」
「ああ。……うん?」
振り向いた時には、もうユユは丘を駆け下りはじめていた。
耳が赤いのは夕日に照らされているせいだろうか。
「アストルー、早くー」
ミントの呼ぶ声に大声で返事をして、俺も丘を駆け下りていく。
野営地に戻ると、すでに食事の準備が完全に整っていた。
「ありがとう、ミント」
「ふふふ、これぞ良妻スキルよ」
「……そんなスキル、聞いたことがないぞ」
そうは言ったものの、普段のガサツな雰囲気からは想像できないくらい、ミントの料理家事能力はとても高い。
あのブ厚い大剣を置いて鎧を脱げば、ミントは凶暴で家庭的な少女へと早変わりするのだ。
「イコマから持ち帰った食材で味噌雑炊を作ってみたわ。……わりと上手くできたと、思うんだけど」
上目遣いに俺の方をちらりと見る。
そんなに心配しなくても大丈夫だ、きっと美味いに違いない。
スープ皿によそってもらって、全員揃って祈りをささげる。
二十二神の正体を知った以上、無駄なことのように思えなくはないが、習慣はそう変えられない。
「では、〝いただきます〟」
イコマの食材であるのだから、この言葉で食事を始めるとしよう。
一口掬って、口に運ぶ。
「ああ、美味い。さすがだな」
小さく刻まれた野菜と米が味噌の風味でしっかりとまとまっている。
ほっとする味だ。
「うむ。美味い……腕に磨きをかけたのう、ミント」
そのレンジュウロウの言葉に〝ミントの気持ちを汲んでやれ〟という、遠回しなお節介が多分に含まれているのだろうことは、俺にもわかる。
「食事を終えたら周囲に警戒に出ます。賞金稼ぎがいないとも限りませんので」
匙に載った雑炊を吹き冷ましながら、チヨが告げた。
野営地であるため、結界石は設置されているが、これは魔物の接近を抑制はしても人の侵入は防げない。
周囲の警戒は別に行う必要がある。
〈毛むくじゃらの使用人〉などを配置して警戒に当たらせる手もあるが……すでに手遅れのようだ。
いつの間にか、緩い殺気を纏った細身の男が、ゆらりと野営地に姿を現していた。
食事中で気を緩ませていたとはいえ、ここまで接近を許すなんて……この男はかなりの手練れに違いない。
「……美味そうだな」
出し抜けに、男がそう口にした。
「料理自慢の嫁の手料理だ。一皿食べるか?」
「ご相伴にあずかろうかねぇ」
俺の返答に、にやりと笑った男が腰を下ろす。
年の頃は二十くらい。若く見えるが……体と同じく細身の顔の双眸からは、修羅場をくぐってきた者だけが宿す狂気にも似た鋭さがあった。
腰に提げているのは細剣だろうか。
ジャケットのような体にフィットした革鎧を纏い、金属で要所が補強されたサイブーツを履いている。
「これ食わせたら、見逃してくれるか?」
俺の問いに、男は薄く嗤って答える。
「味と、交渉次第だ」
そう言うと、男は俺達から少し離れた位置に腰を下ろし、味噌雑炊を掻き込む。
しばしして、器を置いた男がふわりと立ち上がった。
実に自然で、この男がいかに優れた体幹をしているかが一目でわかる。
「美味い……が、金貨五十枚にはちと及ばんねぇ。三十枚なら見逃してるところだ」
男は小さく会釈し、口角を上げる。
「賞金稼ぎの〝刺突剣〟って言えば、多少通りがいいかねぇ? 名をビスコンティと言う。おとなしく捕らわれてくれると、お互い怪我しないで済むが、どうだ?」
「あいにくだが『人間狩り』なんて遊びに付き合ってる暇はないんだ。ちょっとばかり重要な案件を抱えているのでね」
この男は手強い。立ち振る舞いや足運びだけで十二分にそれが伝わってくる。
まず、油断しない。俺が☆1だからといって気を緩めたりはしないし、常にその目は俺の一挙手一投足を見逃すまいと光っていた。
「だろうなぁ。でもちょっとおかしんだよねぇ……」
〝刺突剣〟ビスコンティが首を捻る。
「お前さ、何をやらかしたんだ? 『人間狩り』……しかも『☆1狩り』で、金貨をこれだけ積むのは普通ない。周りに手練れの護衛がいるからと言っても、せいぜい金貨十枚も積めば、依頼主は充分楽しめるはずなんだよねぇ」
