こじらせ男子は一生恋煩い

むらさきおいも

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第三章 新生活始めました

友達の結婚式

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年が明け、本格的に新しい仕事も動き出そうとし始めた頃、将吾が高校時代の同級生の結婚式に呼ばれたから行ってもいいか?と俺に聞いてきた。

駄目なんて事はないが、そもそもあいつにそんな友達が未だにいたこともビックリだし、呼ばれたから行くって言う事にも少々驚いている。

他人の結婚式なんて興味無さそうな将吾だが、人並みにちゃんとお祝いしたいって気持ちがある事に安心した。

結婚式場はさほど遠くなかったものの、飲んでくるだろうから遅くなると言われ、心配で俺もついて行くと冗談交じりに言ったら、絶対ダメっ!と怒られてしまった。

そもそも面識ないだろ?って言われて、名前を聞けば俺も思い出せるかな?と思ったけど、流石に保健室に縁のなかった子の事までは覚えちゃいなかった。


・・・・・


そして、結婚式当日。
一緒に暮らし始めて色々と落ち着いてからは、将吾が一日中家に居ないなんて事はなかったから、1人っきりの部屋に物凄く寂しさを感じる。 

ビールを飲みながらぼぉっとテレビを見ていると、いつの間にかソファーで寝てしまって、目が覚めた頃にはもう日付をまたいでいて、連絡一つよこさない将吾がだんだん心配になってきた。

いくら近いとはいえ、そろそろ終電じゃないのか?
そう思ってメッセージを送ってみるも、いつまで経っても全然既読にならないから、いよいよ心配が過ぎて電話をかけてみた。


(…はい)

「…?しょ…ご?」

(あ、いや…将吾寝ちゃって…先生…?だよね?)

「えっ…」


この声…絶対聞いたことある。
同級生なら俺の事知ってるやつだっているかもしんないけど、名前が通知に出たとしたって、先生かどうかなんてわかんねぇよな。
それに勝手に電話出るとかさすがに…

あっ、まさか!?


「お前、隼人か!?」

(正解!)

「おぉっ、お前も一緒だったのか!元気だったか?」

(まぁ、それなりに…?)

「そっかぁ!懐かしいなぁ…にしてもよく俺ってわかったな?」

(あぁ、話聞いてたから…心配してるかと思ってさ)

「あ、おぅ…寝ちゃったって?今どこなの?」

(うん、近くのホテル。将吾二次会で飲みすぎちゃって帰れそうもなかったから連れてきたんだけど)

「え…っ、あぁ…そっか、悪いな…」


あれ?これどういう流れなんだろう…
懐かしさと嬉しさを飛び越え、急に不安が押しよせてくる。

隼人と言えば将吾の幼なじみって事には変わりないけど、あの頃の二人はそんな付き合いが少なからずあったはず。
そんな二人が久しぶりに再会して…

何かないはずなくない!?

今すぐ迎えに行きたいのに、車は仕事用に買い変えてまだ手元には無いし、そもそもさっきビールを飲んでしまったのでお迎えは無理だ。

もうこの際タクシーで…っ!


「あっ、あの…隼人っ!?」

(ふふっ!何慌てちゃって…大丈夫だよ?まだ何もしてないから)

「なっ、まだって!?隼人くんっ…!?」

(先生?)

「はいっ…」

(将吾さ、またカッコ良くなったよな…)


隼人の下心をヒシヒシと感じてるところに、電話越しからくぐもった将吾らしき声が漏れ聞こえて、不安はとうとう核心に変わった。


「隼人…お前…っ」

(久しぶりに会ったから楽しくなっちゃってさ。でもまさかまた二人が再会してたなんて思ってもみなかった。本当にあるんだね、運命って…)

「…場所教えろ」

(別に何もしないって…)

「いいから場所教えろっ!」

(んぅ…はやとぉ…?)

(あ、将吾起きた)

「おいっ、将吾っ!?将吾ぉっ!!」

(もう…落ち着けよ先生、今代わるから…)


携帯越しに隼人と将吾のやり取りが聞こえて、俺は興奮を抑えられず食い気味に将吾に声をかけた。


「おぃっ、将吾!?迎えに行くから場所教ろっ!」

(ん…?ここ?わかんない…)

「はぁ…ったくもぉ、弱いくせに何でそんな飲むかなぁっ!」

(うぅ…ごめん…)


ついついやり場のない怒りを将吾にぶつけてしまって、せっかく楽しく過ごしていたかもしれない時間をつまらない物にしてしまうのは違うと思い、一呼吸おいて冷静に話しを進める。


「お前、何もされてないよな?」

(…は!?されるわけねぇだろっ、何言ってんだよっ////)

あぁ良かった…
本当かどうかわかんねぇけど、一先ずここは将吾を信用するとしても、このまま一緒にいたら何されるかわかったもんじゃねぇ。

本人に気をつけろなんて言ったところで、酔っ払ってる将吾なんて全く当てになんねぇし。


「とにかく起きたなら早く帰ってこい」

(んぁ?無理だよ…もう電車ない…)

「タクシー呼べるだろ?金はこっちで何とかすっから、とにかく帰ってこいよっ!」

(何怒ってんだよ…)

「べっ、別に怒ってねぇけど心配なのっ!」

(ん…けど、気持ち悪ぃ…っ、んぅ…っ、隼人ぉ…っ)

「…!?将吾っ!?大丈夫か!?おいっ!!」


俺の問いかけに答えられる状態では無いのか、電話口から将吾の声が聞こえなくなり心配で心配で仕方なくて、無駄に部屋の中を動き回り気持ちをどうにか落ち着ける。


(あ、悪ぃ…そういう事だから。今日の所は俺が面倒見るから安心して?)

「安心できねぇよっ!おいっ!!」

(ふふっ、将吾ちゃんと愛されてんだな…俺は安心したよ)

「は?ねぇ、隼人っ!?」

(絶対手は出しません!ちゃんと介抱して明日送って行くから。それでいいでしょ?)

「…っ、でも…っ」

(ねぇっ…隼人…何言ってんの…?)

(はいはい、何でもないから…全部出しちゃいな?)

「将吾ぉ…」

(心配すんなよ、俺のこと信じて?)

「でもさぁ…」

(久々の再会なんだから、俺にもちょっと時間くれよ)


将吾をずっと見守っててくれた幼なじみの可愛いお願いに、少なからず胸が痛み強引に二人を引き離せなくなって、一旦冷静に頭を切り替える。

そうだ、もしこれが隼人じゃなくて全くどこの誰かもわからない奴だったら…!?
そんな奴に介抱されるよりはいくらかマシだろと、そう思って覚悟を決めると隼人に将吾を委ねる事にした。

「よし、わかった。今日のところは任せるから…けど信用したわけじゃねぇからな!?絶対手ぇ出すなよ!?」

(ふふっ、分かりました。じゃあ大切にお預かりしますね)

そう言って電話を切ると、ソファーに体を預け深いため息をついた。
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