こじらせ男子は一生恋煩い

桜ゆき

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第一章 出会いと再会

幸せ?それとも…

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次の日、自分の布団で目が覚めると目の前にはりつの寝顔があった。

昨日はりつの家で目覚めて、今日は俺の家にりつが居る。

何だか夢みたいだ…

あの頃、俺がどんなに頼み込んでも家にだけは行かせて貰えなくて、それでもたった一度だけ。

補導されて帰れなくなったあの日だけ、泊めてもらうことが出来たんだ。

そこで初めて繋がった…

帰りたくないって駄々こねて、結局次の日も居座って、あの日は本当に幸せだった。

こんな日がこの先も続くって、卒業したらまたあの家に呼んでもらえる日が必ず来るって思ってたのに、お前は俺の前から姿を消したんだよな…

電話は繋がらないしもう会えない、帰ってこないって分かってたけど、それでも俺は卒業式の日、お前のあの家まで行ったんだ。

もちろん、既にもぬけの殻だったけどさ…

あの時悟ったよ、誰も俺を必要とはしてくれないんだって。

加野っちも、都合のいい時だけ俺を利用して要らなくなったら捨てたんだって。

本当は信じたかったけど、俺には好きな人から離れるなんて理解できなかったから。

だから忘れようって、もう加野っちの事、想い出、全部忘れてしまおうって、あの時思ったんだ。

だけど今、あの時忘れた人が目の前にいる…

日に透ける長いまつ毛、あの時の俺とよく似た色の髪、ぷっくりとした唇に伸びてきた髭…
全部俺の元に帰ってきた。

だけど、いつかまたいなくなっちゃうんだろ?
俺を…俺を一人残して…っ。

再会出来た喜びよりも、失うかもしれない事の恐怖の方が大きくて、俺は思わず寝ているりつにしがみついた。


「…んぅ、将吾…?どぉした?」

「行かないでっ…」

「…どこにも行かないよ?」

「俺を…っ、一人にしないで…っ」

「しないよ…ずっと一緒にいよう…な?」

「約束…してくれる…っ?」

「あぁ…約束」

「俺の事…っ、好き…?」

「うん…好き…大好き」


りつの腕の中で抱きしめられると次第に落ち着きを取り戻し、暖かくてまたまぶたが閉じていく…

だけど、俺はこの幸せに浮かれすぎて忘れてたんだ。
自分の置かれている環境の厳しさを…

そして、傷付けた彼の存在を―――
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