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第一章 出会いと再会
疑心暗鬼
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昨日の夜はネカフェで過ごしたせいか、全然寝れなくていつもより疲労感が半端ない。
それを悟られないようにと動いていたつもりだったのに、流石の心くんはそんな俺を見てすかさず声をかけてくる。
「将吾…大丈夫?」
「ん?何が?」
「昨日ちゃんと家帰れたの?」
「あ…うん、帰ったよ」
「わだかまりは取れた?」
「…うん」
そんな俺の嘘を困った顔で眺める心…
一晩一人で過ごしてみてわかったのは、やっぱり独りは寂しいって事。
だからと言って誰でもいいって訳ではなくて、やっぱり俺にはりつが必要なんだって、改めて感じたんだ。
だから、朝になって数件の着信があった事にホッとしたのも確かで、何も言わずに拗ねた自分も悪かったと反省して、今日はちゃんと帰って謝ろうと思ってた。
バイトが終わる頃、いつもだったらりつが迎えに来てくれるはずだけど、さすがに今日は来ないと思って一人で帰ろうと裏口から出ようとすると、後ろからそっと腕を掴まれた。
「将吾…っ」
「心?」
「送ってくよ…」
「でも、お前まだバイト…」
「店長が休憩ってことなら良いって、りつさん来てないんだろ?」
心のその言葉に胸が痛んだ。
りつは来ない、要するに仲直りはできてないし、帰ったところで上手くいくかも分からないって状況を心に既に見抜かれてる。
返す言葉もない俺の手を握る心は、ふわっとした優しい顔で俺を見つめる…
「うち、来る…?」
その一言に一瞬気持ちが揺らいだ。
だけどこのままズルズル喧嘩したまま心の家になんて行ったら、取り返しがつかなくなる。
一先ず家に帰ってりつに謝らなきゃ…
「ううん、帰るよ。取り敢えず帰る…」
「そっか、わかった。なら送ってく」
そう言って裏口から出ようと一歩踏み出すと、外にはいると思ってなかったりつの姿があった。
迎えに来てくれたんだ、嬉しい!って思ったのも束の間、楽しそうに談笑してる隣の男の子に視線を移せば、見たことのある顔…
そうだ、高校の時のあの後輩!?
なんで!?
俺とは距離を置いたのに、俺と離れてる間もアイツとは繋がってたのか…!?
そんな風にりつを疑い始めたらキリがなくて、談笑する二人から目を逸らすとじわじわと涙が溢れてきた。
「将吾?どうしたの?」
「やっぱ…ダメかも…っ」
怖気ずいた俺の後ろから、状況を確かめようと心が腕を伸ばし扉を大きく開けて前に出た。
すると…
「健太!?」
「おぅ、お疲れ」
「りつさんも…二人知り合い…?」
「うん、高校の時の…な?」
「おう」
「へぇ、じゃあ将吾も…?」
何で…!?どういう事!?
アイツと心は知り合いなのか!?
でも、だからってりつとアイツが繋がってる理由にはならない。
俺が三人の様子を伺いながらそおっと扉から顔を出すと、りつが何食わぬ顔してこっちに向かって来るから、俺はそんなりつを突き放した。
「将吾っ、俺さ…っ」
「なんでっ?なんでこいつとお前が今でも一緒にいんだよっ!」
「いや、それより俺の話聞いて…っ!」
「それより…っ!?俺のことは切ったくせに、こいつとはずっと連絡取ってたって事…っ!?適当に誤魔化すなよ!」
「違う!さっきたまたま会っただけで…っ」
「嘘つきっ…」
「嘘じゃねぇって、信じてよ!」
「は…?俺の事疑ったくせに…っ、自分の事は信じろって言うの?」
「…っ」
当然だよな?そんな都合のいい話あるわけないだろ?
