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第三章 新生活始めました
りつの弱さ
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心さ、全然冗談に聞こえねぇんだわ。
タクシーから心が降りてきた時、咄嗟に疑ったんだ。
将吾の相手、心なんじゃないかって…
冷静に考えれば心があんな痣付けたり、そもそも日本に居るはずもないのに、あの時の俺にそんな余裕はなくて心の言う通り、道端で会うことなく何も知らないまま部屋でかち合ってたら、間違いなく修羅場と化してたと思う。
タクシーから降りてきた心は、何も知らないふりをしながら挨拶を済ますと、先ずさっき日本に着いたと軽く説明して、正月に実家に帰るまでは健太の家にいるから近いうち将吾も誘って一緒に久々に4人で飲みましょう、なんて他愛もない話で警戒を解いてから本題に入ったんだ。
それも回りくどい言い方は一切せず急に、真剣な顔をして
【りつさん、将吾店長からセクハラされてます】
と…
何でそんなこと心が知ってんだ?
いつ、どこで…って言う疑問ももちろんあったけど、そんな事よりセクハラという言葉でさっきまでわからなかった色んな辻褄が合致して、将吾の抱えてた事、言えなかった事も全部腑に落ちたんだ。
それから俺は心に細かく事情を聞いた。
将吾の弱みを握って脅されてた事、もちろん合意なんてしてないし無理矢理だって事、その話をさっき電話で聞いたって事。
あまりにも苦しそうだったから、今から行こうと俺の家に向かってた事…
俺はそんなこと何一つ知らずに、一人浮かれて勝手にショックを受けて疑って、二人の大事な夜に部屋を飛び出して独りきりで泣かせてたなんて、悔しくて情けなくて仕方かった。
将吾を一瞬でも疑って出ていった俺が悪い。
将吾は何も悪くない…っ。
なのに、俺っ…
「ん…っ」
「あ、気付いた?俺部屋出ますね」
「え?なんで?」
「またパニック起こしたら困るんで」
「お、おぅ…」
心はどこまでいっても賢くて良い奴でかっこよくて、俺はこいつを目の前にするとどんどん自信が無くなっていく。
俺は将吾の為に何ができただろう。
もっとちゃんと将吾の事見てたら、冷静に話を聞けてたら…
「…りつぅ」
「将吾…ごめんな。そのっ、無理やり…」
「りつに…見られたくなかった…あんなっ…気持ち悪いっ…」
「…っ、本当、ごめん…っ!」
将吾の目からまたポロポロと涙がこぼれる…
あんな事しないでちゃんと話だけ聞いてやれてれば、ここまで傷つけずに済んだかもしれないのに。
「俺っ…嫌だって言ったけどっ…脅されて…っ、黙っててやるからさせろってっ…バレたら働けなくなるかもしれないしっ…りつにも迷惑かけたくなかったからっ…ごめ…なさい…っ」
「分かったからっ…もう喋んなっ…」
喋るななんて、本当はもう聞いてられなかっただけ。
将吾が知らない奴に何されたとか考えるだけでもゾッとするし、そんなことも知らずに毎日何となく過ごしてた自分にも腹が立つし、それに…その店長とか言うやつ…なんなんだよ。
マジでそいつ、吊るし上げてボッコボコにしてやりてぇ…
覚えとけよクソ野郎。
「俺の事っ…嫌いになった…?」
「んなわけねぇだろっ…」
「ほんと?」
「当たり前だろっ」
「…俺…っ、捨てられると思って…っ」
「ばか…っ」
「あっ…」
何かを思い出したようにキョロキョロと辺りを見回した後、携帯を確認して申し訳なさそうに上目遣いで俺を見る将吾。
何となく察しがついて、聞きたくても聞けないであろう話をあえて俺からふった。
「さっきな、ここに来る途中に心に会ったの。そんで心から話聞いて、一緒に帰ってきたんだけどさ…」
「あぁ、そうだったんだ…で、心はっ…あ、いや…」
多分俺に気を使ってるんだろう…
心のことが気になってるわけじゃないとでも言いたげに、言葉を濁し目を泳がせる将吾に少し心がかき乱される。
会ってしまったらまた好きになっちゃったりしないだろうか…
ついさっきまで将吾が俺に話せなかった話を全部聞いて受け止めて、仲介までしてくれた優しいやつ。
俺だったらまた好きになっちゃうかもしんない…
でも今回のことに関しては何もかも心のお陰だし、ずっと放置しとく訳にもいかず重たい腰を上げた。
「ちょっと待ってろ…呼んでくるから」
「えっ、あ…っ」
不安そうな顔で起き上がり俺の服の裾を掴んで離そうとしないから、頭をポンポンと撫でから将吾の手を掴めばそっと服を離してくれて、俺は心を呼びに行った。
タクシーから心が降りてきた時、咄嗟に疑ったんだ。
将吾の相手、心なんじゃないかって…
冷静に考えれば心があんな痣付けたり、そもそも日本に居るはずもないのに、あの時の俺にそんな余裕はなくて心の言う通り、道端で会うことなく何も知らないまま部屋でかち合ってたら、間違いなく修羅場と化してたと思う。
タクシーから降りてきた心は、何も知らないふりをしながら挨拶を済ますと、先ずさっき日本に着いたと軽く説明して、正月に実家に帰るまでは健太の家にいるから近いうち将吾も誘って一緒に久々に4人で飲みましょう、なんて他愛もない話で警戒を解いてから本題に入ったんだ。
それも回りくどい言い方は一切せず急に、真剣な顔をして
【りつさん、将吾店長からセクハラされてます】
と…
何でそんなこと心が知ってんだ?
