頭上輪廻戦士アーサー

川口大介

文字の大きさ
上 下
34 / 41
第六章 邪神の奇跡、二人の奇跡

しおりを挟む
 指導が終わり、帰りに冒険者ギルドに立ち寄る。
 旅費を稼ぐ必要もあったので、指導ついでに討伐依頼も一緒に熟していた。

 素材換金したお金と依頼の報酬金を、ラピスと凛で折半する。

「パーティ組んでた頃は、こんなに稼げたことありませんでした」

 分け前の金額を確認して、ラピスは喜ぶ。

「それが本当の実力だったのよ。これから、もっと稼げるようになるわよ」


 二人で話していると、すれ違ったアランが舌打ちをして通り過ぎる。

「あら、自慢になっちゃったかしら」

 ラピスの元パーティメンバーであるアラン達は、先日の件を逆恨みしているようで、ギルドなどで遭遇した時には、睨みつけて来たりしていた。

「けど、ラピスちゃん的には、見返せた感じになったかもね。ラピスちゃんもやれるってことを、もっと見せつけてやりましょ」
「が、頑張りますっ」



 ギルドを出た二人は、宿屋へと向かう。
 住居はシェルターミラー内であったが、他の子をずっと中に閉じ込めておく訳にもいかないので、取った宿を集合場所として、日中は自由行動としていた。

「……なんだけど、地域によって報酬の相場も違うから、稼ぐ場所も考えないとね」

 喋りながら路地を歩いていると、前方の物陰からアランが姿を見せる。

「随分と稼げたみたいだな。丁度いいから、この前の慰謝料を頂こうか」

 物陰から他のメンバーも現れ、二人を取り囲む。

「え、何? かつあげ?」
「大人しく出さないと、痛い目合うぞ」

 アラン達は武器に手をかけ、二人を脅す。

「アランさん、貴方、実力差が分かってないんですか?」

 ラピスが少し驚いて言う。
 僅かではあるが、実際に凛と一戦を交えたにも拘わらず、アランはその実力の差に気付いていなかった。

「あ? お前はお前で無断で抜けやがって。お前がいきなり抜けたせいで、荷物持ちが足りねーんだよ。どうしてくれるんだ」
「それは騙していた貴方達が悪いんじゃないですかっ」
「抜けた途端偉そうに。もう土下座して謝っても、許してやらねーからな」
「謝罪すべきなのは貴方です。少しは自分の行いを見つめ直してください」

 ラピスが一歩も引かずに言い返すと、アランは蟀谷に青筋を立てる。

「この、劣化魔女が。マジで痛い目に遭わせてやる」

 激高したアランは剣を引き抜いた。
 他のメンバーも武器を出し、臨戦態勢となると、凛は庇うようにラピスの前に出る。

「私がやるわ。ちょっとお仕置きしてあげる」
「女がっ。なめんじゃねー!」

 アランは剣を振り上げ、凛へと斬りかかった。
 凛は特に動きを見せずに、アランの攻撃を待ち受け、その無防備な身体に剣が振り下ろされる。
 だが、剣は凛の身体には届かず、砂の鎧に止められた。

「は? な、何だ?」

 目に見えないものに阻まれ、アランは動揺する。
 その隙を突き、凛は無防備となった腹を蹴り飛ばした。

「ぐあっ」

 鳩尾に蹴りを思いっきり受けたアランは、腹を抑えて痛みに倒れる。
 すると、すぐさま他のメンバーの一人が魔法を唱えて、凛へと火炎放射を行った。

 凛は地面から盾を生成して、その炎を防ぐ。
 火炎放射は勢いを強めて続けられるが、凛は防いでいた盾をそのまま術者へと飛ばした。

「え!?」

 突っ込んでくる盾に、術者は何もできず、直撃を受け、その場に倒れた。
 続けて凛は、地面に落ちていた小石をいくつか浮かせ、仕掛ける隙も与えず、残ったメンバーへと飛ばす。
 投石はメンバーの額へと当たり、全員が地面へと倒れた。

 あっという間に、アランのパーティは全滅した。

「うん、楽勝。全然弱いじゃないの」
「アランさん達、若手の中では実力のある方なんですけどね……」

 若手の実力者といっても、所詮は地方の一冒険者。
 神獣や闇組織の構成員相手に戦ってきた凛の敵ではなかった。

「興が削がれたから、ちょっと遊んで帰りましょうか」

 絡まれて気分を害した為、凛達は気分転換に、少し町で遊んでから帰ることにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貞操逆転世界の男教師

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が世界初の男性教師として働く話。

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

リアルフェイスマスク

廣瀬純一
ファンタジー
リアルなフェイスマスクで女性に変身する男の話

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。 幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。 そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。 故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。 自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。 だが、エアルは知らない。 ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。 遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。 これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

2回目の人生は異世界で

黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった

処理中です...