「俺は何もしちゃいないさ。たかが☆1に何ができるって言うんだ」
「謙遜するなよ、〝魔導師〟アストル。ちょっとばかり調べたら、信じられないような内容ばっかりだったが……。これで人を見る目はあるつもりなんだぜぇ?」
ビスコンティがその二つ名にもなっている細剣を抜く。
材質は……真銀だろう。
美しい装飾に目が行きがちだが、その鋭さから、あれが業物であることは一目瞭然だ。
「なのでぇ……一対一でやりあおうか?」
レンジュウロウが槍を構えて、ビスコンティを睨みつける。
「何故そうなる。ワシらはアストルの護衛じゃぞ? そのような真似はさせぬ」
「良い案だと思ったんだがねぇ。もし勝てたらオレが調べた依頼主の情報……渡そうと思うんだがねぇ?」
ミントも同様に『白雪の君』を構える。
「アンタを叩きのめしてから聞き出したって変わらないわ」
「オレ、口固いぜぇ?」
いざとなれば魔法で無理やり口を割らせることもできるが……なんというか、この男は今までの賞金稼ぎとは少し違う。
挑発しながらも、俺を――あるいは俺達を試すような視線を送ってくる。
☆1相手というだけでこちらを侮らないとは、敵ながら信用できそうなヤツだ。
「でも俺は魔法使いだし、一対一だと分が悪いじゃないか?」
「じゃあ、十数えるまで攻撃しない……これでどうだ?」
一般的な魔法使いがランクⅡ魔法を完成させるのに必要な秒数が八秒前後。ランクⅢになればその倍だ。
どうやら、魔法使いのこともよく知っているようだ。
「……乗った」
「アストル、口車に乗るでない! 叩きのめしてから記憶を引きずり出せばよかろう」
レンジュウロウの物言いを聞いたビスコンティが眉をひそめる。
「そんなことできるのか? 禁呪じゃないか」
「ウェルスの賢者の間では合法って話になってる」
嘘だけど。
「く……さすがにこの人数はなぁ」
「俺一人でやるよ。十数えるまで待ってくれるんだろ?」
「男に二言はないねぇ」
すでに錬気は始めている。
無詠唱で重ねられるだけの付与魔法も重ねてあるし、準備万端整っている。
「いつでもいいぜぇ」
数歩離れたところで、ビスコンティがぎらぎらした目つきでこちらを見て笑った。
あれは戦闘狂の目だ。
俺と命のやり取りをするのが心底楽しみだという空気が、ありありと伝わってくる。
迷惑だが光栄な話だ。
ああいった手合いは、戦うこと自体が目的であり、その対象に選ばれるのは手練れと相場が決まっている。
俺は有名な二つ名持ちの賞金稼ぎのお眼鏡にかなったというわけだ。
「アストル……無理、しないで?」
「大丈夫だ。ちょっと待っててくれ」
心配そうなユユに笑いかけ、同じく心配そうなみんなに頷いてから、向き直る。
「では、スタートで!」
そう言うなり、魔法の小剣を抜いて、ビスコンティへと駆ける。
走りながら発動待機しておいた〈魔法の矢〉を【反響魔法】も同時使用して、連射する。
当然、牽制だ。
これで仕留められるとは思っていない。
「お? おおおお!?」
驚きながらも、それらを避け切り払って凌ぐ〝刺突剣〟ビスコンティ。
その剣捌きは速く、錬気して強化した俺でも捉えるのが困難なくらいだ。
「なんだぁ……!? 手品か? スキルか?」
「技術だよッ!」
懐に飛び込んで、魔法の小剣を振るう。
魔力に反応して【小剣】スキルを付与するこの魔法の小剣によって、俺の技術は格段に上がっているはずなのだが、ことごとく避けられる。
「変わった剣筋だがぁ……そろそろ十秒だぜぇッ!」
タメなど全くなかった。
ゼロ距離から矢よりも速く細剣が突き出されて、俺の肩を掠める。
「くぅ……!」
「殺ったッ!」
ビスコンティが勝利を確信したという顔で叫んだ。
しかし、トドメのもう一突きは……来なかった。
「あがががががあがががが」
代わりに膝を震わせて、ビスコンティが細剣を取り落とす。
少し麻痺が効きすぎたか?
