ザ・聖女~戦場を焼き尽くすは、神敵滅殺の聖女ビームッ!~

右薙光介

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第41話

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『──……を検知』

 何だって?

『救世システム再起動。アップデート確認。聖女リアクター稼働開始』

 何を言ってるんだ、この頭の声は。
 これが神の声だとすると、神様って言うのは狂ってるんじゃないかと思う。

「セイラ?」
「よくわかんねぇけど……アタシにはまだできることがあるみたいだ」

 そうだ、座り込んだままではいられない。
 何がどうなったかはわからないが、まだやれるってならやってやる。
 座り込んで泣いていたって、何も解決できやしないんだから。

「すまねぇ、エルムス。情けねぇとこを見せたね」
「いいえ。さぁ、いきましょうか」

 立ち上がったエルムスの剣が目に入る。
 モールデン伯爵から借りた業物の剣が見る影もない。
 あれだけ激しく戦えば、壊れもするか。
 だが、これじゃあまともに戦うのは無理だろう。

「そんなのでアタシについてくるのかい?」
「あなたの隣が僕の居場所なので」
「……だろうね」

 傷だらけのエルムスの手を握る。
 今ならわかる、アタシが聖女であるために必要なことが。
 そして、隣に立つこの男の事をなんと呼ぶのかも。

『救世システム起動。修正プラン実行。対象指定完了。聖女リアクター結合および同期を確認』

 心の奥底から、温かいものが湧き上がってくる。

 スラムにいたころに無くしてしまったと思っていたもの。
 きっと取り戻せないとずっと思っていたもの。
 弱さだと信じていたもの。

 それが、アタシを満たしている。

『──〝……〟認定プロセス開始』

 脳裏であの声が響く。
 そうだ、そうとも。
 聖女アタシの隣に立つ者であれば、そうであろうさ。

「エルムス、アタシと一緒に死んでくれる?」
「もちろん」

 エルムスの即答に、思わず胸が高鳴る。
 ならば、アタシもこいつのために死のうじゃないか。

『──承認。エルムス・アルフィンドールの救世システム同期を確認。システムアップデートおよび最適化を開始』

 握った手から光が漏れる。

 それは温かくて儚くて、でも力強いもの。
 人の営みに溢れているもの。
 常に人が胸に抱き、命の在り様とするもの。

 ──すなわち、『愛』。

 聖女のアタシが、真に力へと変えるべきものの名だ。
 それを最も強く受け止める人が、隣にで同じ方向を向いている。
 そして、そんな人間を何と呼ぶかなど……誰でも知っていることだ。

『全行程完了。当該端末を〝勇者〟に認定』

「行くよ、エルムス。決着をつけて、帰ろう」

 アタシだけの〝勇者〟が今ここに誕生した。
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