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第三章 新生活始めました
結婚式からの二次会
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正直、同級生の結婚式なんて興味はない…
結婚なんて俺には一生縁のないものだし、人の幸せ祝って何が楽しいんだろうなんて思ってたけど、唯一高校の頃からちょこちょこ連絡をくれるヤツなだけに、無下に断る事も出来ずとりあえず参加してみる事にした。
式場は思いの外広くて結構派手だし、一緒の席に座る同級生達もそれなりに大人になっていて、特定の友達以外関わりの少なかった俺にはもはや誰が誰だかわからない。
そしていつまで経っても俺の隣の席だけぽっかり空いて、もう式も終盤だと言うのに誰も来る気配がなく、食事もとうとう最後のデザートが運び込まれた頃、後ろから聞き覚えのある声で名前を呼ばれた。
「将吾」
「…っ、隼人!?」
「久しぶりだな」
「お、おぅ…」
そこにはビシッとカッコよくスーツを着こなした隼人が立っていて、俺の目の前に宝石みたいに綺麗なスイーツを差し出してきた。
「はい、これ。俺が作ったの」
「えっ?」
「あいつに頼まれてさ」
隼人の視線の先には俺らの悪友の新郎がいて、ここもまだ関わりがあったんだなぁとしみじみ感じていると、仕事を終えた隼人が空いていた俺の隣の席に座り、大学を出てからの話をし始めた。
最近スイーツ専門のお店でパティシエとして働くようになり、こっちに戻ってきたらしい。
高校卒業した後はちょこちょこ連絡とってたものの、俺のバイトが忙しくなり始めてからは返事も返さなくなったもんだから、そこから後の事は殆ど何も知らなかった。
「うまっ!」
「ふふっ…だろ?」
「これ、ほんとに隼人が作ったの?」
「うん、お店にも俺の作ったのが並んでるよ?今度来いよ!」
「うんっ、行くっ!」
そして式も無事に終わり二次会に移動して、新郎も混じえて昔話なんかを始めると、誰かが突然保健室の話をし始めた。
あいつ結構ヤバかったんだろ?とか他校の女子生徒とヤリまくってたらしいとか、どっからそんな話聞いたんだよって言うような噂話が沢山飛び交ったが、俺は話を聞きながらもずっと知らんぷりしていた。
けど、俺とあいつが仲良かった事は多分誰もが知っていて、その話になった途端みんなの視線が俺に向いてるような気がして、何か聞かれたらどうしようとだんだん緊張し始めて、目の前あったビールを勢いで一気に飲み干した。
案の定質問攻めに合い、本当にヤってたのか?とか、あいつあの後どうしたんだろうな?とか聞いてくるから、俺は全部知らねぇ分かんねぇで話を流した。
だけど内容が内容なだけに、恥ずかしくてシラフでなんかいられなくて、弱いくせにお酒を水分補給の如く流し込んだせいでもうベロベロ…
そのうちに誰かが違う話を初めてくれて、やっと解放されほっと一息着くと、隼人が俺の手からグラスを取り上げた。
「将吾、そろそろやめとけ」
「んぅ…わかってるよぉ…」
「大丈夫か?」
「ん…トイレ…」
「ダメか…」
うん、もうだめだ…
隼人に抱えられ個室に入り背中を擦ってもらい、いくらか楽になった頃、ずっと黙ってた隼人が口を開いた。
「結局…あいつとは会えないままか?」
「…何年経ってると思ってんだよ」
「そう、だよな…」
「未だに俺が想ってるとでも…?」
「いや、さすがにそれはないか…」
「ふふっ…」
そりゃそうだよな、誰が今一緒に住んでるなんて想像出来る?
そんなこと言ったらいくら冷静な隼人でも、ビックリして目ん玉飛び出ちゃうかもな。
「なぁ、もし今でも好きって言ったら…?」
「えっ、あぁ…一途すぎるだろ、さすがに」
吐き気もすこし治まってきて、ゆっくり立ち上がり個室を出ると、鏡に映るなんとも言えない表情の隼人と目が合い、俺はクスッと笑った。
「…っ、なんだよっ」
「好きだよ」
「え?」
「だから、今でも好きだよ…」
「将吾…」
悲しそうな顔で俺を憐れむ隼人に、少し申し訳ない気持ちになりながら俺は話を続けた。
「運命ってあるんだよ…」
「運命?」
「うん…俺、またあいつに助けられたんだ」
「えっ」
目ん玉飛び出るまではいかなかったけど、思った通りのリアクションに俺はなんだか嬉しくなって、俺の今の気持ちを伝えたくて、隼人にも喜んで欲しくて呂律が上手く回らないながらも話を続けた。
「卒業して2年…?経ったくらいだったかな…」
「マジ…?」
「ふふっ、俺もびっくりした」
「それで!?それでどうしたの?」
「色々あったけどさ…それでもずっと側にいてくれる」
「…そっか、一緒にいるんだ…」
「うん」
「良かったな…っ」
「うん…っ」
酒で酔ってせいなのか、後ろから隼人にギュッと抱きしめられると涙が出てきた。
色々あったけど…今は俺の隣にはいつもりつがいてくれて、その事を喜んでくれる親友がいて、多分…こいういのを幸せって言うのかもしれないな、なんてトイレの片隅でしみじみ感じた。
そして席に戻ると、俺らが帰ってきたことにも気が付かないくらいみんなはみんなで盛り上がっていて、騒がしいのもそろそろ疲れた俺と隼人は、二人きりで離れてた間の話なんかを沢山した。
その内に新郎が割り込んで来て話の内容を聞かれそうになり、慌てて隼人に口止めすると、余計に周りに煽られまた酒を飲む羽目になり、せっかくスッキリした胃にまたもアルコールが大量に注がれて、俺は気がついたらタクシーに乗せられていた。
