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第一章 出会いと再会
嫉妬
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家に着いても未だに会話のない俺ら。
りつは無言で黙々と仕事に行く準備を始める。
一向に話しかけてもくれないりつに不安を抱き、俺から何となく視線を送るが、目すら合わせて貰えない。
黙って玄関に向かうりつが本当にそのまま何も言わずに出て行ってしまいそうで、俺はたまりかねてりつの背中にしがみついた。
「りつ…っ」
「なに…」
「怒ってる…?」
「別に…」
「じゃあなんでそんな冷たいの…っ」
背中を向けたまま項垂れたりつは、聞こえるか聞こえないか位の小さな声で呟いた。
「あいつの事…好きなの…?」
「えっ…」
「俺がお前と再会なんかしなけりゃさ…あいつと上手くやってたんだろ…?」
「違うっ…」
「やっぱり、俺なんかよりあーゆー方が…」
「違うって言ってんだろっ!!」
なんでこんなにも感情的になったのか、自分でも分からない。
だけど、りつに…俺の大好きなりつに【俺なんか】なんて言葉使って欲しくはないし、りつと再会してなかったとしても心に対して、あれ以上に深い関係なんか望んでなかった。
心とは恋人にはなれない、あくまで友達でいたかった。
それが俺の我儘だとしても、それで心を傷つけたとしても…
「じゃあなんでそんなに辛そうなんだよ…」
「心は…心は俺を助けてくれたから。俺の大事な友達なんだ…」
「本当に…友達…?」
「そうだよ…それ以上でも以下でもない…ただ…」
「ただ…?」
「体の関係は…あった」
内緒にしておくことだってできたと思う。
だけど俺にはそれが出来なかった…
りつと再会する前の話だし、どうせ拗れるくらいなら、いっそ言ってしまって心のモヤモヤを消したかった。
「友達なのに…か…?」
「俺が心を利用したんだ…気に入られてるのを良い事に、アイツが来る日に俺を指名するように頼んだ。それから何となく…ズルズルと…」
「そ…か…」
「あの日、りつに会った日はアイツが来る日じゃなかったんだっ、だから…」
「心は将吾の事が好きなんだな…」
「でも俺は…っ、りつが好きだから…俺なんかなんて言うな…っ」
「…ごめん」
再びの沈黙に胸が押しつぶされそうになる。
今日は離れたくない、そんな思いで必死にりつにしがみつくけど、りつは俺の手を掴みそっと解くと、俺の方を見ることなくドアノブに手をかけた。
「行かなきゃ…」
「…っ、俺だってっ!…俺だってりつが毎晩知らない男の相手するの嫌だっ!もし、相手が本気になったら…?りつが俺よりその人の事好きになっちゃったら…っ」
一番言っちゃいけないことを口走ってしまったと思う…
りつは仕事と割り切ってるって分かってるし、今その仕事が俺らの生活を支えてくれてることだって分かってる。
俺の勝手なわがままで振り回しちゃいけないって思ってたからずっと我慢してたけど、今日だけは我慢できなかった。
りつが俺以外の人となんて、考えるだけで吐き気がする。
それに、感情なんて状況次第で簡単に動いてしまうことがあるって、自分が身をもって知ってしまったから…
涙が一粒流れ落ちるとそこから一気に胸が苦しくなって、溢れてくる様々な感情を抑えきれずその場にしゃがみ込んだ。
「…っ、う、ぐ…っ、はぁっ、はぁ…っ」
「将吾っ!?」
苦しい…苦しいよ…っ
せっかく大好きな人と再会して一緒にいることが出来たのに、なんでこんなに苦しいの?
また俺を置いて離れて行っちゃうの!?
