ヴァンパイア様は溺愛すぎる

自分

颯汰さんたちがパーティーに出掛けていったあと、私は暇すぎて本を熟読していた。
ファンタジー系、恋愛系、ミステリー系････。
たくさんの物語りが頭を駆け巡る。
はぁー。
勇者みたいになれない、私。
ヒロインみたいになれない、私。
探偵みたいになれない、私。
私は何にもなれない。
私は私以上にも以下にもなることができない。
空っぽの私･････昔のことを思い出せれば、少しは私に何か埋まるかな？
ある本を手に取り、パラパラとページをめくっていると、ハラリと何かが落ちた。
ん？なんか、落ちた？
床に落ちたものは････紙？
拾って見てみると、そこには古い字で何かが書いてあった。
なん、だろ？
「真優華っ！！」
へっ？
バッと後ろを振り返ると、颯汰さんが････。
反射的にその紙を隠した。
「え？颯汰さん？」
「ただいま、真優華」
フワリと優しい笑みを浮かべる、颯汰さんにドキッと心臓が高鳴る。
「お、おかえりなさい、颯汰さん」
颯汰さんがこちらにゆっくりと近づいてくるので、サッとポケットに紙を忍ばせた。
ギュッと颯汰さんに正面から、抱き締められ、火照る体。
「何をやっていたんだ？」
耳元で囁かれる、低音の甘いボイスに体温がまた上がる。
「ほ、本を読んでました････」
「面白かったか？」
いや、全然面白くない。
むしろ、虚しくなってくる。
でも、きちんと隠さなきゃ。
「はい。とても」

私は自分を殺して、生きる。