結婚なんて俺には一生縁のないものだし、人の幸せ祝って何が楽しいんだろうなんて思ってたけど、唯一高校の頃からちょこちょこ連絡をくれるヤツなだけに、無下に断る事も出来ずとりあえず参加してみる事にした。
式場は思いの外広くて結構派手だし、一緒の席に座る同級生達もそれなりに大人になっていて、特定の友達以外関わりの少なかった俺にはもはや誰が誰だかわからない。
そしていつまで経っても俺の隣の席だけぽっかり空いて、もう式も終盤だと言うのに誰も来る気配がなく、食事もとうとう最後のデザートが運び込まれた頃、後ろから聞き覚えのある声で名前を呼ばれた。
「将吾」
「…っ、隼人!?」
「久しぶりだな」
「お、おぅ…」
そこにはビシッとカッコよくスーツを着こなした隼人が立っていて、俺の目の前に宝石みたいに綺麗なスイーツを差し出してきた。
「はい、これ。俺が作ったの」
「えっ?」
「あいつに頼まれてさ」
隼人の視線の先には俺らの悪友の新郎がいて、ここもまだ関わりがあったんだなぁとしみじみ感じていると、仕事を終えた隼人が空いていた俺の隣の席に座り、大学を出てからの話をし始めた。
最近スイーツ専門のお店でパティシエとして働くようになり、こっちに戻ってきたらしい。
高校卒業した後はちょこちょこ連絡とってたものの、俺のバイトが忙しくなり始めてからは返事も返さなくなったもんだから、そこから後の事は殆ど何も知らなかった。
「うまっ!」
「ふふっ…だろ?」
「これ、ほんとに隼人が作ったの?」
「うん、お店にも俺の作ったのが並んでるよ?今度来いよ!」
「うんっ、行くっ!」
そして式も無事に終わり二次会に移動して、新郎も混じえて昔話なんかを始めると、誰かが突然保健室の話をし始めた。
あいつ結構ヤバかったんだろ?とか他校の女子生徒とヤリまくってたらしいとか、どっからそんな話聞いたんだよって言うような噂話が沢山飛び交ったが、俺は話を聞きながらもずっと知らんぷりしていた。
けど、俺とあいつが仲良かった事は多分誰もが知っていて、その話になった途端みんなの視線が俺に向いてるような気がして、何か聞かれたらどうしようとだんだん緊張し始めて、目の前あったビールを勢いで一気に飲み干した。
案の定質問攻めに合い、本当にヤってたのか?とか、あいつあの後どうしたんだろうな?とか聞いてくるから、俺は全部知らねぇ分かんねぇで話を流した。
だけど内容が内容なだけに、恥ずかしくてシラフでなんかいられなくて、弱いくせにお酒を水分補給の如く流し込んだせいでもうベロベロ…
そのうちに誰かが違う話を初めてくれて、やっと解放されほっと一息着くと、隼人が俺の手からグラスを取り上げた。
「将吾、そろそろやめとけ」
「んぅ…わかってるよぉ…」
「大丈夫か?」
「ん…トイレ…」
「ダメか…」
うん、もうだめだ…
隼人に抱えられ個室に入り背中を擦ってもらい、いくらか楽になった頃、ずっと黙ってた隼人が口を開いた。
「結局…あいつとは会えないままか?」
「…何年経ってると思ってんだよ」
「そう、だよな…」
「未だに俺が想ってるとでも…?」
「いや、さすがにそれはないか…」
「ふふっ…」
そりゃそうだよな、誰が今一緒に住んでるなんて想像出来る?
そんなこと言ったらいくら冷静な隼人でも、ビックリして目ん玉飛び出ちゃうかもな。
「なぁ、もし今でも好きって言ったら…?」
「えっ、あぁ…一途すぎるだろ、さすがに」
吐き気もすこし治まってきて、ゆっくり立ち上がり個室を出ると、鏡に映るなんとも言えない表情の隼人と目が合い、俺はクスッと笑った。
「…っ、なんだよっ」
「好きだよ」
「え?」
「だから、今でも好きだよ…」
「将吾…」
悲しそうな顔で俺を憐れむ隼人に、少し申し訳ない気持ちになりながら俺は話を続けた。
「運命ってあるんだよ…」
「運命?」
「うん…俺、またあいつに助けられたんだ」
「えっ」
目ん玉飛び出るまではいかなかったけど、思った通りのリアクションに俺はなんだか嬉しくなって、俺の今の気持ちを伝えたくて、隼人にも喜んで欲しくて呂律が上手く回らないながらも話を続けた。
「卒業して2年…?経ったくらいだったかな…」
「マジ…?」
「ふふっ、俺もびっくりした」
「それで!?それでどうしたの?」
「色々あったけどさ…それでもずっと側にいてくれる」
「…そっか、一緒にいるんだ…」
「うん」
「良かったな…っ」
「うん…っ」
酒で酔ってせいなのか、後ろから隼人にギュッと抱きしめられると涙が出てきた。
色々あったけど…今は俺の隣にはいつもりつがいてくれて、その事を喜んでくれる親友がいて、多分…こいういのを幸せって言うのかもしれないな、なんてトイレの片隅でしみじみ感じた。
そして席に戻ると、俺らが帰ってきたことにも気が付かないくらいみんなはみんなで盛り上がっていて、騒がしいのもそろそろ疲れた俺と隼人は、二人きりで離れてた間の話なんかを沢山した。
その内に新郎が割り込んで来て話の内容を聞かれそうになり、慌てて隼人に口止めすると、余計に周りに煽られまた酒を飲む羽目になり、せっかくスッキリした胃にまたもアルコールが大量に注がれて、俺は気がついたらタクシーに乗せられていた。
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