もう本当も嘘もりつの事も、りつの考えてる事も全部わかんないっ。
俺は自分の呼吸が乱れてることにも気が付かないくらい頭の中がぐちゃぐちゃで、揉め始めた俺らの間に慌てて入ってきた心に背中を摩られて、初めて苦しいって事に気が付いた。
「なにっ!?どうしたんだよ二人とも…っ」
「はぁっ…はぁっ…」
「仲直りするんじゃなかったのかよ…っ、りっちゃん」
「そのつもりだったよっ、けどこんなんじゃ話になんないから一旦落ち着けて…っ」
あぁそうか、二人でそうやって俺の話してたんだな…
どうしたらいいかって、りつはあいつに相談してたんだ。
そんなこと話せるくらい仲良かったんだな。
こんなん…か、そうだよな、話になんねぇよなこんな俺じゃ。
次から次へとネガティブな思考ばかりが浮かんできて、俺はもうりつの事が信じられなくなって、ついに最終手段に出てしまった。
「将吾…っ、取り敢えず帰ろ?な?」
「はぁ…っ、いやだっ、帰らない…っ」
「もぉっ、これ以上心配させないでよ…っ」
心配…?だったら俺を独りにしないでよ―――
「もう…いい、はぁ…っ、もう、りついらないっ…!」
そう言い放って俺は宛もなく、とにかく歩き出した。
行先なんてない、だけどこの場にいたくなくて足を前に出すけど、苦しくて涙で前が見えなくて直ぐに手を捕まれた。
「将吾っ!」
「はぁっ、は…なせ…っ」
だけど、そんな俺の手を掴んだのはりつではなく心だったんだ…
「待って!どこ行くの!?」
「どこでもいいだろ!?心には関係ないっ!」
「ダメっ、俺は将吾を独りにはさせないっ」
「心…っ」
なんで…
なんで俺の欲しい言葉をくれるのは、りつじゃなくて心なんだよ。
心が俺を引き止めなかったら、りつは俺を引き止めてくれた?
呆然と立ち尽くすだけのりつと目が合うと、りつは俺から目を背けた…
あ…もうダメなんだ…もう、戻れない…
そんなりつの姿に心はすかさず宣戦布告した。
「りつさん、将吾は俺が連れて帰ります」
「心っ、お前…っ、なぁりっちゃん!黙ってないで止めろよっ!なぁって!」
健太がりつを揺さぶっても、りつは動こうとはしなかった。
俺はきっと、また捨てられたんだ。
今度こそ、今度こそはお前の事なんて忘れてやる!
りつなんて大っ嫌いだ!!
それを悟られないようにと動いていたつもりだったのに、流石の心くんはそんな俺を見てすかさず声をかけてくる。
「将吾…大丈夫?」
「ん?何が?」
「昨日ちゃんと家帰れたの?」
「あ…うん、帰ったよ」
「わだかまりは取れた?」
「…うん」
そんな俺の嘘を困った顔で眺める心…
一晩一人で過ごしてみてわかったのは、やっぱり独りは寂しいって事。
だからと言って誰でもいいって訳ではなくて、やっぱり俺にはりつが必要なんだって、改めて感じたんだ。
だから、朝になって数件の着信があった事にホッとしたのも確かで、何も言わずに拗ねた自分も悪かったと反省して、今日はちゃんと帰って謝ろうと思ってた。
バイトが終わる頃、いつもだったらりつが迎えに来てくれるはずだけど、さすがに今日は来ないと思って一人で帰ろうと裏口から出ようとすると、後ろからそっと腕を掴まれた。
「将吾…っ」
「心?」
「送ってくよ…」
「でも、お前まだバイト…」
「店長が休憩ってことなら良いって、りつさん来てないんだろ?」
心のその言葉に胸が痛んだ。
りつは来ない、要するに仲直りはできてないし、帰ったところで上手くいくかも分からないって状況を心に既に見抜かれてる。
返す言葉もない俺の手を握る心は、ふわっとした優しい顔で俺を見つめる…
「うち、来る…?」
その一言に一瞬気持ちが揺らいだ。
だけどこのままズルズル喧嘩したまま心の家になんて行ったら、取り返しがつかなくなる。
一先ず家に帰ってりつに謝らなきゃ…
「ううん、帰るよ。取り敢えず帰る…」
「そっか、わかった。なら送ってく」
そう言って裏口から出ようと一歩踏み出すと、外にはいると思ってなかったりつの姿があった。
迎えに来てくれたんだ、嬉しい!って思ったのも束の間、楽しそうに談笑してる隣の男の子に視線を移せば、見たことのある顔…
そうだ、高校の時のあの後輩!?