麻痺したビスコンティに〈拘束〉の魔法をかけて動きを拘束する。
このままじゃ、痙攣発作で心臓を止めてしまいそうだ。
「な、何を……したぁ……?」
「ちょっとばかり手品を。王手だ、ビスコンティ」
首に魔法の小剣を突きつける。
その剣先から魔力の帯が伸びているのを理解できたのは、おそらくユユだけだろう。
ヤーパンの巫術と魔法の混合は上手くいったようだ。
剣筋が妙なことをビスコンティがもっと疑っていれば、危うかったが。
「投了……する。命乞いの権利を要求していいかぁ?」
「情報と交渉次第だ」
諦めたように目を閉じるビスコンティに、俺は笑ってそう答えた。
特に抵抗する素振りを見せないので縛るのはなんとなく気が引けたが、そこまで彼を信用しているわけではない。
俺は身動きできない彼に縄をかける。
「それで? 何から聞きたい」
縛り上げられたビスコンティが、俺を見た。
「依頼主のことを」
「依頼主はテリオンの傭兵富豪デックマンだ。『人間狩り』請負の第一人者だから、そう変なことじゃないねぇ」
その名は俺でも知っている。主に悪い知名度だが。
傭兵富豪デックマンは、テリオンの領主とも深いかかわりのある傭兵団の所有者だ。
団長というわけではなく、オーナーである。彼はまるで軍隊のような組織立った傭兵団をいくつか持っており、その派遣業務で財を成した。
そして、ビスコンティが説明したように『人間狩り』の第一人者でもある。
適当な罪状をでっちあげて賞金首とする『人間狩り』だが、彼は領主との太いパイプを利用して、それを容易に企画してしまう。
領主は領主で、食い詰め傭兵のガス抜きとしてこれを簡単に承認するのだ。
「んで、ここで問題になるのが金貨五十枚ってとこだ。☆1の首にぶら下げるにはちょいとばかりかさばる金額だ」
「俺が賢人だからじゃ?」
「それにしたって多すぎるだろ? で、オレは考えたわけよ……この金額を乗せるだけの手練れなんじゃないかってぇな」
「買いかぶりすぎだな。たかが☆1だよ、俺は」
俺の言葉に、ビスコンティが噴き出す。
「ここまでオレをのしておいて、そりゃあ自己評価が低すぎるぜぇ? まぁ……話を戻すと、いくらデックマンでも、そこまで金を積む理由はなんだ? 賢人だろうとなんだろうと、☆1は所詮☆1ってのが、頭の悪い連中の思考さ。ってんで、いろいろ調べてみたんだねぇ」
「何かわかったか?」
ビスコンティがニタリと笑って頷く。
「ここからは有料だ。命と引き換えでお願いしたいねぇ」
「いいとも。情報の対価に見合った話なら、命は取らないと約束する」
俺の返事に、レンジュウロウとミントが少しむっとした顔を見せる。
ここまで、襲撃者のほとんどを葬ってきたが、彼らとビスコンティはなんだか違う気がするのだ。
ビスコンティは金とは別の目的があって俺に近づいている気がしてならない。
先ほどの戦いすらも、俺を試すためにしたような気がしている。
「交渉成立。金の出所は、エルメリア王国に拠点を置く、ある商店からだった。それも調べると……ヘビに繋がってた」
ヘビ……『カーツ』か!
