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第一章 出会いと再会

心と健太

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将吾をうちに置いてから早二日が経った頃、健太に聞きたいことがあると呼び出され、俺は大学の中庭のベンチに座っていた。

将吾は相変わらず落ち込んだままで、時折俺に甘えては来るものの、やっぱりその先には進めない。

将吾がりつさんを本当は諦められない事も、俺と特別な関係になれない事も俺は知ってる。

だけど俺はどうしたって将吾を諦められないから、だから奪ってでも手に入れたい、そう思ってた。


「よっ、待たせて悪ぃ」

「ううん、俺も今来たとこだし…」


健太は俺の親友。
俺が少し変わってるからか、この歳まであまり友達なんていなかったのに、健太だけは俺に興味を持ってくれて、ここまで仲良くなれた。

俺にとって健太は、唯一無二のたった一人の親友なんだ。
 

「聞きたいことって何?」

「うん、あのさ?本当はあの日、何してたの?」

「あの日?あの日って?」

「だから、夏川先輩と一緒にいた日だよ」

「あぁ、あの日は妹と買い物してる時に、本当にたまたま会ってさ?んで、将吾がりつさんに買いたい物があるって言うから付き合っただけ。まぁタイミングが悪かったのかもね…」

「買いたい物って?」

「クリスマスプレゼント?あれ渡せたのかなぁ…この感じだと無理だったかなぁ…」


なんだろう…健太がなんでこんな事聞いてくるんだ?

別に俺と将吾が何してたって別に…

もしかして、探り入れて来いってりつさんにでも頼まれたのかな?

だとすると健太とりつさんの関係って、やっぱり将吾が思ってる通り、高校の時から今もずっと続いてたのか…?


「てか、健太は?りつさんとどうなの?将吾はずっと連絡取ってたんじゃないかって疑ってたけど…」

「取ってないよ、二年振りに会った。ほんとたまたま。だから完全な誤解だ」

「そっか…」


なんとも言えない微妙な空気が流れる。

誤解だとしたら仲直りも時間の問題か…

手離したくないから黙ってるってのもありだな、なんて思いながらこの事実を頭の片隅に追いやった。


「あの…さ、少なくともって事は、その…」

「ん?あぁ…まぁ、前は色々あったんけどさ…でも将吾がりつさんに再会する前の事だからね?」

「そう…なんだ…」


健太は俺が男の子が好きって事…
多分知らなかったんだよな。

変わり者の俺が更に変わってるって知って、もしかしたら健太も俺から離れてっちゃうのかもしんないな。

そうなると流石にちょっと悲しいけど、将吾を諦める理由にはならない。

だからここではっきりと健太に意志を告げて、りつさんに伝えてもらわなきゃならない!


「健太…俺、将吾の事好きなんだ。だからさ、りつさんが諦めるなら俺が貰っちゃおうかなぁって…」

「…っ、だめっ!」

「え…っ?」

「や、…だってさ……んぅ…とにかくダメ!あいつに早く帰るように言って?」


健太の言うダメは、なんのダメなんだろう…

りつさんに取り返してこいとでも言われたか?

いや、もしかして健太も将吾の事が好き…とか?

どっちにしても俺は諦めない、例え健太が相手でもね。


「まぁ、将吾にその気があるならね」

「このまま夏川先輩が帰らなかったら、お前付き合うの…?」

「そうだなぁ、そうなるといいなぁとは思ってるよ」

「…そ、か」


その残念そうな返事は、軽蔑から?
それともライバルだと思われてる?

りつさんだって、その気あれば迎えにくらい来るだろ。

そっちがその気なら俺だって渡さないから。
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