なんで!?
俺とは距離を置いたのに、俺と離れてる間もアイツとは繋がってたのか…!?
そんな風にりつを疑い始めたらキリがなくて、談笑する二人から目を逸らすとじわじわと涙が溢れてきた。
「将吾?どうしたの?」
「やっぱ…ダメかも…っ」
怖気ずいた俺の後ろから、状況を確かめようと心が腕を伸ばし扉を大きく開けて前に出た。
すると…
「健太!?」
「おぅ、お疲れ」
「りつさんも…二人知り合い…?」
「うん、高校の時の…な?」
「おう」
「へぇ、じゃあ将吾も…?」
何で…!?どういう事!?
アイツと心は知り合いなのか!?
でも、だからってりつとアイツが繋がってる理由にはならない。
俺が三人の様子を伺いながらそおっと扉から顔を出すと、りつが何食わぬ顔してこっちに向かって来るから、俺はそんなりつを突き放した。
「将吾っ、俺さ…っ」
「なんでっ?なんでこいつとお前が今でも一緒にいんだよっ!」
「いや、それより俺の話聞いて…っ!」
「それより…っ!?俺のことは切ったくせに、こいつとはずっと連絡取ってたって事…っ!?適当に誤魔化すなよ!」
「違う!さっきたまたま会っただけで…っ」
「嘘つきっ…」
「嘘じゃねぇって、信じてよ!」
「は…?俺の事疑ったくせに…っ、自分の事は信じろって言うの?」
「…っ」
当然だよな?そんな都合のいい話あるわけないだろ?
もう本当も嘘もりつの事も、りつの考えてる事も全部わかんないっ。
俺は自分の呼吸が乱れてることにも気が付かないくらい頭の中がぐちゃぐちゃで、揉め始めた俺らの間に慌てて入ってきた心に背中を摩られて、初めて苦しいって事に気が付いた。
「なにっ!?どうしたんだよ二人とも…っ」
「はぁっ…はぁっ…」
「仲直りするんじゃなかったのかよ…っ、りっちゃん」
「そのつもりだったよっ、けどこんなんじゃ話になんないから一旦落ち着けて…っ」
あぁそうか、二人でそうやって俺の話してたんだな…
どうしたらいいかって、りつはあいつに相談してたんだ。
そんなこと話せるくらい仲良かったんだな。
こんなん…か、そうだよな、話になんねぇよなこんな俺じゃ。
次から次へとネガティブな思考ばかりが浮かんできて、俺はもうりつの事が信じられなくなって、ついに最終手段に出てしまった。
「将吾…っ、取り敢えず帰ろ?な?」
「はぁ…っ、いやだっ、帰らない…っ」
「もぉっ、これ以上心配させないでよ…っ」
心配…?だったら俺を独りにしないでよ―――
「もう…いい、はぁ…っ、もう、りついらないっ…!」
そう言い放って俺は宛もなく、とにかく歩き出した。
行先なんてない、だけどこの場にいたくなくて足を前に出すけど、苦しくて涙で前が見えなくて直ぐに手を捕まれた。
「将吾っ!」
「はぁっ、は…なせ…っ」
だけど、そんな俺の手を掴んだのはりつではなく心だったんだ…
「待って!どこ行くの!?」
「どこでもいいだろ!?心には関係ないっ!」
「ダメっ、俺は将吾を独りにはさせないっ」
「心…っ」
なんで…
なんで俺の欲しい言葉をくれるのは、りつじゃなくて心なんだよ。
心が俺を引き止めなかったら、りつは俺を引き止めてくれた?
呆然と立ち尽くすだけのりつと目が合うと、りつは俺から目を背けた…
あ…もうダメなんだ…もう、戻れない…
そんなりつの姿に心はすかさず宣戦布告した。
「りつさん、将吾は俺が連れて帰ります」
「心っ、お前…っ、なぁりっちゃん!黙ってないで止めろよっ!なぁって!」
健太がりつを揺さぶっても、りつは動こうとはしなかった。
俺はきっと、また捨てられたんだ。
今度こそ、今度こそはお前の事なんて忘れてやる!
りつなんて大っ嫌いだ!!
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