『カーツ』は☆至上主義を掲げる過激思想集団で、俺達と深い因縁がある。
まさか連中が『西の国』にまで手を回しているとは。
いや、☆1排斥の支持者はどこにでもいる。
そう考ると、『西の国』にだって『カーツ』支持者がいてもおかしくはないのだ。
「それでもって〝魔導師〟アストル……お前さんについても調べさせてもらったぜぇ。何やらヘビと因縁があるそうじゃないか? 何をやらかしたら金貨五十枚も払わせるようなことになるんだ?」
いくつか思い当たる節はあるが……どれが金貨五十枚分にあたるかと考えたら、おそらくリカルド第二王子関連だろうな。
直接手出しができないから、『☆1狩り』で懇意にしているデックマンに始末を依頼した……というところだろう。
「……心当たりがありそうだなぁ?」
「詳しくは秘密だけどな。他には?」
「クーデターが起きるねぇ」
「は?」
ビスコンティの言葉が理解できずに、一瞬思考が吹っ飛ぶ。
「エルメリア王国でクーデターが起きるんだよ。いや、もう起きてるかもしれないねぇ」
「そんな……それは本当なのか?」
「こっちの情報はたまたまつかんだ奴だから確信が持てないねぇ……。北の大国モーディア皇国の援助を受けて、王族がクーデターを起こす……なんて、眉唾もいいところだけどねぇ」
信じたくないが、ないとは言い切れない。
モーディア皇国は『完全な国』を目指す究極の☆至上主義国家だ。
☆1は見つけ次第抹殺、☆2は拘束して奴隷階級へ、☆3は全てが労働者階級という、徹底したカテゴライズで国を運営している。
そして、彼らを招き入れそうな王族と言えば、リカルド第二王子しかいない。
俺が多少なりともカーツの勢いを削いでしまったことで求心力が衰えた第二王子が、皇国の援助で国盗りをするのは、ありえない話じゃない。
そして、邪魔になりそうな俺を始末するためにテリオンに依頼する……話が繋がりそうだ。全て推測の域を出ないのだが、そう考えれば納得もいく。
始末し損ねた☆1である俺の存在を清算したかったのかもしれない。
「良い情報をありがとう、ビスコンティ。約束通り命は取らない。なんなら金貨を払ってもいいから、代わりに俺達を追わないと約束してくれ」
「顔つきが変わったねぇ?」
「故郷の国が荒れるかもしれないと聞いて、心穏やかではいられないさ」
それに、冒険者予備学校からの友人、リックとミレニア達が心配だ。
二人が付くべき陣営を誤るとは思えないが、安全とは言えない。
……それに、この『淘汰』が迫るタイミングで『超大型ダンジョンコア』を所有する国が内乱状態にあるというのは、まったくもっていただけない。
エインズの父であるラクウェイン侯爵や、宮廷魔術師長にも手紙を送っておくべきだろう。
最悪でも時間稼ぎはしてくれるはずだ。
野営地で無事合流した俺達は、少し早いが早々に野営の準備を始める。
なんと言っても、この野営地は人が少ない。
もう少し行けばコルニアの町があるので、他の旅人はわざわざここで野営する必要などないからだ。
「何それ、ずるい!」
「また……これは珍妙な技を」
短距離の〈異空間跳躍〉をやって見せると、ミントは口を開けて固まり、レンジュウロウは額を押さえて黙った。
一方、ユユは手を叩いて喜んでいる。
「すごい、アストル! ユユにもできる、かな?」
……素直に褒めてくれるのはユユだけだな。
「短距離なら負担も少ないし、頑張ればできるかもしれない。塔に帰ったら魔法式の解析からやってみよう」
「いや、そうじゃなくて……アストル、何? 今の」
ミントが呆れた様子でユユとの会話に割り込んできた。
「〈異空間跳躍〉」
「魔法名を聞いてるんじゃなくて、見えてる範囲なら例のアクセスなんたらがなくても跳べるってこと?」
「条件さえ揃っていれば? 戦闘中に使うには練度が足りないけどな」
これを戦闘時に使えればかなり意表を衝いた戦いができると思うんだけどな。
「アストルはすごい。すごいヘンよ……」
「失礼な奴だな」
「ああ、でも……ほっとしちゃった。アストルが戻ってきたって実感するわ。ねぇ、他にはヘンな魔法はないの?」
「魔法にヘンも何もないだろうに……」
そんな会話を交わしながら、夕食の準備を整える。
