こじらせ男子は一生恋煩い

桜ゆき

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第一章 出会いと再会

過保護

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最近不定期に出勤時間が変わるりつは、今日は俺よりも早く家を出たからか、既に仕事を終えてきたらしい。

最近新人が増えて色々大変だとは言ってたけど、俺を迎えに来ることだけは欠かさない。


「なぁ、マジでもう来なくていいって…」

「俺がしたくてしてんだからいいだろ?」

「そうかもしんないけど…今大変なんだろ?」

「ん、まぁ色々ね…」

「だったら俺に時間合わせなくてもいいから」

「何?来られちゃマズイ事でもあんの?」

「んな事言ってないじゃんっ!」


俺はりつのことが心配なだけ。
本当はそう言いたいけど、実際はそれだけじゃない。

バイト先の人に、いつも迎えに来てるあの人誰?とかあの人彼女いるの?とか聞かれていい加減対応に困っている。

彼氏だなんて言えないし、だからと言って友達だなんて適当な事言って、紹介してくれなんて言われたらそれも困るし、りつはカッコイイからそういう事も心配なんだ。

家に帰ると、すぐさまコンビニで買った弁当を広げ食べ始めるりつ。

元々食の細い俺は、疲れて食べる気にもなれず、最近では朝ごはんは愚か夕飯も殆ど食べることは無い。


「将吾ぉ…最近全然食べないじゃん。朝も食べてないし…昼は?食べたの?」

「食べてない…けどいらない…」

「ちゃんと食わないともたねぇぞ?ちょっとくらいさぁ…」

「いいって言ってんじゃんっ、疲れてんの!俺もう風呂入る!」

「あっ、おいっ!」


今日はバイトが休んで仕事量が多かったからマジで疲れてるだけなのに、前にも増してりつの過保護度が増している気がしてちょっと重たい…

まぁ色んなことがあって心配かけてんのは俺だから仕方ない事なんだけど、それにしても度が過ぎる。

とは言え、勢い余ってあんな言い方しちゃったて悪かったかな…
なんて少し反省しながら風呂から上がり、タオルで髪を拭きながらリビングに戻ると、さっきまでそこに居たはずのりつの姿がない…!?


「りつ…?」


呼んでも返事はないし、部屋中探してもりつの姿は見当たらない。

携帯が…ない、玄関には靴もない、慌てて携帯にかけても繋がらない。

もしかして、俺が来なくていいとか夕飯いらないとか、我儘ばっか言ってたから呆れていなくなった!?

しーんと静まり返る部屋に一人残されて、急に不安が押し寄せてきてどうしていいか分からなくなる。

どうしよう…なんで?りつ…どこ…っ?

