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第三章 新生活始めました

言えない

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家に着いて先に風呂に入りシャワーを浴びて、りつが出てくるのを待って今日は一緒にベットに入る。

そう…いつもと違うのは明日は休みで、今日は俺らにとってのクリスマスだいう事。

当然このあとの事が頭をかすめれば、名前を呼ばれただけでも緊張が高まる…


「将吾?さっきの話なんだけどな…」

「っ…うん」

「お前も仕事辞めて一緒にやんねぇ?」

「は?俺も…!?」

「うん、そうすりゃ辛い思いもしなくていいだろ?」

「や、けど…貯金だってそんな無いのに、俺まで仕事辞めたら生活できなくなるだろっ…」

「おいおい、俺をなめてもらっちゃ困るねぇ。貯金はそこそこあるし、お前はそんなこと気にしなくていいのぉ!」

「でも…っ」


それじゃやっぱり、りつに助けて貰って生活する事になるじゃん…

俺は俺の足でちゃんと立って、りつに頼らなくても大丈夫なようになりたい、ちゃんとした大人になりたいと思ってここまで頑張ってきたのに、甘えたくなかったのに…っ、それにっ…


「まぁ、お前がどうしても今の仕事が好きで辞めたくないって言うなら別だけどさ…」

「好きとかじゃないけど。まだ…辞められないっ…」

「辛くても辞められない理由は?」

「それはっ…」


あ、そうか!
りつもあの店を辞めてしまえば、俺が仕事を辞めても別に害はないんだ。
店長がもし押しかけたとしても、俺の過去がバレることもりつに被害が及ぶことも無くなる?

そう思ったら今までの緊張が緩みほっとして涙が溢れてきた…


「…っ、将吾!?」

「ぅっ…」


あぁ、やっぱり俺は弱い…

どんなに強がっても意地張っても、結局最後はりつが助けてくれるってどっかで思ってるのかもしれない。

そんなんじゃダメなのに…
なのにあの店長から解放されるなら、あんな仕事なんてもう辞めてしまいたい…


「こんなこと言いたくないけどさ?店には将吾の代わりなんて探せばいくらでもいるの。でもさぁ、俺にはお前しかいねぇんだよ?お前が苦しむ姿は見たくねぇし、せっかくなら毎日楽しく過ごしたいじゃん?」

「りつ…っ、俺…っ」

「もぉ…どんだけ無理してたんだよぉ…」


涙を見せたくなくて袖で拭い取り我慢したのに、りつが俺の頭をポンポンと撫でるもんだから、子供扱いされてる様でムッとしてその手を掴んで剥した。

全くもう…とでも言いたげに眉毛を下げて微笑むりつに、このまま甘えていいのかもう少し自分だけで頑張ってみるか、心の中での葛藤が始まる…
どっちにしても今すぐには辞められない。
りつの動きに合わせなきゃ。


「まぁさ、今すぐにどうこうって話じゃねぇから…ゆっくり考えてよ。な?」

「うん…」


ほら、またこうやって俺にちゃんと考える時間をくれるから。
だから余計に甘えてもいいのかな?って気になってしまうんだ。

久し振りのりつの腕の中は暖かくて、嫌なことも苦しかったこともすっーっと薄れていくような気がして、完全に安心しきっていた俺は、りつの手が俺の腰に触れて服の中に手が入ってくるのも拒まずに、すっかりいい気分になっちゃって一度はその手を受け入れたが、今日受けた辱めを思い出し慌ててりつの手を掴んだ。


「…っ、まっ…て…っ」

「ん…?どぉした?」

「いや、その…っ」

「最近全然させてくんないじゃん。ねぇ、もしかして俺の事もう好きじゃねぇの…?」

「えっ、違うっ…!そんな事…っ」

「だってさ?店の事もそうだけど全然乗り気じゃないし、仕事辞めたくないってのもさぁ…何か俺に隠してんじゃないの?」

「か、隠してなんかっ…」


りつは、はぁ…っと大きくため息をついて、俺の服の中に入っていた手を抜いた。

話さなきゃ伝わらない…
そんな事は今まで散々失敗してきて分かってるけど、でもじゃあどうやって説明したらいい?

店長に犯されてますなんて、無理やりとはいえ恋人にそんなこと言えるわけないし、それに素直に言ったとして許される保証なんてないっ…

もし俺がりつの立場だったら俺はりつを許せないかもしれない。

どうしよう…どうしよう…っ!
このまま黙ってればりつを怒らせるだけだし、かと言ってこの話をする事だって勇気がいる。

あぁ、なんか久しぶりに胸が苦しくなってきた…
息がしずらくて浅い呼吸を繰り返しながら少し落ち着こうと体制を変えて動いた時、たまたまりつの足が俺の内腿に当たってしまった。


「い"…っ!」

「…!?なぁ…お前…っ」

「…っ、何でもない…っ」

「見せろっ」

「嫌だっ!!」

「なんでだよっ!俺にバレたらマズイ事でもあんのかよっ!」

「ちがっ…やっ、やだぁっ!!」


りつに無理やりズボンを脱がされ顕になった太腿には、無数の赤黒い痣と歯型…
俺は一体これをどう説明すれば―――


もう終わった―――
そう思って腕を顔の上で交差させて目を覆い、苦しくなる肺に必死に酸素を取り込み呼吸をした。


「な…に…っ、これ…」

「はぁっ、はぁっ…ごめっ…なさいっ…」

「いや、ごめんとかじゃねぇだろ…何?って聞いてんだよ…」

「うぅ…っ、ごめ…っ」

「だから謝れなんて言ってねぇのっ!何って聞いてんだよっ!」

「…っ、あ…はぁ…ぅぐ…っ」


もうこうなってしまっては黙ってる方が良くない。
そんなこと頭ではわかってるのけど、息が苦しくて涙ばっかり流れて言葉が全然出てこない。


「あーもぉっ!なんでお前が泣くんだよっ!…っ、もういい…っ、ちょっと頭冷やしてくるっ」


りつは怒ってた…
いや、泣いてたかもしれない…っ。
言い訳を話す事も引き止めることも出来ずに、俺は必死に苦しさから逃れようと、心を落ち着かせようとするけどこうなってしまってはもう術がない。

だって、りつが傍にいないんだから―――
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