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第三章 新生活始めました
デート
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世の中は、クリスマスシーズン真っ只中。
俺はと言えば残業がやっと終わり、電車に乗って待ち合わせ場所に向かっている途中。
降り立った場所はイルミネーションで彩られていて、居酒屋の仕事帰りの俺には大分不釣り合いだ。
それに周りはみんな男女のカップルばっかりだし、こんな所に男同士で待ち合わせなんて不釣り合いにも程がある…
そして辺りを見し、明らかにイルミネーションより派手な上着を着たりつを発見すると、何故か大きな荷物を抱えていて寒そうに手を擦り合わせているから、結構待たせちゃったなと思い急いで駆け寄って行った。
「はぁっ…ごめんっ、待たせたっ」
「おぅ、お疲れ」
「結構待っただろ…」
「んなこたねぇーよ、気にすんな」
優しいりつはいつもこんな感じ…
今まで俺に本気で怒ったことってあったかな?なんて考えてると、りつは肩にかけていた大きな荷物を俺に手渡した。
「はいこれ」
「なにこれ…」
「着替えてこいよ、その格好じゃ…な?」
「…やっぱ変?」
「変じゃねぇけど、一応デートだし?家帰ってる時間もったいないと思ったからさ」
こういうとこ…ホント好き。
りつの優しさにホッコリしながら中を確認すると、明らかに俺のじゃない服が入っている…
さっきのホント好き、撤回。
「おい、コレ…なんでお前の服なんだよ」
「ん?あー、だってさぁ?将吾の服地味なんだもん。イルミネーションに負けちゃうなぁと思ってさぁ…?」
「勝ってどぉすんだよ。ただでさえお前の服目立ってんのに、俺もこれ着たら二人して浮きまくるじゃん…っ、恥ずかしい…」
「絶対似合うと思って持ってきたのにぃ…」
「…っ、でも、まぁ…ありがとぉ」
「ふふっ♡じゃあ待ってるから着替えて来て?荷物駅のロッカー入れとけよ」
「うん、わかった」
そして、りつが持ってきてくれたやたら派手な服に着替えてりつが待つ場所に行くと、嬉しそうにニヤニヤしながら俺の服装を整え始めるりつ。
「よしっ、完璧♡行くか!」
「うん…////」
カップルだらけの街並みに、派手な男ふたりが並んで歩いてればそこそこ目立つだろうと思っていたが、周りなんて案外他人のことなんて気にしてないみたいで、俺らの事を見てくる人なんていなかった。
それならばとポケットに突っ込んでいた手をなんとなく出してみると、すかさずその手をりつに掴まれた。
「あっ、ちょっとぉ…っ////」
「なんだよぉ、一応デートだろ?久しぶりなんだから手くらい繋がせろよぉ」
唇を尖らせて甘えるりつに根負けして仕方なく手を繋げば、ニコニコと微笑みあっちこっちのイルミネーションに指を指しながら、楽しそうにはしゃぎだすりつ。
その笑顔と手から伝わる温もりに、満更でもなくニヤける自分も大概だと思うがその温かさに甘えたくて、隙間が無くなるくらいに引っ付いてもう一度手をぎゅっと握り返した。
「なぁ!あれ乗ろうぜっ!」
「おぉ…観覧車?」
「行こ行こ~っ!」
俺の手を引っ張り駆け出すりつの後を追いかけ観覧車乗り場に到着すると、見事に男女のカップルだらけで急に恥ずかしくなって、繋いでいた手を離し巻いていたマフラーですかさず顔を隠した。
「将吾?なにやってんの…?」
「なっ、なんか恥ずいだろっ…///」
「ん?別に…?」
「お前はいいよな…いつもあっけらかんとしてて…」
「そぉでもないけどなぁ…」
「え…?」
「これでも結構必死だったりするんだけど…」
そうだ…
りつはいつだって言わないだけで、俺が分からないところで努力してたり悩んでたり色んなこと考えてたりしてるんだ。
別に何も考えて無いわけじゃないし、悩みがない訳でもない。
俺にそれを見せないってだけ…