考えれば考えるほど心臓が苦しくなって、どんどん鼓動が早くなって涙が溢れてくる。


「りつ…っ、はぁ…っ、どこ…っ、やだよぉっ、苦しいよっ、はぁっ…はぁっ…」


バスタオルを一枚巻いたままの姿でソファーの下に倒れ込み、必死に息を整えようとしても一向に苦しさが増すばかり。

苦しくてどうしようもなくて、頭がクラクラしてきたその時、玄関の扉が開く音がした。


「しょ…ご?将吾っ!!おいっ!!将吾大丈夫かっ!?おいっ!!」 

「はぁ、はぁ、りつ…っ、ごめんっ、ごめんなさいっ、もうっ…わがまま言わないからっ…はぁ、はぁ…どこにも行かないでっ…」


目の前に現れたりつの両腕に必死に縋り付くと、りつも俺をギュッと抱きしめてくれた。


「何言ってんだよ!どこにも行かねぇよ!行くわけねぇだろ?」

「はぁ…っ、だって…いなかった…はぁっ、出てきたらっ…いなかったぁ…っ」

「ごめんっ、ごめんって…飲み物買いに行ってただけだから…黙って出ていってごめんな…」

「りつ…っ、はぁっ、はぁ…」

「そんなに苦しまないでよ…俺っ、お前を苦しませてばっかじゃん…っ」


珍しく声を震わせて、俺の肩を掴みながら下を向いて、泣くのをこらえるりつを見た。

違う…りつは悪くない、ごめん…ごめんね…

でもその想いは苦しくて声にならない。

ちゃんと答えたいのに、呼吸をすることに必死で朦朧とする意識の中、出来ることをしなきゃと必死にりつの唇を塞いだ。 


「んっ、やめろって!苦しんだろ!?無理すんなよっ…やめ…っ、ん…っ」

「んっ、ん、はぁ…っ、やだっ」


言葉にならない代わりに俺は全身でりつが必要だと、りつが好きだと、りつが欲しいと訴える。

もうお前なしじゃ生きていけないから…


「ん…っ、わかった、わかったからもうやめて…っ、これ以上無理しないでっ…」


無理やり唇を引き剥がされると、かなり強めに腕の中に収められ、りつの匂いを肺いっぱいに取り込んで、少しずつ少しずつ落ち着きを取り戻す。


「…大丈夫か?」

「はぁ…ふぅ…んっ」

「ごめんな…」


背中をさすられながらまだ言葉に出来ない思いを、必死に首を横に振って伝える。

ごめんねって言わなきゃいけないのは、俺の方なのに…


「はぁっ、りつ…っ」

「将吾…」

「はぁ…っ、お願いっ…」


そんな寂しそうな顔しないでよ…

安心が欲しい、りつの肌に触れたい、りつと一つになりたい。

お願い…もう離さないで…

りつの頬に手を伸ばし、再びそっと口づける。
何度も何度も角度を変えて、りつの唇を喰らう…

次第に呼吸も落ち着いて唇を離し、おでことおでこをくっつけると洗いたての髪からぽたぽたと雫が滴り、羽織ってただけのバスタオルがはらりと床に落ちた。


「…っ、優しくできないかもしんないから…っ、今日は…」

「しなくていい…っ、だから、お願いっ…」

「…どうなっても知らないからなっ」

「ん…」


りつの言う通り、荒々しい口付けの後にソファーの上に押し倒されると、まだ少し火照る身体にりつの舌が這い回り、耳たぶを甘噛みされ胸の突起をキツく摘まれると、久しぶりの行為に思わず身震いし甘い声が漏れる…

首元から下へ下へと這うりつの舌がその突起を捉えると、ふわふわで綺麗な金髪に触れながら疼く身体と声を必死に抑える。


「んっ、う、ん…っ」

「はぁっ…平気…?」

「ん…っ」


するとりつの舌が右脇腹で一旦止まる…
そしてりつは顔を上げて左手で優しくそこに触れた。


「もうほとんどわかんねぇな…」

「ん…っ、そうだね…」

「あん時さ、俺…本当はすげぇビビってた…」

「そう…なの…?」

「うん、このまま将吾が死んじゃったらどうしようって…」

「それは…生徒として…?」

「んー、正直あの時は過去のトラウマと重なってさ、怖かったってのもあったかな…」

「そっか…」


そりゃそうだよな…

俺だってあの時はまだ、こんな風にりつの事好きになるなんて思ってなかった。

だけど俺にとってこの腹の傷は、俺がりつを少し特別に感じ始めたきっかけだった。

りつは誰よりも俺に優しくしてくれて、ずっとそばにいてくれたから…

りつがどういうつもりで俺に優しくしてくれてたのかは知らないけど、俺は凄く満たされてたんだ。


「でもさ、あっという間だった…」

「…なにが?」

「俺がお前を好きになるまで…」

「え…っ」

「好きだったよ…あの頃からずっと…」


あの頃から…ずっと…?
俺と同じ気持ちだったの…?

腹の傷に触れるりつの手にそっと触れると、りつの顔が近づき唇が触れる…

次第に舌が絡み合い傷に触れていたりつの手は下へと下りて、指先で鈴口から溢れ出る先走りを絡め取りながら、ゆっくりと硬く反り立つ俺のソレを撫で上げる。


「ん…ぁっ、りつ…っ」

「ん…?」

「俺も…っ、俺もずっと…あの頃からずっとりつの事好きだった…」

「…っ、将吾」


手を止め、眉間に皺を寄せ難しい顔をするりつに、俺は余計なことを言ってしまったのかと少し不安になり、りつの腕をぎゅっと握った。


「りつ…?」

「ごめん…余裕ないっ…////もういい…?」

「…うん///」


俺の返事に頬を緩めるりつに、さっきの表情の意味も同時に読み取れば、少し照れくさくなって思わず視線を逸らした。
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