上 下
6 / 104
第一章 出会いと再会

約束の日

しおりを挟む
正直、行こうかどうか迷った…

だけど今後、バイト先でなんかあったら嫌だなと思い、指定されたファミレスに少し遅れて入っていくと、窓際の席から大きく手を振る彼の姿を見つけた。


「ごめん、待った?」

「ううん、今来たとこ!なんか頼みます?」

「あぁ、うん。ありがとう」


メニューを手渡されると、初デートかのように浮かれてる彼。

本当にコイツ大丈夫か?と思いながらそんな彼の態度をじっくりと観察する。

俺との時間が楽しみだったのか、それとも何かとんでもない事でも企んでいるのか…
彼の思惑がはっきりするまでは気が抜けない。


「ねぇ…さっきから何ニヤニヤしてんの?」

「え…っ?顔に出てました!?やぁ…恥ずっ…////」


本気で照れてる彼にこっちまで恥ずかしくなる…
見れば見るほどイケメンだし、女には不自由していなそうだが…

ジュースを注文し終わると無言の時間が流れ、若干気まずい雰囲気が流れ始める。

俺はちょっと緊張しながらも彼の出方を伺っていた。


「あ、あのぉ…時間作ってくれてありがとうございますっ」

「いや、別にそんな…」

「だって俺、ずっと話してみたかったんです!夏川くんと…」

「ふーん…変なの」


やっぱりなんか変わったヤツなんだ…と思いながらも、いつ本題を振られるのかと内心ドキドキしながら届いたジュースを一口飲んだ。


「夏川くんて、綺麗ですよね…」

「…っは?」 

「あっ、いや…初めて見た時からっ、その…綺麗な人だなぁって…思って…」


ぶっちゃけ可愛いとかなら言われたことあるけど、綺麗なんて言われたことなくてめちゃくちゃ恥ずかしい。

しかも相手は男だぞ…?

突然の事にどう返していいのか分からなくて、一旦冷静になろうと再びジュースに手を伸ばした。

一口飲んでから気持ちを落ち着かせると、再び警戒心を高めて気を引き締め直す。

やっぱり何かの勧誘か?

はたまたま気分を良くさせて、金貸してくれとかそういう類の話なのかもしれないし…


「あの…この前の事…なんだけど…」


キタ…

やっぱり揺すられるのか?
それとも彼もこっちに興味があったりするのか?

男の事を綺麗だとか…
そんなこと普通言わないもんな。


「夏川くんは…お客さん…?それとも…」 


あぁそうか、そうだよな?

店に入ったのを見られただけじゃどっちかわかんねぇもんな?

そういう趣味がある男、もしくはそこで働いてるボーイ。

…まぁどっちにしたってやることは同じだ、面倒だからここは正直に話して流れに任せてしまおう。


「俺はあそこのボーイ。要は掛け持ちであっちでもバイトしてんの」

「掛け持ち…えっと、ボーイって…」

「客の相手するって事」

「お、男の人の…?」

「うん、そうだけど…」


脳内で処理しきれないでいるのか、ぽかんと口を開けたままの彼。

そういやまだちゃんと名前も、知らないや…笑


「そのお仕事って…大変じゃないの…?」


あれ?もしかしてこいつ…
俺じゃなくて仕事の方に興味がある感じか!?

なら話は早い、教えられる事さっさと教えてもうこの話は終わりだ。


「お前さ、もしかしてこの仕事に興味あんの?」

「へっ?いや、違う違う!興味あるのは夏川くんでバイトの方じゃないっ…ってのもおかしいか…」

「ふふっ、まじで変なの」


俺に興味があるなんて、やっぱり変わってるやつだと思って思わず笑ってしまった。

人と話してて、笑ったのなんていつぐらいぶりだろう…

疑ってたような揺すりとか勧誘とかそんなんではなさそうで少し安心すると、こいつと少し話してみたい…
そんな気にもなってきた。
 

「ごめんなさいっ、なんか気持ち悪かな…俺」

「別に?俺、男からもモテるし、慣れてるし」

「あ、じゃあやっぱり…そのぉ…バイ、的な…」

「あぁ、うん。別に、男でも女でもどっちも同じじゃん?入れる穴が違うだけでさ?」

「ぶーっ!!」


当たり前の事を言ったつもりが彼にしてみたら衝撃的だったのか飲んでいたジュースを思いっきり吹き出しやがった。


「うわっ!お前飛ばすなよ!!」

「あーっごめんなさいっ!今拭きますぅ…っ」

「びっちょびちょじゃんっ!」

「あぁ、ほんとごめんなさい…あ、俺ん家すぐそこなんで服貸しますから来てくださいっ!」

「え?いいよ別にそこまで…」

「ダメですっ!このままじゃ帰せませんっ!」


帰せませんって…
やっぱり新手の勧誘かなんかなのか?

まぁ、もしそんなんだったら丁重にお断りして、今後一切関わらなければいいだけだ。

今回は取り敢えず様子見がてら、大人しく彼の家まで着いて行くことにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

とろとろ【R18短編集】

ちまこ。
BL
ねっとり、じっくりと。 とろとろにされてます。 喘ぎ声は可愛いめ。 乳首責め多めの作品集です。

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので

こじらせた処女
BL
 大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。  とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店

ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。

R18、最初から終わってるオレとヤンデレ兄弟

あおい夜
BL
注意! エロです! 男同士のエロです! 主人公は『一応』転生者ですが、ヤバい時に記憶を思い出します。 容赦なく、エロです。 何故か完結してからもお気に入り登録してくれてる人が沢山いたので番外編も作りました。 良かったら読んで下さい。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

処理中です...