幸い、薪にできそうな木片は簡単に集められたし、近くに湧き水もあった。
一通り準備を終えた俺は、散歩がてらユユと共にそばにあった見晴らしの良い小さな丘に上る。
準備前はまだずいぶん高いところにあったような気がした太陽が、紅に染まりながら地平線の向こうへ沈もうとしていた。
「こんなに綺麗なのに、ここは誰も、使わないんだね」
夕焼けに照らされて輝く草原を見ながら、ユユが呟く。
「ああ、なんだか得した気分だな。しかし、早く塔に帰ってベッドで寝たい欲求もある」
「そうだね……一緒に、ごろごろ、しようね」
俺の手をそっと握って、ユユが微笑む。
夕日に照らされたストロベリーブロンドが、きらきらと鮮やかに艶めいて揺れる。
目を奪われていると、振り返ったユユと目が合う。
「ん? どうしたの、アストル」
「ユユに見惚れてたんだよ」
「ふふ。前も、こんなこと、あったね」
ふわりとした笑顔を俺に向ける。
「レンジュウロウさんの屋敷だったよな」
「あの時は、すごくドキドキ、しちゃった……。今も、だけど」
照れるユユが可愛すぎて、こっちまでドキドキしてきた。
誘われるように、顔を近付け唇を重ねる。
「おーい! イチャイチャしてないで食事にしましょ。お腹空いちゃったわ」
ミント……本当にお前というやつは生粋のスイッチアタッカーだよ!
見えているわけではないはずなのだが、このタイミングとは。少しくらいこのロマンチックな空気を続けさせてくれてもいいだろうに。
「……続きは、帰ってから、ね?」
「ああ。……うん?」
振り向いた時には、もうユユは丘を駆け下りはじめていた。
耳が赤いのは夕日に照らされているせいだろうか。
「アストルー、早くー」
ミントの呼ぶ声に大声で返事をして、俺も丘を駆け下りていく。
野営地に戻ると、すでに食事の準備が完全に整っていた。
「ありがとう、ミント」
「ふふふ、これぞ良妻スキルよ」
「……そんなスキル、聞いたことがないぞ」
そうは言ったものの、普段のガサツな雰囲気からは想像できないくらい、ミントの料理家事能力はとても高い。
あのブ厚い大剣を置いて鎧を脱げば、ミントは凶暴で家庭的な少女へと早変わりするのだ。
「イコマから持ち帰った食材で味噌雑炊を作ってみたわ。……わりと上手くできたと、思うんだけど」
上目遣いに俺の方をちらりと見る。
そんなに心配しなくても大丈夫だ、きっと美味いに違いない。
スープ皿によそってもらって、全員揃って祈りをささげる。
二十二神の正体を知った以上、無駄なことのように思えなくはないが、習慣はそう変えられない。
「では、〝いただきます〟」
イコマの食材であるのだから、この言葉で食事を始めるとしよう。
一口掬って、口に運ぶ。
「ああ、美味い。さすがだな」
小さく刻まれた野菜と米が味噌の風味でしっかりとまとまっている。
ほっとする味だ。
「うむ。美味い……腕に磨きをかけたのう、ミント」
そのレンジュウロウの言葉に〝ミントの気持ちを汲んでやれ〟という、遠回しなお節介が多分に含まれているのだろうことは、俺にもわかる。
「食事を終えたら周囲に警戒に出ます。賞金稼ぎがいないとも限りませんので」
匙に載った雑炊を吹き冷ましながら、チヨが告げた。
野営地であるため、結界石は設置されているが、これは魔物の接近を抑制はしても人の侵入は防げない。
周囲の警戒は別に行う必要がある。
〈毛むくじゃらの使用人〉などを配置して警戒に当たらせる手もあるが……すでに手遅れのようだ。
いつの間にか、緩い殺気を纏った細身の男が、ゆらりと野営地に姿を現していた。
食事中で気を緩ませていたとはいえ、ここまで接近を許すなんて……この男はかなりの手練れに違いない。
「……美味そうだな」
出し抜けに、男がそう口にした。
「料理自慢の嫁の手料理だ。一皿食べるか?」
「ご相伴にあずかろうかねぇ」
俺の返答に、にやりと笑った男が腰を下ろす。
年の頃は二十くらい。若く見えるが……体と同じく細身の顔の双眸からは、修羅場をくぐってきた者だけが宿す狂気にも似た鋭さがあった。
腰に提げているのは細剣だろうか。
ジャケットのような体にフィットした革鎧を纏い、金属で要所が補強されたサイブーツを履いている。