適当なことを言ってしまった手前、何となく罰が悪くて目を合わせられないまま観覧車に乗り込んだ。
そしてりつの向かい側の席に座ろうとした、その時だった。
「い…っ!!」
「どぉしたっ!?」
「…っ、…いや、何でもないっ」
座った拍子に太ももに付けられた傷が触れて、思わず声を上げてしまった。
こんな事今バレたらデートどころじゃない…
俺は顔に出さないように痛みを必死にこらえた。
「なぁ、将吾。お前なんか隠してんだろ…」
「えっ、いや…別に」
「どっか痛めた?見せてみ?」
「いや…っ、大丈夫だからっ…ぅわっ!」
りつが急に俺の方に移動してきて観覧車が大きく揺れると、バランスを崩したりつが俺の上に覆いかぶさり、逃げ場のない俺はとにかく痛みを我慢する事に集中した。
「うぉっ、悪ぃ…平気?」
「ん…っ」
「どぉしたんだよ…やっぱどっか痛いんだろ?」
唇を巻き込み必死に我慢するけど首を横に振るのが精一杯で、りつに悟られまいと目を逸らすけど、りつの手が俺の頬に触れて強引に視線を合わせられると、あっという間に涙がこぼれそうになる。
「将吾、我慢すんなよ…」
「してないっ…」
「そんなに俺が信用出来ない?」
「そうじゃない…っ」
りつが悪いわけじゃない。
りつを悲しませるような事をしてるのは俺なんだ。
悔しくてグッと唇を噛むと、りつはその唇に優しく触れてきて何度も何度も優しいキスをくれた。
そして結構高い位置まで来てやっと傷に触れないように身体を動かすと、一気に力が抜けて俺はりつを受け入れた。
「仕事、大変か?」
「…うん、それは…まぁ」
「無理して続けることないからな」
「やっ、でもっ…」
「俺が不安定だからな。お前にばっか負担かけてごめんな…」
「違うっ!そうじゃないっ…俺っ、ちゃんと認められたくて」
「俺はもう認めてるよ?社員になって店回してさ、俺には出来ねぇもん…すげぇなぁって思ってる。将吾も大人になったんだなぁって…」
「りつ…っ」
「だからさ、困ったことがあったらちゃんと話してよ。な?」
「うん…」
俺はと言えば残業がやっと終わり、電車に乗って待ち合わせ場所に向かっている途中。
降り立った場所はイルミネーションで彩られていて、居酒屋の仕事帰りの俺には大分不釣り合いだ。
それに周りはみんな男女のカップルばっかりだし、こんな所に男同士で待ち合わせなんて不釣り合いにも程がある…
そして辺りを見し、明らかにイルミネーションより派手な上着を着たりつを発見すると、何故か大きな荷物を抱えていて寒そうに手を擦り合わせているから、結構待たせちゃったなと思い急いで駆け寄って行った。
「はぁっ…ごめんっ、待たせたっ」
「おぅ、お疲れ」
「結構待っただろ…」
「んなこたねぇーよ、気にすんな」
優しいりつはいつもこんな感じ…
今まで俺に本気で怒ったことってあったかな?なんて考えてると、りつは肩にかけていた大きな荷物を俺に手渡した。
「はいこれ」
「なにこれ…」
「着替えてこいよ、その格好じゃ…な?」
「…やっぱ変?」
「変じゃねぇけど、一応デートだし?家帰ってる時間もったいないと思ったからさ」
こういうとこ…ホント好き。
りつの優しさにホッコリしながら中を確認すると、明らかに俺のじゃない服が入っている…
さっきのホント好き、撤回。
「おい、コレ…なんでお前の服なんだよ」
「ん?あー、だってさぁ?将吾の服地味なんだもん。イルミネーションに負けちゃうなぁと思ってさぁ…?」
「勝ってどぉすんだよ。ただでさえお前の服目立ってんのに、俺もこれ着たら二人して浮きまくるじゃん…っ、恥ずかしい…」
「絶対似合うと思って持ってきたのにぃ…」
「…っ、でも、まぁ…ありがとぉ」
「ふふっ♡じゃあ待ってるから着替えて来て?荷物駅のロッカー入れとけよ」
「うん、わかった」
そして、りつが持ってきてくれたやたら派手な服に着替えてりつが待つ場所に行くと、嬉しそうにニヤニヤしながら俺の服装を整え始めるりつ。
