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第一章 出会いと再会

友達?それとも…

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あれから例の件をスタッフに相談して、一先ず曜日を変えてもらって対応して貰える事になった。

だからといって回避出来たわけじゃないし、またいつアイツが来て指名してくるかなんて分からない。

今日のところは休みになったけど、こっちの問題も山積みだ。

心は相変わらず俺に懐いてくるけど、あれから一切あの日の事や店の事に触れてこなくなったから、普通の関係に戻ってくれたのかと思って完全に油断していた。


「将吾?」

「ん?なに?」

「今日バイト…だよね?」

「あぁ、曜日変えてもらった。最初からそうすれば良かったんだよな。ほんと、巻き込んでごめんな…」

「ううん、なら良かった!じゃあ、今日は休み?」

「あ、うん…」

「たまには一緒にご飯でもいかない?」

「あぁ…うん」


休みって言っちゃったし、断る理由もなく何となくOKしてしまったものの、二人でご飯なんてちょっと不安だ…

大丈夫かな?俺…。


「何食べる?他の居酒屋とかでいいかな?」


ガシッと肩に手を回され、少し高い位置から嬉しそうに笑いかけてくるこいつの可愛さにどうしても慣れない。

あんな事があったのに、まだこんなに懐いて来るって事はやっぱり本当に俺、気に入られてる…?

こんな状態で酒なんか入ったら…


「ねぇ、酒飲むの?」

「久しぶりだし、いいじゃん!」

「うーん…」

「今日はとことん付き合ってもらうからね?」

「なんだよそれ…」

「だって俺の事利用したんだろ?だったら今度は俺の番!だろ?」

「それは…っ、そうだけど…」

「ふふっ、交渉成立!」


居酒屋に行くとテーブル席を通り抜け、何故か奥の個室に通された。

こんな誰の目にも振れないような空間で二人きりなんて…


「なぁ、別に個室じゃなくても良くね?」

「俺うるさいの苦手なんだよね~」

「ふぅん…」

「嫌だった…?」

「いや…別に…」

「…あ、ほら何か頼もう?」

「うん…」


一瞬目線を下げて寂しげな表情を見せた心、はまたすぐに笑顔に戻った。

表情一つ一つがなんか胸につっかえて落ち着かない…

俺はとにかくあまり飲み過ぎないように、気持ちを持ってかれないように、緊張感を持って接する事を心がけた。

なのに…


・・・・・


「ねぇーしょーごぉ?全然飲んでないー!」

「お前、飲みすぎなんだよ」

「しょーごが飲まなすぎ!ほら、これ全部空けて?」

「…っ、やだよっ」

「んーっ、じゃあ俺また店行くよ?」

「は?もう来るなって言ったろ?」

「じゃあ飲んでぇ~」

「なんだよそれ…俺は俺のペースで飲むからほっとけよっ…」


心は、ハイペースでジョッキを次々と空けていく。

俺は元々酒も強くないし、ここで正気を失ったら自分がどうなるかも分からないから、酒に飲まれないように、なるべく飲まないようにしてたのに。

「じゃあ俺が飲ませてあげる~」

「わっ!もぉ、心っ!」


酔っ払った心に並々入った焼酎を持たされ無理やり口に流し込まれて、飲みきれなかった酒が溢れて首から胸元までビショビショ…


「あ~ごめ~ん…」

「なんかデジャブ…」

「ははっ、確かに!」

「あ、そういやあん時のTシャツ返してねぇな?」

「別にいつでもいいよぉ?」

「…てかお前さ、もしかしてワザと…」

「あーほらぁ、拭くから手どけて?」

「うん…」


襟元から胸元にかけて、心がお手ふきで拭いてくれる…

ふっと見上げると、酔っ払ってる心の顔が目の前にあって、ドキッと胸が高鳴った。


「…っ、心…近い…」

「いいじゃん…」

「…っ、もう自分でやるからあっちいってっ!」

「…やだよ」

「え?」

「やだ…」


そう呟いた心はテーブルに置いてあった焼酎を口に含むと、俺の肩を掴み唇を重ね、一気に口の中に流し込んだ。


「んぐっ!?ゴクッ、はぁっ、おま…っ!何すんだよっ!!」

「全然飲んでくんないからさ?」

「そぉじゃなくて!!」

「そぉじゃなくて…何?」

「うっ、いや…」

「じゃあもう一口…ね?」


一気に流し込まれた酒のせいなのか、急にキスなんかされたからなのか、とにかく頭がグワングワンする…

そして、心にされるがまま、また二口目を流し込まれた。

酒が弱い俺はそれだけでもうフラフラ…

心が一生懸命何か話しかけてくるけど、もう何だかよく分からないしこれ以上無理…

心ももうそんな俺に飽きたのか、帰りの準備をし始めた。


「そろそろ帰ろっか…?服びちょびちょだし…」

「んぅ…」


こんなに酔わされて、もしかして押し倒されでもするんじゃないかと警戒してたのに、案外あっさりとお開きになった。

そして、お互い同じ方向に歩き出せば外は風がもうだいぶ冷たい。
こりゃ濡れた服のままじゃ風邪引くな…


「将吾んちもこっち?」

「うん…結構近く…」

「そうなんだ…」


そして、胃に不快感を感じながらも歩き出してから数分後…

込み上げてくるものに耐えられなくて、思わず心の服を掴んだ。


「ん…っ、ちょ…っ、待って…」

「ん?どうした?」

「吐く…っ」

「えーーー!!あぁっこっちこっち!」


道の端っこに寄ってしゃがみこむ俺の背中を、心が手を握りながらさすってくれる。

だから嫌だったのにぃ…
こんなダサい姿見られたくなかったな。


「大丈夫?」

「んぅ…っ」

「落ち着いたらちゃんと送るから…」

「ん…」


そこからの記憶はほぼない…
気がついたら俺は自分の家にいて、目の前には心配そうにペットボトルの水を抱えてる心がいた。
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