「これ食わせたら、見逃してくれるか?」
俺の問いに、男は薄く嗤って答える。
「味と、交渉次第だ」
そう言うと、男は俺達から少し離れた位置に腰を下ろし、味噌雑炊を掻き込む。
しばしして、器を置いた男がふわりと立ち上がった。
実に自然で、この男がいかに優れた体幹をしているかが一目でわかる。
「美味い……が、金貨五十枚にはちと及ばんねぇ。三十枚なら見逃してるところだ」
男は小さく会釈し、口角を上げる。
「賞金稼ぎの〝刺突剣〟って言えば、多少通りがいいかねぇ? 名をビスコンティと言う。おとなしく捕らわれてくれると、お互い怪我しないで済むが、どうだ?」
「あいにくだが『人間狩り』なんて遊びに付き合ってる暇はないんだ。ちょっとばかり重要な案件を抱えているのでね」
この男は手強い。立ち振る舞いや足運びだけで十二分にそれが伝わってくる。
まず、油断しない。俺が☆1だからといって気を緩めたりはしないし、常にその目は俺の一挙手一投足を見逃すまいと光っていた。
「だろうなぁ。でもちょっとおかしんだよねぇ……」
〝刺突剣〟ビスコンティが首を捻る。
「お前さ、何をやらかしたんだ? 『人間狩り』……しかも『☆1狩り』で、金貨をこれだけ積むのは普通ない。周りに手練れの護衛がいるからと言っても、せいぜい金貨十枚も積めば、依頼主は充分楽しめるはずなんだよねぇ」
「俺は何もしちゃいないさ。たかが☆1に何ができるって言うんだ」
「謙遜するなよ、〝魔導師〟アストル。ちょっとばかり調べたら、信じられないような内容ばっかりだったが……。これで人を見る目はあるつもりなんだぜぇ?」
ビスコンティがその二つ名にもなっている細剣を抜く。
材質は……真銀だろう。
美しい装飾に目が行きがちだが、その鋭さから、あれが業物であることは一目瞭然だ。
「なのでぇ……一対一でやりあおうか?」
レンジュウロウが槍を構えて、ビスコンティを睨みつける。
「何故そうなる。ワシらはアストルの護衛じゃぞ? そのような真似はさせぬ」
「良い案だと思ったんだがねぇ。もし勝てたらオレが調べた依頼主の情報……渡そうと思うんだがねぇ?」
ミントも同様に『白雪の君』を構える。
「アンタを叩きのめしてから聞き出したって変わらないわ」
「オレ、口固いぜぇ?」
いざとなれば魔法で無理やり口を割らせることもできるが……なんというか、この男は今までの賞金稼ぎとは少し違う。
挑発しながらも、俺を――あるいは俺達を試すような視線を送ってくる。
☆1相手というだけでこちらを侮らないとは、敵ながら信用できそうなヤツだ。
「でも俺は魔法使いだし、一対一だと分が悪いじゃないか?」
「じゃあ、十数えるまで攻撃しない……これでどうだ?」
一般的な魔法使いがランクⅡ魔法を完成させるのに必要な秒数が八秒前後。ランクⅢになればその倍だ。
どうやら、魔法使いのこともよく知っているようだ。
「……乗った」
「アストル、口車に乗るでない! 叩きのめしてから記憶を引きずり出せばよかろう」
レンジュウロウの物言いを聞いたビスコンティが眉をひそめる。
「そんなことできるのか? 禁呪じゃないか」
「ウェルスの賢者の間では合法って話になってる」
嘘だけど。
「く……さすがにこの人数はなぁ」
「俺一人でやるよ。十数えるまで待ってくれるんだろ?」
「男に二言はないねぇ」
すでに錬気は始めている。
無詠唱で重ねられるだけの付与魔法も重ねてあるし、準備万端整っている。
「いつでもいいぜぇ」
数歩離れたところで、ビスコンティがぎらぎらした目つきでこちらを見て笑った。
あれは戦闘狂の目だ。
俺と命のやり取りをするのが心底楽しみだという空気が、ありありと伝わってくる。
迷惑だが光栄な話だ。
ああいった手合いは、戦うこと自体が目的であり、その対象に選ばれるのは手練れと相場が決まっている。
俺は有名な二つ名持ちの賞金稼ぎのお眼鏡にかなったというわけだ。
「アストル……無理、しないで?」
「大丈夫だ。ちょっと待っててくれ」
心配そうなユユに笑いかけ、同じく心配そうなみんなに頷いてから、向き直る。
「では、スタートで!」
そう言うなり、魔法の小剣を抜いて、ビスコンティへと駆ける。
