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第二章 心との生活

別れ

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そしてあっという間に1ヶ月の時が過ぎ、ついに心が留学の為日本を出る日が来た。

りつが完全に退院出来るまでにはあと数週間…

家はその間の月末までは使ってていいって言われて、正直少しほっとしていた。

この日までに一人で住むのに探していた物件を後一歩のところで別の人に取られたりと、なかなか上手いこといかなくて家が無くなるところだったから。

結局、最後の最後まで心に世話になりっぱなしだ…


そしてその日の朝、俺は嫌々ながらも仕方なく健太の車に乗り込み、一緒に心を空港まで見送りに行った。

この数日間、忙しくてりつに会いに行けなかった代わりに、心を見送ることをりつとのメッセージに残しておいたが、未だに既読がつかない。

もしここでやっぱり俺が心に着いて行くなんて言ったら、りつはなんて言うだろう…

俺はあの時りつの側にいたいと望んだけれど、りつの想いも同じなのか…

りつの本心が俺には未だによく分からない。


「将吾、今まで本当にありがとう」

「俺こそ…本当にありがとう」

「将吾のおかげでやりたい事が決まったんだ。将吾には感謝してる。帰ってきたらまた会ってくれるよね?」

「うん、もちろん」

「なぁ、俺は??」


ちょっと不貞腐れながら健太が心を睨みつけると、心はいつもの笑顔で健太を宥める。

すると健太は照れくさそうに頬を赤らめた…


「帰ったら連絡する。いや、着いたらすぐ連絡するよ」

「おぅ、そうして///」

「じゃあ、将吾…元気で…」

「心も、元気でね」

「行ってきます」


俺は俺の、心は心の人生を…
そんな気持ちを込めて心を送り出した。


心の乗った飛行機が離陸するのを見送ると、健太は車のキーをクルクルと回しながらしゃがみこみ俺を見上げた。


「はぁ、修羅場にはならずに済んだか…」

「え?」

「いや、なんでもねぇ」


修羅場、とは…?俺が取り乱したり心に着いて行くとか言い出したりするとでも思ってたのか?

まさか、ここまで来ていくら俺でもそんな事しない。


「なぁ、この後りっちゃんのとこ戻るんだろ?」

「…わかんねぇ」

「は?なんだよ、寄り戻したんじゃねぇの?」


俺の歯切れの悪い答えにイラついたのか、すぐにまた立ち上がって俺を睨みつける健太に、後ずさりすると何となく言い訳を並べてみる。

俺だってどうしていいかわかんないんだ…


「だって…っ、りつは俺が心といる方が幸せだって言うから…りつの所に戻るべきじゃないのかなぁ…って」

「あぁ!?めんどくせ!んなの強がりに決まってんだろ!?りっちゃんがどんだけあんたの事想ってると思ってんの!?いい加減自覚持てよ、もう心を引き合いに出すな!」

「…っ、んぅ」


そんなにキレることないと思うけど、健太が言うことは最もだ…

心を理由に、りつとの関係を保留するのはもう終わり。

俺は心について行くことはしなかったんだから、もしりつの元に戻らないとしてもそれは心がいるからじゃない。

自分で決めなきゃいけないことのはずだ。


「どうしたらそんなに自信が無くなるんだよ…誰がどう見てもりっちゃんはお前の事好きだろうが。てか、お前のことしか好きじゃねぇじゃん、今も、昔も…なんも変わってねぇよ、あの人…。羨ましすぎるくらい愛されてんじゃん…っ」


そんなの自分じゃわかんないよ…
今も昔も愛されるってどういうことだかわかんない。

俺、りつに捨てられたんだよ?

どんなに俺の事想ってくれてても、俺のためだって言ってくれても好きだって言って抱きしめてくんなきゃわかんない。
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