こじらせ男子は一生恋煩い

むらさきおいも

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第二章 心との生活

看病の日々

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りつに繋がる機械と酸素の音だけが部屋に響きわたり、俺は手を握ったままぼぉっとりつの顔を眺めていた。


「りつ…ねぇりつ?聞こえる?」


何日経っても何度話しかけても、眠ったままピクリとも動かないりつ。

髭、めっちゃ伸びたな…

大事な人を失うのってさ…
ほんとに怖いんだな。

一人でいると、なんとも言えない恐怖心が襲いかかってくる。

このままりつが目覚めなかったら…

そんな事が頭をよぎると、耐えられなくて病院だと言うにもかかわらず、思わずりつの毛布を掴み感情を露わにしてしまった。


「りつ…俺っ、嫌だよ!お前と同じ苦しみを俺に背負わせる気?勘弁してよ…っ、なぁ!目ぇ覚ませよ…っ!りつっ!りつっ!!…っ、はぁ…はぁ…っ、り…つ…」


苦しい…頭ん中がぐるぐるして気持ち悪い。

いっその事俺も一緒に連れてってくんない…?

心、ごめんな…
俺やっぱりつのこと忘れること出来ないや。

りつ…ずっと一緒がいいよ…


「おぃ!?大丈夫か…!?」


朦朧とする意識の中で、聞き覚えのある声が聞こえる。

あぁ、あいつか…俺の嫌いなあいつ。

もう来んなよ…俺らの邪魔すんな…


「…ん」

「え?りっちゃんっ!?おいりっちゃん!聞こえるか!?」

「けん…た…」

「りっちゃんっ!俺、先生呼んでくる!!」


えっ…りつ…?りつ!?

声を出したいのに思うように声が出せない…

苦しくて必死にりつの手を握り、ぼやけた視界からりつを確認すると、僅かに頭が動いて手に力が入った。


「しょ…ご…」

「り…つ…っ」

「なんで泣いてんだよ…」

「…っ、う…っ、りつぅ…っ」

「苦しいなぁ…こっちおいで…?」


りつの負担にならないように、俺は泣きながらそぉっとしがみつくと、りつの腕が俺を包み込んでくれた。

この温もり、この安心感…
もう絶対に離れたくない…

次第に落ち着いてくると、病室に健太と先生が来て一時的に俺は引き剥がされ、看護師の元へと引き渡された。

そして先生がりつの様子を見てくれて、今の所後遺症もなさそうだから大丈夫と、俺をまたりつのそばに戻してくれた。


「りつ、ごめん。俺のせいで…」

「お前のせいじゃねぇよ…勝手にトラックが突っ込んできたのぉ」

「チョコ…潰れちゃったね…」

「そうだなぁ…せっかく将吾から貰ったのにな…」

「でも…っ、りつが無事でよかった…っ」

「あんま無事じゃねぇけどなぁ」


りつが、俺に話しかけてくれる。

りつが、俺に笑いかけてくれる。

りつが…生きてる―――

それが何より嬉しかった。
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