5 / 41
第二章 出陣! 二代目女神様
1
しおりを挟む村人視点
「えいっ!えいっ!」
僕の名前はポッコ。狼人族だ。僕は立派な戦士になるために、今日もこうしてトレーニングをしている
「うん。いい太刀筋だ」
そして彼女の名前はルルルゥ。族長の娘で先祖返りをした白い毛並みと強い体を持つ。僕の1歳年上のやさしい彼女は、こうして毎日のように僕に訓練をつけてくれていた
僕は密かにルルルゥに恋心をいだいており、彼女との訓練の時間をいつも楽しみにしている。いつか僕は最強の戦士になりルルルゥに告白したい。そんなことを妄想していた
「ポッコはこれから強くなれるよ」
「ありがとうございます!」
そしてこの村には一人、旅人が滞在している。彼の名前はユーリさん。彼も僕の1つ年上で、すっごく強い
村の大人たちでも手を焼いていたドギャンボアをなんと、ルルルゥとパーティーを組みたった二人で倒してしまったのだ
これには村人みんなが大歓迎だった。近頃、ドギャンボアには作物を荒らされており、みんな困っていたからだ
いつか僕もユーリさんやルルルゥみたいに強くなりたい。そしてルルルゥと結ばれるんだ。僕はそれを目標にして、今日も訓練を頑張る
……。
……。
……。
「えいっ!えいっ!」
今日も僕はこうしてトレーニングをしている。いつものように、ルルルゥも僕の訓練を見てくれていた
でもいつもと違うのは、今日のルルルゥは何だか熱っぽい感じだ。彼女は瞳を少しだけトロンとさせていて、頬も心なしか火照っている
そして、彼女の体からは発情したメスの臭いがしていた。僕は他の狼人族より鼻が強く、匂いに敏感なのだ
でも僕はそんなことを彼女に指摘しない。さすがにデリカシーがなさすぎる。でも、発情しちゃったルルルゥとエッチな関係になっちゃうってのも男の夢かもしれないな。いや。だめだ、僕!しっかりしろ!
「ルルルゥ。体調が悪そうだけど大丈夫?」
「ああ、すまない。なんだか今日は熱っぽくてな。ユーリが回復魔法を使えるらしいから、彼に頼んでみるよ」
そう言うとルルルゥはポーっとした顔のまま、村の外れにあるユーリが滞在している空き家へと向かっていく
僕は一瞬不安に襲われたが、さすがにルルルゥがほぼ見ず知らずの旅の人に肌を許すなんてあり得ない。彼女は多くの狼人族のアタックを断ってきた鉄壁の女性なのだ
そういえばもうすぐ村の祭りがある。祭りの日に結ばれた恋人は幸せになれる。そんな言い伝えが古くからあり、祭りの日には数多くのカップルが誕生していた
「今年は思い切って、ルルルゥをデートに誘ってみようかな。なんてね」
僕は淡い恋心を抱きながら、今日も訓練を続けていく
……。
……。
……。
「えいっ!えいっ!」
今日はルルルゥが訓練に来なかった。まあ彼女にも用事があるのだろう。今日の僕は一人で寂しく訓練をすることにする
「ふー。」
一通り訓練を終えて家に帰る途中、ポーっとした顔で歩くルルルゥを見かける。彼女に出会って嬉しくなった僕がルルルゥに話しかけると、今日も彼女は発情した体臭をまとわせながら、頬を赤く火照らせていた
「ルルルゥ、大丈夫?」
「あ、ああ……。昨日はユーリに回復魔法を掛けてもらったらだいぶ体調が良くなったから、今からまた彼にお願いをしに行くところなんだ」
発情期というものは獣人の女性にとっては大変なものらしい。そう聞いたことがある。僕は男だから分からないけど、そういうものなんだと自分を納得させる
「ルルルゥにはいつもお世話になってるから、何かあったらいつでも僕に頼ってよ」
「ありがとう。ポッコは頼もしいな」
ルルルゥに頼もしいとお世辞を言われた僕は舞い上がりながら家に帰る。やっぱり、今年の祭りはルルルゥをデートに誘おう。勇気を出すんだ。僕に一つ目標が出来た
「こうしちゃいられないな!トレーニングを増やそう!」
さらに強くなるために僕は走り込みをすることにする。家に帰った僕はまたすぐに部屋を飛び出すと、トレーニングを再開した
長い時間村の中の走り回りへとへとになった頃、僕は村の外れにあるユーリさんが滞在している空き家の近くへとたどり着く