走りながら発動待機しておいた〈魔法の矢〉を【反響魔法】も同時使用して、連射する。
当然、牽制だ。
これで仕留められるとは思っていない。
「お? おおおお!?」
驚きながらも、それらを避け切り払って凌ぐ〝刺突剣〟ビスコンティ。
その剣捌きは速く、錬気して強化した俺でも捉えるのが困難なくらいだ。
「なんだぁ……!? 手品か? スキルか?」
「技術だよッ!」
懐に飛び込んで、魔法の小剣を振るう。
魔力に反応して【小剣】スキルを付与するこの魔法の小剣によって、俺の技術は格段に上がっているはずなのだが、ことごとく避けられる。
「変わった剣筋だがぁ……そろそろ十秒だぜぇッ!」
タメなど全くなかった。
ゼロ距離から矢よりも速く細剣が突き出されて、俺の肩を掠める。
「くぅ……!」
「殺ったッ!」
ビスコンティが勝利を確信したという顔で叫んだ。
しかし、トドメのもう一突きは……来なかった。
「あがががががあがががが」
代わりに膝を震わせて、ビスコンティが細剣を取り落とす。
少し麻痺が効きすぎたか?
麻痺したビスコンティに〈拘束〉の魔法をかけて動きを拘束する。
このままじゃ、痙攣発作で心臓を止めてしまいそうだ。
「な、何を……したぁ……?」
「ちょっとばかり手品を。王手だ、ビスコンティ」
首に魔法の小剣を突きつける。
その剣先から魔力の帯が伸びているのを理解できたのは、おそらくユユだけだろう。
ヤーパンの巫術と魔法の混合は上手くいったようだ。
剣筋が妙なことをビスコンティがもっと疑っていれば、危うかったが。
「投了……する。命乞いの権利を要求していいかぁ?」
「情報と交渉次第だ」
諦めたように目を閉じるビスコンティに、俺は笑ってそう答えた。
特に抵抗する素振りを見せないので縛るのはなんとなく気が引けたが、そこまで彼を信用しているわけではない。
俺は身動きできない彼に縄をかける。
「それで? 何から聞きたい」
縛り上げられたビスコンティが、俺を見た。
「依頼主のことを」
「依頼主はテリオンの傭兵富豪デックマンだ。『人間狩り』請負の第一人者だから、そう変なことじゃないねぇ」
その名は俺でも知っている。主に悪い知名度だが。
傭兵富豪デックマンは、テリオンの領主とも深いかかわりのある傭兵団の所有者だ。
団長というわけではなく、オーナーである。彼はまるで軍隊のような組織立った傭兵団をいくつか持っており、その派遣業務で財を成した。
そして、ビスコンティが説明したように『人間狩り』の第一人者でもある。
適当な罪状をでっちあげて賞金首とする『人間狩り』だが、彼は領主との太いパイプを利用して、それを容易に企画してしまう。
領主は領主で、食い詰め傭兵のガス抜きとしてこれを簡単に承認するのだ。
「んで、ここで問題になるのが金貨五十枚ってとこだ。☆1の首にぶら下げるにはちょいとばかりかさばる金額だ」
「俺が賢人だからじゃ?」
「それにしたって多すぎるだろ? で、オレは考えたわけよ……この金額を乗せるだけの手練れなんじゃないかってぇな」
「買いかぶりすぎだな。たかが☆1だよ、俺は」
俺の言葉に、ビスコンティが噴き出す。
「ここまでオレをのしておいて、そりゃあ自己評価が低すぎるぜぇ? まぁ……話を戻すと、いくらデックマンでも、そこまで金を積む理由はなんだ? 賢人だろうとなんだろうと、☆1は所詮☆1ってのが、頭の悪い連中の思考さ。ってんで、いろいろ調べてみたんだねぇ」
「何かわかったか?」
ビスコンティがニタリと笑って頷く。
「ここからは有料だ。命と引き換えでお願いしたいねぇ」
「いいとも。情報の対価に見合った話なら、命は取らないと約束する」
俺の返事に、レンジュウロウとミントが少しむっとした顔を見せる。
ここまで、襲撃者のほとんどを葬ってきたが、彼らとビスコンティはなんだか違う気がするのだ。
ビスコンティは金とは別の目的があって俺に近づいている気がしてならない。
先ほどの戦いすらも、俺を試すためにしたような気がしている。
「交渉成立。金の出所は、エルメリア王国に拠点を置く、ある商店からだった。それも調べると……ヘビに繋がってた」
ヘビ……『カーツ』か!
