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第一章 出会いと再会
まだ好きだから
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りつの家を出たって行くところなんか俺にはなくて、寒空の下独り街をとぼとぼと歩く。
りつ、本当に毎日忙しそうだった…
仕事だって信じてたし、りつに限って浮気だなんてそんな事はないって思ってたけど、仕事が仕事なだけにその不安は拭いきれなかった。
そんな中訪れた久々の連休。
本当に楽しみにしてたのに、そんな俺には目もくれず、りつは早く寝ちゃうし起きてきてもゲームばっか。
自分で気分を切り替えようと外に出ただけなのに、たまたま会っただけの心との事を疑われてさすがに我慢の限界だった。
俺がりつを想う気持ちに比べたら、りつの俺への気持ちなんてそうでもなくて、もしかしたらもう俺なんかより好きな人でもいるのかもしれない。
そうじゃなかったとしてもりつはもう、俺の事なんてきっとどうでもいいんだ…
そう思うと寂しくて悲しくて、じわっと溜まっていく涙が流れ落ちそうになるのを立ち止まり空を見上げながら必死に耐えた。
「将吾……?」
その優しい声に振り返ると同時に、涙がほろりと流れ落ちる。
俺は慌てて涙を拭いなんでもないような顔をしたつもりだったのに、彼は俺の顔を覗き込み拭いきれなかった涙をそっと指で拭った。
「どうした!?何があったの!?」
心―――
お前はなんで助けて欲しいと思った時に俺の前に現れるの?
なんでもないって言いたいのに、心の顔を見たら我慢してた涙が溢れてきて、心の指を濡らした。
「心…っ、俺っ…」
助けてって言いたいけど言えないっ。
今心に助けを求めたら、りつを裏切ることになる…
そんなことになったら、今度ばかりは本当に愛想尽かされてしまうかもしれない。
どんなに心が優しくても俺の事を気にかけてくれていても、りつが俺のこと嫌いでも俺はまだ…
まだりつの事が好きだから、心に甘えるなんてできない。
「大丈夫…なんでもないから」
「俺が一緒にいたから?りつさんに怒られちゃった?」
「…心のせいじゃないから、ただ何となく噛み合わなかっただけ」
「そっか…本当に大丈夫?」
「うん、大丈夫…明日バイトだし、頭冷やしたら帰るから…」
「わかった…けど本当に辛くなったら言ってね?」
「ありがとう…心」
縋りたくなる気持ちをグッと抑え、心に別れを告げると再び街をフラフラと歩き出す。
着信は愚かメッセージすら来ない携帯を眺めると、最初に家を出た時のりつの反応とのあまりの違いに後戻り出来ないと悟り始める。
完全に突き放されてしまったのなら、易々と家に戻ることも出来なくて、もう今日は家に帰らずに一晩やり過ごそうと覚悟を決めて、コンビニで必要なものだけ揃えてネカフェへと向かった。
りつ、本当に毎日忙しそうだった…
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自分で気分を切り替えようと外に出ただけなのに、たまたま会っただけの心との事を疑われてさすがに我慢の限界だった。
俺がりつを想う気持ちに比べたら、りつの俺への気持ちなんてそうでもなくて、もしかしたらもう俺なんかより好きな人でもいるのかもしれない。
そうじゃなかったとしてもりつはもう、俺の事なんてきっとどうでもいいんだ…
そう思うと寂しくて悲しくて、じわっと溜まっていく涙が流れ落ちそうになるのを立ち止まり空を見上げながら必死に耐えた。
「将吾……?」
その優しい声に振り返ると同時に、涙がほろりと流れ落ちる。
俺は慌てて涙を拭いなんでもないような顔をしたつもりだったのに、彼は俺の顔を覗き込み拭いきれなかった涙をそっと指で拭った。
「どうした!?何があったの!?」
心―――
お前はなんで助けて欲しいと思った時に俺の前に現れるの?
なんでもないって言いたいのに、心の顔を見たら我慢してた涙が溢れてきて、心の指を濡らした。
「心…っ、俺っ…」
助けてって言いたいけど言えないっ。
今心に助けを求めたら、りつを裏切ることになる…
そんなことになったら、今度ばかりは本当に愛想尽かされてしまうかもしれない。
どんなに心が優しくても俺の事を気にかけてくれていても、りつが俺のこと嫌いでも俺はまだ…
まだりつの事が好きだから、心に甘えるなんてできない。
「大丈夫…なんでもないから」
「俺が一緒にいたから?りつさんに怒られちゃった?」
「…心のせいじゃないから、ただ何となく噛み合わなかっただけ」
「そっか…本当に大丈夫?」
「うん、大丈夫…明日バイトだし、頭冷やしたら帰るから…」
「わかった…けど本当に辛くなったら言ってね?」
「ありがとう…心」
縋りたくなる気持ちをグッと抑え、心に別れを告げると再び街をフラフラと歩き出す。
着信は愚かメッセージすら来ない携帯を眺めると、最初に家を出た時のりつの反応とのあまりの違いに後戻り出来ないと悟り始める。
完全に突き放されてしまったのなら、易々と家に戻ることも出来なくて、もう今日は家に帰らずに一晩やり過ごそうと覚悟を決めて、コンビニで必要なものだけ揃えてネカフェへと向かった。
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