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第三章 新生活始めました
想い出がいっぱい
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りつがのそっと起き上がり伸びをしながらリビングを出ていき、俺も窮屈なスーツを部屋着に着替えるべく脱衣所に行き戻ってくると、飾り棚の配置が変わってる事にふっと気がついた。
「あれ、これ…」
「おっ、もう気付いたの?」
戻ってきたりつに声をかけられ、俺はある事を思い出してそれを持ち上げて裏を覗くと、やっぱりあった…
俺が書いたイタズラ書き…
「これ…お前が持ってたんだ…」
「おぅ、そうみたい」
「あの夏祭りの時の…だよな?」
「ん?…あぁ、そうそう!あん時、俺が取ったんだわ」
「裏…見た?」
「あ、うん…」
なんかちょっと照れくさくなって、二つくっついたキャラクターをすぐ様棚の上に戻した。
「可愛いことすんじゃん♡」
「うるせぇ///」
「なぁ…俺もうちょっと寝たいんだけどぉ」
そう言って後ろから抱きしめられると、いつもと同じりつの香りが鼻を掠めて心が落ち着く…
されるがまま手を引かれ寝室に連れ込まれると、クローゼットは開けっ放しダンボールの中身は飛び出てるしで、あまりのだらしなさに睨みをきかせれば、ペロッと舌を出しておどけて見せるりつ。
「いや、なんかさ?一人でいたら寂しくて…色々思い出しちゃってさ?」
「…てか、なんでお前が卒アル持ってんだよ」
「あ…うん、校長に頼み込んで記念に…?」
「ふぅーん、記念にね」
「後でちゃんと片付けるからさ…」
「ん…まぁいいけど…てか、物持ちいいな…俺、どこやったっけな…」
そんなことをぼぉっと考えてると、俺はあることを思い出した。
「あ…プリクラ」
「プリクラ?」
「うん、撮ったじゃん…祭りの時」
「…あぁ、あれな!どっかにあったと思うんだけど…」
ダンボールの中を漁り始めたりつを眺めながら、一足先にベットに横になる。
俺どこやったかなぁ…
りつとの思い出はほとんどあの家に置きっぱなしか、もしくは忘れたくて処分したか…そんな感じだったと思う。
りつの事を待ってる内に、慣れた家のベットの上が心地よくて段々瞼が閉じてくる…
「…将吾?」
「んぅ…あ、あった?」
「あった♡」
「すご、なんで持ってんの?」
俺の横に寝っ転がって、頭をポンポンと撫でてくるりつの表情がなんだかちょっと寂しそうに見えて、急に心配になってぎゅっとりつの服を掴んだ。
「りつ…」
「忘れらんなかったから」
心臓がギューって苦しくなった…
嬉しくて恥ずかしくて、でも…苦しくて…
だって、俺はお前の事忘れたくて何もかも過去に置いてきたのに、お前はずっと…
「ありがと…」
「なんだよ…急に」
「大事に…してくれて」
「…っ、お、おぅ…////」
「見せて…?」
ちょっと古くなってたけどそこにはちゃんと、あの頃の俺とりつが写っていた。
変顔したり爆笑したり、一枚一枚見る度にあの頃の思い出が甦ってくる…
「あ…」
「ん?」
「何でもないっ…///」
変顔に交じって最後にでてきたプリクラはめっちゃ恥ずいやつで、なになに?って言いながら覗き込んでくるりつを阻止して
プリクラを隠そうとしたが、りつのしつこさに負けて取り返されてしまった。
「んふっ…あん時めっちゃ照れてたよな」
「うっさい…っ」
「よく撮れてるじゃん」
「…っ、恥ずい////」
「なんでだよ、いつもと一緒だろ?」
確かにそう言われればそうなんだけど…
隠れてるとは言え外だし、いつなんどき誰に見られるかも分からないハラハラ感があったんだよ…
「それとこれとは何か…」
「違う…?」
「うん…」
「試してみる?」
「え…?あっ、んぅ…」
視界がりつでいっぱいになって唇が重なる…
一人暮らしを始めた頃、思い出は全部実家に置いてきて隼人も誰もいない所で、他人に身を委ねながら大事な思い出を塗り重ねてきた。
完全に忘れたわけじゃなかったけど、まだまだ子供だった俺にとって再会までの約二年は忘れるには十分すぎた。
りつはその間、ずっと忘れないでいてくれたんだろうか…
唇の感触を確かめるように優しく何度も何度も唇を重ねながら、そんなりつの想いが嬉しくて暖かくて、込み上げてくるものが抑えられなくてりつの胸を叩いた。
「ん…っ、はぁ…」
「どうし…えっ、なんで泣いてんの!?」
「く、苦しかっただけだよっ…」
「もしかして…隼人と…なんかあった…?」
「え?」
「何もされてないよな?」
「…っ、されてないからっ」
「ふーん、じゃあ…なんで?」
「何がだよ…」
「なんか隠してんだろ」
隼人のことはともかく、りつの事忘れようと思って体売ったりしてた時の事とか思い出したら、りつの想いとは全く逆だった自分にちょっと後ろめたくなっただけだよ…
なんて事は言えないから黙ってるけど、本当に俺の変化に敏感だな。
