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第一章 出会いと再会
りつの過去
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電話越しに将吾の様子がおかしいことに気が付いた俺は、とにかく将吾のバイト先に向かった。
そして途中から将吾の返事が無くなると、異変に気が付いてくれた人が、将吾の電話に出て事情を説明してくれて、俺はその場に駆けつけて一緒に病院へ向かう事が出来た。
将吾を病院に連れていくのはこれが三度目…
将吾の苦しむ姿を見る度、胸が苦しくなり昔の記憶までもが蘇ってくる。
このまま目を覚まさなかったら…
将吾に何かあったら…
だけど、そう思うと耐えられなかったあの頃と今の俺は違う。
俺はもう逃げない、将吾に何か起きないためにも何がなんでも俺が将吾を守る。
そう決めたんだ。
「将吾…バイト…辞めない?」
「…辞めないっ、バイトは辞めたくない…っ」
「お金の事なら心配しなくていいから…」
俯いたまま首を横に振る将吾。
お金以外にバイトを辞めたくない理由があるとしたら、やっぱりあの後輩…だろうか。
「もっと家の近くでやるとかさ…」
「そんなに簡単に変えられない…っ、大丈夫…だから…」
「そんなにあのバイトがいい…?」
「別に…そういうんじゃ…」
今この状態でする話じゃないか…
と思い直してどうしたら外に出しても将吾を守れるか、そのことだけを考えた。
相手がリーマンなら昼間はまぁ大丈夫だろう、問題は夜だ。
「じゃあさ、毎日迎えに行くよ」
「お前だって仕事だろ…」
「んなもんどうにでもなるから、心配すんな…やりたいんだろ?バイト…」
「…うん」
「じゃあそうしよ」
「でも…っ」
「俺がそうしたいの」
もう後悔だけは絶対したくないんだ。
あの時、本当はもっと何かできたんじゃないかって…
あの子を守るためにもっと必死になれば、もっとがむしゃらに動けたんじゃないかって…
将吾とサヨナラした時だってそう。
俺がもっと強ければ、将吾に悲しい思いも辛い思いもさせずに済んだのかもしれない。
こんなに遠回りしなくたって、守ることが出来たのかもしれないって。
「聞いて…将吾…」
「…何?」
「俺の話…」
「加野っちの…?」
「うん…多分将吾には話した事ない話…」
そして俺は、将吾の頭を撫でながら将吾の知らない昔の俺の話をした。
養護教諭として働き始めて暫く経った頃、女子生徒と付き合ってた事、その彼女の生い立ち、そして最期。
この事をきっかけに養護教諭を辞めた事、生徒と深い関係になるのが怖かった事、なのに将吾の事がどんどん大切になって大切になればなるほど怖くなって、だからあの事故の後俺はお前の前から姿を消した事。
将吾の反応からして、やっぱり隼人は話さなかったんだな。
今となっては、話さないでいてくれて良かったって思う。
こんな情けない俺を知ったら、再会してもこんな風に一緒にいることを選んでくれなかったかもしれないから…
「ごめんな、将吾…俺、お前から逃げたんだ」
「いらなくなったから…捨てたのかと思ってた…」
「守れる力があったら守ってやりたかったし、一緒にいたかった。本当に好きだったから…だけどあの時は怖かったんだ。でも今は違う、もう二度と逃げたりしないから。絶対お前を守るから…」
「俺だって…俺だってあの頃みたいに子供じゃねぇから…っ、守られてばっかじゃ嫌だもん…っ」
「将吾…」
「好きだから…俺もりつの事、本当に好きだから…守りたい…っ」
ねぇ、将吾…
いつの間にそんなに強くなったの?
だけどね、俺にとってお前はまだまだ危なっかしい子供だし、それに俺の大事なもんだから、もう二度と誰かに傷つけられたりして欲しくないの。
だから、何があっても俺が将吾を守るから…
そして途中から将吾の返事が無くなると、異変に気が付いてくれた人が、将吾の電話に出て事情を説明してくれて、俺はその場に駆けつけて一緒に病院へ向かう事が出来た。
将吾を病院に連れていくのはこれが三度目…
将吾の苦しむ姿を見る度、胸が苦しくなり昔の記憶までもが蘇ってくる。
このまま目を覚まさなかったら…
将吾に何かあったら…
だけど、そう思うと耐えられなかったあの頃と今の俺は違う。
俺はもう逃げない、将吾に何か起きないためにも何がなんでも俺が将吾を守る。
そう決めたんだ。
「将吾…バイト…辞めない?」
「…辞めないっ、バイトは辞めたくない…っ」
「お金の事なら心配しなくていいから…」
俯いたまま首を横に振る将吾。
お金以外にバイトを辞めたくない理由があるとしたら、やっぱりあの後輩…だろうか。
「もっと家の近くでやるとかさ…」
「そんなに簡単に変えられない…っ、大丈夫…だから…」
「そんなにあのバイトがいい…?」
「別に…そういうんじゃ…」
今この状態でする話じゃないか…
と思い直してどうしたら外に出しても将吾を守れるか、そのことだけを考えた。
相手がリーマンなら昼間はまぁ大丈夫だろう、問題は夜だ。
「じゃあさ、毎日迎えに行くよ」
「お前だって仕事だろ…」
「んなもんどうにでもなるから、心配すんな…やりたいんだろ?バイト…」
「…うん」
「じゃあそうしよ」
「でも…っ」
「俺がそうしたいの」
もう後悔だけは絶対したくないんだ。
あの時、本当はもっと何かできたんじゃないかって…
あの子を守るためにもっと必死になれば、もっとがむしゃらに動けたんじゃないかって…
将吾とサヨナラした時だってそう。
俺がもっと強ければ、将吾に悲しい思いも辛い思いもさせずに済んだのかもしれない。
こんなに遠回りしなくたって、守ることが出来たのかもしれないって。
「聞いて…将吾…」
「…何?」
「俺の話…」
「加野っちの…?」
「うん…多分将吾には話した事ない話…」
そして俺は、将吾の頭を撫でながら将吾の知らない昔の俺の話をした。
養護教諭として働き始めて暫く経った頃、女子生徒と付き合ってた事、その彼女の生い立ち、そして最期。
この事をきっかけに養護教諭を辞めた事、生徒と深い関係になるのが怖かった事、なのに将吾の事がどんどん大切になって大切になればなるほど怖くなって、だからあの事故の後俺はお前の前から姿を消した事。
将吾の反応からして、やっぱり隼人は話さなかったんだな。
今となっては、話さないでいてくれて良かったって思う。
こんな情けない俺を知ったら、再会してもこんな風に一緒にいることを選んでくれなかったかもしれないから…
「ごめんな、将吾…俺、お前から逃げたんだ」
「いらなくなったから…捨てたのかと思ってた…」
「守れる力があったら守ってやりたかったし、一緒にいたかった。本当に好きだったから…だけどあの時は怖かったんだ。でも今は違う、もう二度と逃げたりしないから。絶対お前を守るから…」
「俺だって…俺だってあの頃みたいに子供じゃねぇから…っ、守られてばっかじゃ嫌だもん…っ」
「将吾…」
「好きだから…俺もりつの事、本当に好きだから…守りたい…っ」
ねぇ、将吾…
いつの間にそんなに強くなったの?
だけどね、俺にとってお前はまだまだ危なっかしい子供だし、それに俺の大事なもんだから、もう二度と誰かに傷つけられたりして欲しくないの。
だから、何があっても俺が将吾を守るから…
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