そう思ったら余計に上手く息が出来なくなってどんどん目の前が暗になって暗闇に引きずり込まれて行った―――
ぼやけた意識の中でりつの優しい声が聞こえてくる…
俺はその声に従ってゆっくりゆっくりと呼吸を整えながら、少しづつ視界が広がると目の前のりつにすがりついた。
「いなく…ならないで…っ」
「将吾…っ」
「はぁ…はぁ…っ、一人に…しないでっ…」
りつは無言で黙々と仕事に行く準備を始める。
一向に話しかけてもくれないりつに不安を抱き、俺から何となく視線を送るが、目すら合わせて貰えない。
黙って玄関に向かうりつが本当にそのまま何も言わずに出て行ってしまいそうで、俺はたまりかねてりつの背中にしがみついた。
「りつ…っ」
「なに…」
「怒ってる…?」
「別に…」
「じゃあなんでそんな冷たいの…っ」
背中を向けたまま項垂れたりつは、聞こえるか聞こえないか位の小さな声で呟いた。
「あいつの事…好きなの…?」
「えっ…」
「俺がお前と再会なんかしなけりゃさ…あいつと上手くやってたんだろ…?」
「違うっ…」
「やっぱり、俺なんかよりあーゆー方が…」
「違うって言ってんだろっ!!」
なんでこんなにも感情的になったのか、自分でも分からない。
だけど、りつに…俺の大好きなりつに【俺なんか】なんて言葉使って欲しくはないし、りつと再会してなかったとしても心に対して、あれ以上に深い関係なんか望んでなかった。
心とは恋人にはなれない、あくまで友達でいたかった。
それが俺の我儘だとしても、それで心を傷つけたとしても…
「じゃあなんでそんなに辛そうなんだよ…」
「心は…心は俺を助けてくれたから。俺の大事な友達なんだ…」
「本当に…友達…?」
「そうだよ…それ以上でも以下でもない…ただ…」
「ただ…?」
「体の関係は…あった」
内緒にしておくことだってできたと思う。
だけど俺にはそれが出来なかった…
りつと再会する前の話だし、どうせ拗れるくらいなら、いっそ言ってしまって心のモヤモヤを消したかった。
「友達なのに…か…?」
「俺が心を利用したんだ…気に入られてるのを良い事に、アイツが来る日に俺を指名するように頼んだ。それから何となく…ズルズルと…」
「そ…か…」
「あの日、りつに会った日はアイツが来る日じゃなかったんだっ、だから…」
「心は将吾の事が好きなんだな…」
「でも俺は…っ、りつが好きだから…俺なんかなんて言うな…っ」
「…ごめん」
再びの沈黙に胸が押しつぶされそうになる。
今日は離れたくない、そんな思いで必死にりつにしがみつくけど、りつは俺の手を掴みそっと解くと、俺の方を見ることなくドアノブに手をかけた。
「行かなきゃ…」
「…っ、俺だってっ!…俺だってりつが毎晩知らない男の相手するの嫌だっ!もし、相手が本気になったら…?りつが俺よりその人の事好きになっちゃったら…っ」
一番言っちゃいけないことを口走ってしまったと思う…
りつは仕事と割り切ってるって分かってるし、今その仕事が俺らの生活を支えてくれてることだって分かってる。
俺の勝手なわがままで振り回しちゃいけないって思ってたからずっと我慢してたけど、今日だけは我慢できなかった。
りつが俺以外の人となんて、考えるだけで吐き気がする。
それに、感情なんて状況次第で簡単に動いてしまうことがあるって、自分が身をもって知ってしまったから…
涙が一粒流れ落ちるとそこから一気に胸が苦しくなって、溢れてくる様々な感情を抑えきれずその場にしゃがみ込んだ。
「…っ、う、ぐ…っ、はぁっ、はぁ…っ」
「将吾っ!?」
苦しい…苦しいよ…っ
せっかく大好きな人と再会して一緒にいることが出来たのに、なんでこんなに苦しいの?
また俺を置いて離れて行っちゃうの!?
そう思ったら余計に上手く息が出来なくなってどんどん目の前が暗になって暗闇に引きずり込まれて行った―――
ぼやけた意識の中でりつの優しい声が聞こえてくる…
俺はその声に従ってゆっくりゆっくりと呼吸を整えながら、少しづつ視界が広がると目の前のりつにすがりついた。
「いなく…ならないで…っ」
「将吾…っ」
「はぁ…はぁ…っ、一人に…しないでっ…」
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