「隠してない…ただ…」
「ただ?」
「俺が手放したもの全部持っててくれて…嬉しかったから」
「泣くほど嬉しかったの?」
「うん、嬉しかった…幸せだよ…今、俺」
「あれ、これ…」
「おっ、もう気付いたの?」
戻ってきたりつに声をかけられ、俺はある事を思い出してそれを持ち上げて裏を覗くと、やっぱりあった…
俺が書いたイタズラ書き…
「これ…お前が持ってたんだ…」
「おぅ、そうみたい」
「あの夏祭りの時の…だよな?」
「ん?…あぁ、そうそう!あん時、俺が取ったんだわ」
「裏…見た?」
「あ、うん…」
なんかちょっと照れくさくなって、二つくっついたキャラクターをすぐ様棚の上に戻した。
「可愛いことすんじゃん♡」
「うるせぇ///」
「なぁ…俺もうちょっと寝たいんだけどぉ」
そう言って後ろから抱きしめられると、いつもと同じりつの香りが鼻を掠めて心が落ち着く…
されるがまま手を引かれ寝室に連れ込まれると、クローゼットは開けっ放しダンボールの中身は飛び出てるしで、あまりのだらしなさに睨みをきかせれば、ペロッと舌を出しておどけて見せるりつ。
「いや、なんかさ?一人でいたら寂しくて…色々思い出しちゃってさ?」
「…てか、なんでお前が卒アル持ってんだよ」
「あ…うん、校長に頼み込んで記念に…?」
「ふぅーん、記念にね」
「後でちゃんと片付けるからさ…」
「ん…まぁいいけど…てか、物持ちいいな…俺、どこやったっけな…」
そんなことをぼぉっと考えてると、俺はあることを思い出した。
「あ…プリクラ」
「プリクラ?」
「うん、撮ったじゃん…祭りの時」
「…あぁ、あれな!どっかにあったと思うんだけど…」
ダンボールの中を漁り始めたりつを眺めながら、一足先にベットに横になる。
俺どこやったかなぁ…
りつとの思い出はほとんどあの家に置きっぱなしか、もしくは忘れたくて処分したか…そんな感じだったと思う。
りつの事を待ってる内に、慣れた家のベットの上が心地よくて段々瞼が閉じてくる…
「…将吾?」
「んぅ…あ、あった?」
「あった♡」
「すご、なんで持ってんの?」
俺の横に寝っ転がって、頭をポンポンと撫でてくるりつの表情がなんだかちょっと寂しそうに見えて、急に心配になってぎゅっとりつの服を掴んだ。
「りつ…」
「忘れらんなかったから」
心臓がギューって苦しくなった…
嬉しくて恥ずかしくて、でも…苦しくて…
だって、俺はお前の事忘れたくて何もかも過去に置いてきたのに、お前はずっと…
「ありがと…」
「なんだよ…急に」
「大事に…してくれて」
「…っ、お、おぅ…////」
「見せて…?」
ちょっと古くなってたけどそこにはちゃんと、あの頃の俺とりつが写っていた。
変顔したり爆笑したり、一枚一枚見る度にあの頃の思い出が甦ってくる…
「あ…」
「ん?」
「何でもないっ…///」
変顔に交じって最後にでてきたプリクラはめっちゃ恥ずいやつで、なになに?って言いながら覗き込んでくるりつを阻止して
プリクラを隠そうとしたが、りつのしつこさに負けて取り返されてしまった。
「んふっ…あん時めっちゃ照れてたよな」
「うっさい…っ」
「よく撮れてるじゃん」
「…っ、恥ずい////」
「なんでだよ、いつもと一緒だろ?」
確かにそう言われればそうなんだけど…
隠れてるとは言え外だし、いつなんどき誰に見られるかも分からないハラハラ感があったんだよ…
「それとこれとは何か…」
「違う…?」
「うん…」
「試してみる?」
「え…?あっ、んぅ…」
視界がりつでいっぱいになって唇が重なる…
一人暮らしを始めた頃、思い出は全部実家に置いてきて隼人も誰もいない所で、他人に身を委ねながら大事な思い出を塗り重ねてきた。
完全に忘れたわけじゃなかったけど、まだまだ子供だった俺にとって再会までの約二年は忘れるには十分すぎた。
りつはその間、ずっと忘れないでいてくれたんだろうか…
唇の感触を確かめるように優しく何度も何度も唇を重ねながら、そんなりつの想いが嬉しくて暖かくて、込み上げてくるものが抑えられなくてりつの胸を叩いた。
「ん…っ、はぁ…」
「どうし…えっ、なんで泣いてんの!?」
「く、苦しかっただけだよっ…」
「もしかして…隼人と…なんかあった…?」
「え?」
「何もされてないよな?」
「…っ、されてないからっ」
「ふーん、じゃあ…なんで?」
「何がだよ…」
「なんか隠してんだろ」
隼人のことはともかく、りつの事忘れようと思って体売ったりしてた時の事とか思い出したら、りつの想いとは全く逆だった自分にちょっと後ろめたくなっただけだよ…
なんて事は言えないから黙ってるけど、本当に俺の変化に敏感だな。
「隠してない…ただ…」
「ただ?」
「俺が手放したもの全部持っててくれて…嬉しかったから」
「泣くほど嬉しかったの?」
「うん、嬉しかった…幸せだよ…今、俺」
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