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第23話

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「何が聖女だ……ッ!」

 これじゃあ、まるで死神じゃないか!
 誰も助けられないのに、アタシだけ生き延びろって?
 アタシが聖女なわけないじゃないか!

「セイラ、無事で戻ってください」
「エルムス、あんた……?」
「僕はここに残って、追撃を防ぎます。あなたを守るのは僕の役目ですから」

 聖職者め、嘘をつく気だね?
 最後まで一緒だって言ったじゃないか!

 ダメだ。
 どうすればいい?

 神様、嗚呼……神様!!
 頼む、頼むよ……!

 まともなお祈りの方法なんて知りゃしないけど、助けておくれよ!
 あんた、妹の時だって何にもしてくれなかったじゃないか!

「姐さん!」

 『送り狼』達が馬を回してくる。

「アタシは行かないよ! ここでアタシが芋引くわけにはいかないね」
「姐さん、それこそ無駄死にッス。お頭も伯爵も、姐さんなら後任せられるって、命張るんスから」

 そんなことわかってる。
 でも、大前提が間違ってるのだ。

「人は人が救わないと……」

 老婆の言葉が、脳裏によみがえる。
 神に祈るだけじゃだめだ。
 神とかいうのは、怠惰な奴でどんなに祈ったって願いを叶えてくれやしない。

「何が神だ、クソが! 救わねぇなら、救えるようにしやがれ!」
「あ、姐さん!?」
「聖女だなんだと適当吹かしやがって! やる気がないなら偉そうにすんな! いま、ここで、救って見せろ! ……いや、救わせろ! でねぇと、死んだあとテメェが泣くまでぶん殴ってやる!」

 泣きながら天に向かって怒りを投げつける。
 自分でもひどいやつあたりだと思うが、心の底から出た悪態を止めるすべを、アタシは持たなかった。

『──認定プロセスを開始……完了』

「あ?」

 頭の中で、意味不明な言葉が聞こえた。
 声というよりも、妙に無機質で事務的な感じの……。

『当該個体を聖女に認定。対象を救世システムの端末として定義します』

「は、なんだ、これ。なんなんだよ」
「セイラ?」
「エルムス、ヘンなんだ。アタシの頭ん中で、何かが喋ってる!」

『定義完了。続いて、要請を受諾。承認プロセス開始……承認』

 体が熱くなってくる。
 まるで自分の身体じゃないみたいに、動かしにくい。

『──神罰執行器官、展開。聖女リアクター出力安定。神罰粒子加速開始』

 背中が急に熱くなって、先ほどまでの重さが嘘のように体が軽くなった。
 なんだかよくわからないけど、何かがアタシの中で大きくなっていく。
 不明な部分は多いが、いくつかの事は本能的にわかる。

 声は『神罰』といった。
 アタシが望んだものだ。

 それがアタシの中で、渦巻き、回転し、加速し……螺旋となって今にも溢れ出そうとしている。

『3……2……1……撃てます』
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