いつ、どこで…って言う疑問ももちろんあったけど、そんな事よりセクハラという言葉でさっきまでわからなかった色んな辻褄が合致して、将吾の抱えてた事、言えなかった事も全部腑に落ちたんだ。
それから俺は心に細かく事情を聞いた。
将吾の弱みを握って脅されてた事、もちろん合意なんてしてないし無理矢理だって事、その話をさっき電話で聞いたって事。
あまりにも苦しそうだったから、今から行こうと俺の家に向かってた事…
俺はそんなこと何一つ知らずに、一人浮かれて勝手にショックを受けて疑って、二人の大事な夜に部屋を飛び出して独りきりで泣かせてたなんて、悔しくて情けなくて仕方かった。
将吾を一瞬でも疑って出ていった俺が悪い。
将吾は何も悪くない…っ。
なのに、俺っ…
「ん…っ」
「あ、気付いた?俺部屋出ますね」
「え?なんで?」
「またパニック起こしたら困るんで」
「お、おぅ…」
心はどこまでいっても賢くて良い奴でかっこよくて、俺はこいつを目の前にするとどんどん自信が無くなっていく。
俺は将吾の為に何ができただろう。
もっとちゃんと将吾の事見てたら、冷静に話を聞けてたら…
「…りつぅ」
「将吾…ごめんな。そのっ、無理やり…」
「りつに…見られたくなかった…あんなっ…気持ち悪いっ…」
「…っ、本当、ごめん…っ!」
将吾の目からまたポロポロと涙がこぼれる…
あんな事しないでちゃんと話だけ聞いてやれてれば、ここまで傷つけずに済んだかもしれないのに。
「俺っ…嫌だって言ったけどっ…脅されて…っ、黙っててやるからさせろってっ…バレたら働けなくなるかもしれないしっ…りつにも迷惑かけたくなかったからっ…ごめ…なさい…っ」
「分かったからっ…もう喋んなっ…」
喋るななんて、本当はもう聞いてられなかっただけ。
将吾が知らない奴に何されたとか考えるだけでもゾッとするし、そんなことも知らずに毎日何となく過ごしてた自分にも腹が立つし、それに…その店長とか言うやつ…なんなんだよ。
マジでそいつ、吊るし上げてボッコボコにしてやりてぇ…
覚えとけよクソ野郎。
「俺の事っ…嫌いになった…?」
「んなわけねぇだろっ…」
「ほんと?」
「当たり前だろっ」
「…俺…っ、捨てられると思って…っ」
「ばか…っ」
「あっ…」
何かを思い出したようにキョロキョロと辺りを見回した後、携帯を確認して申し訳なさそうに上目遣いで俺を見る将吾。
何となく察しがついて、聞きたくても聞けないであろう話をあえて俺からふった。
「さっきな、ここに来る途中に心に会ったの。そんで心から話聞いて、一緒に帰ってきたんだけどさ…」
「あぁ、そうだったんだ…で、心はっ…あ、いや…」
多分俺に気を使ってるんだろう…
心のことが気になってるわけじゃないとでも言いたげに、言葉を濁し目を泳がせる将吾に少し心がかき乱される。
会ってしまったらまた好きになっちゃったりしないだろうか…
ついさっきまで将吾が俺に話せなかった話を全部聞いて受け止めて、仲介までしてくれた優しいやつ。
俺だったらまた好きになっちゃうかもしんない…
でも今回のことに関しては何もかも心のお陰だし、ずっと放置しとく訳にもいかず重たい腰を上げた。
「ちょっと待ってろ…呼んでくるから」
「えっ、あ…っ」
不安そうな顔で起き上がり俺の服の裾を掴んで離そうとしないから、頭をポンポンと撫でから将吾の手を掴めばそっと服を離してくれて、俺は心を呼びに行った。
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