「よしっ、完璧♡行くか!」
「うん…////」
カップルだらけの街並みに、派手な男ふたりが並んで歩いてればそこそこ目立つだろうと思っていたが、周りなんて案外他人のことなんて気にしてないみたいで、俺らの事を見てくる人なんていなかった。
それならばとポケットに突っ込んでいた手をなんとなく出してみると、すかさずその手をりつに掴まれた。
「あっ、ちょっとぉ…っ////」
「なんだよぉ、一応デートだろ?久しぶりなんだから手くらい繋がせろよぉ」
唇を尖らせて甘えるりつに根負けして仕方なく手を繋げば、ニコニコと微笑みあっちこっちのイルミネーションに指を指しながら、楽しそうにはしゃぎだすりつ。
その笑顔と手から伝わる温もりに、満更でもなくニヤける自分も大概だと思うがその温かさに甘えたくて、隙間が無くなるくらいに引っ付いてもう一度手をぎゅっと握り返した。
「なぁ!あれ乗ろうぜっ!」
「おぉ…観覧車?」
「行こ行こ~っ!」
俺の手を引っ張り駆け出すりつの後を追いかけ観覧車乗り場に到着すると、見事に男女のカップルだらけで急に恥ずかしくなって、繋いでいた手を離し巻いていたマフラーですかさず顔を隠した。
「将吾?なにやってんの…?」
「なっ、なんか恥ずいだろっ…///」
「ん?別に…?」
「お前はいいよな…いつもあっけらかんとしてて…」
「そぉでもないけどなぁ…」
「え…?」
「これでも結構必死だったりするんだけど…」
そうだ…
りつはいつだって言わないだけで、俺が分からないところで努力してたり悩んでたり色んなこと考えてたりしてるんだ。
別に何も考えて無いわけじゃないし、悩みがない訳でもない。
俺にそれを見せないってだけ…
適当なことを言ってしまった手前、何となく罰が悪くて目を合わせられないまま観覧車に乗り込んだ。
そしてりつの向かい側の席に座ろうとした、その時だった。
「い…っ!!」
「どぉしたっ!?」
「…っ、…いや、何でもないっ」
座った拍子に太ももに付けられた傷が触れて、思わず声を上げてしまった。
こんな事今バレたらデートどころじゃない…
俺は顔に出さないように痛みを必死にこらえた。
「なぁ、将吾。お前なんか隠してんだろ…」
「えっ、いや…別に」
「どっか痛めた?見せてみ?」
「いや…っ、大丈夫だからっ…ぅわっ!」
りつが急に俺の方に移動してきて観覧車が大きく揺れると、バランスを崩したりつが俺の上に覆いかぶさり、逃げ場のない俺はとにかく痛みを我慢する事に集中した。
「うぉっ、悪ぃ…平気?」
「ん…っ」
「どぉしたんだよ…やっぱどっか痛いんだろ?」
唇を巻き込み必死に我慢するけど首を横に振るのが精一杯で、りつに悟られまいと目を逸らすけど、りつの手が俺の頬に触れて強引に視線を合わせられると、あっという間に涙がこぼれそうになる。
「将吾、我慢すんなよ…」
「してないっ…」
「そんなに俺が信用出来ない?」
「そうじゃない…っ」
りつが悪いわけじゃない。
りつを悲しませるような事をしてるのは俺なんだ。
悔しくてグッと唇を噛むと、りつはその唇に優しく触れてきて何度も何度も優しいキスをくれた。
そして結構高い位置まで来てやっと傷に触れないように身体を動かすと、一気に力が抜けて俺はりつを受け入れた。
「仕事、大変か?」
「…うん、それは…まぁ」
「無理して続けることないからな」
「やっ、でもっ…」
「俺が不安定だからな。お前にばっか負担かけてごめんな…」
「違うっ!そうじゃないっ…俺っ、ちゃんと認められたくて」
「俺はもう認めてるよ?社員になって店回してさ、俺には出来ねぇもん…すげぇなぁって思ってる。将吾も大人になったんだなぁって…」
「りつ…っ」
「だからさ、困ったことがあったらちゃんと話してよ。な?」
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