「ユーリさんいるかな?」
僕は彼に挨拶をしようと家の扉をノックする。するとユーリさんが家の中から出てきた
「やあポッコ。どうしたの?」
「いや、ちょっと近くを通ったから挨拶でもと……」
「そうなんだ。ありがとう!」
ユーリさんと話をしていると、彼が滞在している家の中からルルルゥの強い体臭が風にのって流れてくる。先程までルルルゥがこの家に滞在をしていた証だ
僕の部屋にも、いつかルルルゥの臭いが染み付く関係になれればいいなぁ。そんなことを考えながら、僕はユーリさんとの会話を終え、家路についた
……。
……。
……。
もう三日も連続でルルルゥが訓練に来ていない。彼女の体調は思わしくないようだ。心配になった僕はルルルゥの家にお見舞いに行くことにする
訓練を終えた僕がルルルゥの家を尋ねると、彼女は出かけた後のようだった。体調が悪いわけではないらしい
三日後には村の祭りが控えているから、ルルルゥは色々と準備で忙しいのかもしれない。そういえば、僕も親に今日は早く帰ってこいと言われてたっけ
急いで家に帰る途中、ルルルゥとすれ違う。今日も彼女は頬を火照らせていた。最近の彼女はいつもボッーっとしている。ルルルゥに話を聞くと、やはり彼女は祭りの準備で忙しいらしい
最近ルルルゥとはすれ違いが増えていることを寂しく思いながらも、僕も祭りの準備を手伝うために家に帰る。早く祭りの日が来ないかな。そしてルルルゥをデートに誘うんだ。僕は決意を新たにした
……。
……。
……。
「えいっ!えいっ!」
村の祭りを翌日に控えた日に、今日も僕は剣のトレーニングをしていた。今日もルルルゥは訓練に来ていない。でもいいんだ。明日僕はルルルゥをデートに誘う。彼女に会えない日々が、僕に勇気を出させてくれた
「明日、絶対にルルルゥをデートに誘うぞ!」
僕の剣を握る力が強くなる。僕は彼女に似合う男になるために、今日も剣を振るった
……。
……。
……。
そして祭りの日が来た。僕は浮足立つ村の中でキョロキョロとしながらルルルゥを探した。祭りの日に乗じて彼女をデートに誘おうとしている何人もの村の男達が、ルルルゥを探しているのが分かる
しかし僕がどれだけ村の中を探しても、ルルルゥは見つからなかった。彼女を探しているうちに日が暮れて、ついには夜になる。それでもルルルゥは見つからない
もしかしてルルルゥは他の男と……。そんな不安に押しつぶされながらも、彼女を探すことを諦めた僕はトボトボと家に帰ることにした。もうすぐ深夜になってしまう。流石にタイムリミットだ
明日になったらまた、いつものように彼女は僕の訓練を見に来てくれる。そうしたらまた元通りの関係だ。そう信じて
……。
……。
……。
「さようなら。ポッコ」
翌日、ルルルゥはユーリとともに村から旅立っていった。昨夜、彼女に何があったのか。僕には分からない
いつものように訓練をしている僕に旅立ちの挨拶をしにきてくれたルルルゥの股間からは、ユーリさんの体臭が漂っていた
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?
悠
ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。
それは——男子は女子より立場が弱い
学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。
拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。
「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」
協力者の鹿波だけは知っている。
大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。
勝利200%ラブコメ!?
既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる