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第三章 新生活始めました
隼人のお店
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隼人との再会から暫くして、俺たちはバタバタと出店準備に取り掛った。
お店と言っても店舗を借りたりはしなくて、いわゆるキッチンカーを使った移動販売のお店。
メニューは二人であじゃないこうじゃないと言い合いながら、試行錯誤してやっと形になって、最後に俺らの店となるキッチンカーが納車されると、何となく形になってきてやっと俺らの新しい仕事が始まった。
最初は思うように事が進まず悩んだりしたけれど、りつと一緒に仕事が出来る、ずっと一緒に居られるってだけで頑張れた。
それから数ヶ月が経ち仕事もなかなか軌道に乗ってきた頃、世の中はバレンタインからホワイトデーへと変わり始めていた。
りつから、今年は俺からあげたいからホワイトデーにお返しちょうだい!なんて言われてどうしようか頭を悩ませていると、久々に隼人から連絡が来た。
(よぉ、あれからどう?仕事の方は順調?)
「おぅ、なんとかね!今のところギリギリだけど」
(最初はしょうがないよ)
「だよな…」
久しぶりの隼人の声になんだかちょっとドキドキする…なんて、こんな事りつに知れたら殺されそうだけど。
(ところでさ、今度の土曜日なんだけど空いてる?)
「あー、うん。土曜は空いてる。なに?」
(新作が出来たからさ、食べて欲しくて)
「俺でいいの?」
(将吾に食べて欲しいの)
「なんだよ…それ///」
(まぁとにかく来てよ)
「うん、わかった」
・・・・・
そして土曜日、りつには何で将吾が行かなきゃいけないの?とか俺は行っちゃダメなの?とか色々と文句を言われたけれど、俺にもちょっとりつには内緒にしておきたい事があって、何とか納得させて家を出てきた。
「ごっめん…っ、ちょっと遅れた…!?」
「ふふっ、全然間に合ってるよ」
「はぁ…っ、よかった…」
「大丈夫だった?先生…連れてきても良かったのに」
「いや、俺が嫌だったんだよ…」
「将吾にそんな事言われたらあの人死んじゃうんじゃない?」
「うん、かもしんない」
「ははっ、それはそれはご馳走様」
そしてお店の中にあるテーブル席に通され待っていると、出来たてのシュークリームが俺の目の前に置かれた。
「はい、早速これなんだけど…」
「シュークリーム…?」
「うん、正直に言ってね」
「おう…っ、わかった」
元々お世辞を言うのは得意ではないけど、正直にと言われるとどう表現していいやら悩ましくて、少し緊張しながら大きくお口を開けてパクリと一口かぶりついた。
「うんまっ!」
「やっぱりそう来たか」
中は固めのホイップとチョコホイップの二層になっていて、取り立てて何か言うこともなく普通に美味しいシュークリーム。
評論家みたいなことは何も言えなかったけど、ただただ本当に美味しい。
「甘さとかどうかな?」
「ん?ちょうどいいよ!」
「あと他になんかない?」
「うーん、強いて言うなら…もっとホイップ多めで♡」
「なるほど」
「なぁ…シュークリームって俺でも作れる?」
「ん?あぁ、まぁ作れないことはないと思うけど…簡単ではないかもよ?」
まぁそりゃそうだよな…
隼人だって苦労してやっとここまでたどり着いてるのに、俺なんかがちゃんと作れるわけないか。
「誰でも簡単に作れるお菓子とか何かない?」
「そーだな…ん?さてはホワイトデーか?」
「…っ、ちげぇーよっ////」
「いちいち照れんなって。そしたらクッキーとかどう?焼くのにオーブンとかいるけど…」
「今ここでできる?」
「いいよ、やってみる?」
「うんっ」
そして隼人と二人、粉まみれになりながら生地を練って冷やしてる間に俺たちの新しい仕事の話をした。
お店と言っても店舗を借りたりはしなくて、いわゆるキッチンカーを使った移動販売のお店。
メニューは二人であじゃないこうじゃないと言い合いながら、試行錯誤してやっと形になって、最後に俺らの店となるキッチンカーが納車されると、何となく形になってきてやっと俺らの新しい仕事が始まった。
最初は思うように事が進まず悩んだりしたけれど、りつと一緒に仕事が出来る、ずっと一緒に居られるってだけで頑張れた。
それから数ヶ月が経ち仕事もなかなか軌道に乗ってきた頃、世の中はバレンタインからホワイトデーへと変わり始めていた。
りつから、今年は俺からあげたいからホワイトデーにお返しちょうだい!なんて言われてどうしようか頭を悩ませていると、久々に隼人から連絡が来た。
(よぉ、あれからどう?仕事の方は順調?)
「おぅ、なんとかね!今のところギリギリだけど」
(最初はしょうがないよ)
「だよな…」
久しぶりの隼人の声になんだかちょっとドキドキする…なんて、こんな事りつに知れたら殺されそうだけど。
(ところでさ、今度の土曜日なんだけど空いてる?)
「あー、うん。土曜は空いてる。なに?」
(新作が出来たからさ、食べて欲しくて)
「俺でいいの?」
(将吾に食べて欲しいの)
「なんだよ…それ///」
(まぁとにかく来てよ)
「うん、わかった」
・・・・・
そして土曜日、りつには何で将吾が行かなきゃいけないの?とか俺は行っちゃダメなの?とか色々と文句を言われたけれど、俺にもちょっとりつには内緒にしておきたい事があって、何とか納得させて家を出てきた。
「ごっめん…っ、ちょっと遅れた…!?」
「ふふっ、全然間に合ってるよ」
「はぁ…っ、よかった…」
「大丈夫だった?先生…連れてきても良かったのに」
「いや、俺が嫌だったんだよ…」
「将吾にそんな事言われたらあの人死んじゃうんじゃない?」
「うん、かもしんない」
「ははっ、それはそれはご馳走様」
そしてお店の中にあるテーブル席に通され待っていると、出来たてのシュークリームが俺の目の前に置かれた。
「はい、早速これなんだけど…」
「シュークリーム…?」
「うん、正直に言ってね」
「おう…っ、わかった」
元々お世辞を言うのは得意ではないけど、正直にと言われるとどう表現していいやら悩ましくて、少し緊張しながら大きくお口を開けてパクリと一口かぶりついた。
「うんまっ!」
「やっぱりそう来たか」
中は固めのホイップとチョコホイップの二層になっていて、取り立てて何か言うこともなく普通に美味しいシュークリーム。
評論家みたいなことは何も言えなかったけど、ただただ本当に美味しい。
「甘さとかどうかな?」
「ん?ちょうどいいよ!」
「あと他になんかない?」
「うーん、強いて言うなら…もっとホイップ多めで♡」
「なるほど」
「なぁ…シュークリームって俺でも作れる?」
「ん?あぁ、まぁ作れないことはないと思うけど…簡単ではないかもよ?」
まぁそりゃそうだよな…
隼人だって苦労してやっとここまでたどり着いてるのに、俺なんかがちゃんと作れるわけないか。
「誰でも簡単に作れるお菓子とか何かない?」
「そーだな…ん?さてはホワイトデーか?」
「…っ、ちげぇーよっ////」
「いちいち照れんなって。そしたらクッキーとかどう?焼くのにオーブンとかいるけど…」
「今ここでできる?」
「いいよ、やってみる?」
「うんっ」
そして隼人と二人、粉まみれになりながら生地を練って冷やしてる間に俺たちの新しい仕事の話をした。
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