『カーツ』は☆至上主義を掲げる過激思想集団で、俺達と深い因縁がある。
まさか連中が『西の国』にまで手を回しているとは。
いや、☆1排斥の支持者はどこにでもいる。
そう考ると、『西の国』にだって『カーツ』支持者がいてもおかしくはないのだ。
「それでもって〝魔導師〟アストル……お前さんについても調べさせてもらったぜぇ。何やらヘビと因縁があるそうじゃないか? 何をやらかしたら金貨五十枚も払わせるようなことになるんだ?」
いくつか思い当たる節はあるが……どれが金貨五十枚分にあたるかと考えたら、おそらくリカルド第二王子関連だろうな。
直接手出しができないから、『☆1狩り』で懇意にしているデックマンに始末を依頼した……というところだろう。
「……心当たりがありそうだなぁ?」
「詳しくは秘密だけどな。他には?」
「クーデターが起きるねぇ」
「は?」
ビスコンティの言葉が理解できずに、一瞬思考が吹っ飛ぶ。
「エルメリア王国でクーデターが起きるんだよ。いや、もう起きてるかもしれないねぇ」
「そんな……それは本当なのか?」
「こっちの情報はたまたまつかんだ奴だから確信が持てないねぇ……。北の大国モーディア皇国の援助を受けて、王族がクーデターを起こす……なんて、眉唾もいいところだけどねぇ」
信じたくないが、ないとは言い切れない。
モーディア皇国は『完全な国』を目指す究極の☆至上主義国家だ。
☆1は見つけ次第抹殺、☆2は拘束して奴隷階級へ、☆3は全てが労働者階級という、徹底したカテゴライズで国を運営している。
そして、彼らを招き入れそうな王族と言えば、リカルド第二王子しかいない。
俺が多少なりともカーツの勢いを削いでしまったことで求心力が衰えた第二王子が、皇国の援助で国盗りをするのは、ありえない話じゃない。
そして、邪魔になりそうな俺を始末するためにテリオンに依頼する……話が繋がりそうだ。全て推測の域を出ないのだが、そう考えれば納得もいく。
始末し損ねた☆1である俺の存在を清算したかったのかもしれない。
「良い情報をありがとう、ビスコンティ。約束通り命は取らない。なんなら金貨を払ってもいいから、代わりに俺達を追わないと約束してくれ」
「顔つきが変わったねぇ?」
「故郷の国が荒れるかもしれないと聞いて、心穏やかではいられないさ」
それに、冒険者予備学校からの友人、リックとミレニア達が心配だ。
二人が付くべき陣営を誤るとは思えないが、安全とは言えない。
……それに、この『淘汰』が迫るタイミングで『超大型ダンジョンコア』を所有する国が内乱状態にあるというのは、まったくもっていただけない。
エインズの父であるラクウェイン侯爵や、宮廷魔術師長にも手紙を送っておくべきだろう。
最悪でも時間稼ぎはしてくれるはずだ。
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