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第三章 新生活始めました

仕返し

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その後、将吾は無事会社を退職する事となった。

俺の知り合いの医者の所で診断書を書いてもらい、精神的にも肉体的にも仕事は続けられないという理由を店舗を経営する会社に突きつけた。

そしたら意外とあっさりとしたもんで、会社側は迅速に将吾の退職を受け入れた。

結局会社なんてそんなもんだよな…

セクハラとかパワハラだって訴えたところで、どうにかなるとも思わないし、どうせ辞めるなら戦わせたくもない。

ただ、アイツだけはこのまま許してはおけねぇ…

俺はすぐさま店の奴にそいつの事を調べさせると、既に若いボーイの中では有名で、盗撮まがいな事をしたりオプションにない事を強要したりと、訴えられないギリギリの所でまぁ色々と問題を起こしてくれてるらしい。

俺が辞めるまでに店に来るとも限らないが、来たら絶対に何かしらやらかすだろうから、そん時は容赦なく通報してやろうと俺はそいつが店に来るのを待った。

それから2日後、思ってたより早く現れたソイツは何食わぬ顔をして、予想通り若い新人を指名してきやがった。

コイツのやり口はわかってる。
まだ入りたての何も言い返せないような子を狙って、指名してはやりたい放題してるんだろう。

だから俺は敢えて、見た目は可愛くてまだ新人みたいな雰囲気のベテランを代わりに宛てがい、作戦を実行しようと考えていたその時、元々指名されてたみやびに声をかけられた。


「凜さん、それ俺がやります」

「あ、雅…でもお前、まだ新人だし…」

「ここはまだ浅いっすけど、この業界は長いんで…大丈夫っす」

「いや、だけど…っ」

「凜さんの大事な人って将くんですよね?」

「えっ?」

「前の店で一緒だったんです。俺がここに来たのも将くんの紹介で…あれ?言わなかったでしたっけ!?」


いや、聞いてない…
てか将吾ってこの業界に友達いたのか!?
そんなことも知らなかったなんて、俺って本当にちゃんと将吾のこと見てやれてなかったのかもしれない…と、本気で落ち込んだ。


「話は別のボーイから聞きました。俺も許せないんで…協力させてください。」

「あぁ、わかった…でも、本当にいいのか?」

「もちろん、俺…将くんのこと好きなんで!」

「…っ、す、好きって…!?」

「嫌だなぁ、そんな焦らないでくださいよ。普通に人として好きなだけっす」

「そ、そっか…今でも連絡とか…取ってんの?」

「はい、まぁ…本当にたまにですけど。とにかく俺、行ってきます」

「おぅ…あ、雅っ!」

「はい?」

「オプションにない事されたり、少しでも身の危険を感じたらすぐヘルプボタン押せよ!?禁止行為を見つけた時もな!?」

「りょーかいっす!」


そして数十分が経過、今日は収穫なしかと思われたその時、フロントのヘルプのライトが点滅した。

突入するスタッフの後ろから様子を伺うと、そいつが雅に馬乗りになり殴りかかろうとしてるところだった。

そしてスタッフが慌てて止めにかかると、雅は既に殴られてたにも関わらず至って冷静に後処理を済ませ、ヤツが持ってきたカバンを手に取って俺に差し出した。


「盗撮っす」

「し、してねぇよっそんなこと!!」

「調べればわかるんで、警察呼んでください」


そして俺は警察に連絡して、裏で盗撮されたものを確認。
間違いなく一部始終録画されてて会話までもが入っていた。

部屋からは男の怒鳴り声が聞こえてくる。
ざまぁみろ…これでお前もお終いだな…

そう思って映像を見ていると、画面の中の男が雅に突っ込み腰を振りながら漏らす会話に鳥肌が立った。


(俺の店で働いてた奴が辞めちまってさぁ…っ、あんなに可愛がってやってたのに入れらんなくてムラムラしてんだよっ…君、新人だろ?このまま出してもいいよな?アイツみたいにちゃんとケツ穴締めながらアンアン声出せよ…っ)


カーッと頭に血が上って怒りが抑えられなくて、拳で机を殴りつけヤツがいる部屋に乗り込み、壁に貼り付けられるように押さえつけられているソイツに、俺は無言で近ずき拳を振り上げた。


「おいっ、やめろ!凜っ!!」


スタッフの呼びかけを無視して振り上げた拳を叩きつけると、ドスっと鈍い音が部屋中に響き渡り、辺りの空気が張り詰める。


「殺されなかっただけありがたいと思え」


ヤツは壁に沿ってズルズルと崩れ落ち、全裸のまま床にへたり込み、俺はめり込んだ壁から拳を剥がし周りのスタッフからは安堵のため息が漏れた。
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