こじらせ男子は一生恋煩い

桜ゆき

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第一章 出会いと再会

秘密の共有

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そして次の日…

いつものようにお昼すぎから居酒屋のバイト先に行くと、待ってましたと言わんばかりに例のバイトの彼が俺の行く先を遮り足を止めた。

まだ昼過ぎなのに今日はもういるのか?

大学生なんかに興味はないし、お友達を作るつもりもない俺は、いつも通り適当に彼をかわし、オープンまでの準備に取り掛かる…


「あの…っ」

「なに?」

「あの…俺昨日見ちゃったんすけど…」

「ん?何を?」

「夏川くんが…その…っ、怪しいお店に入っていくとこ…」

「怪しいっ…て、お前…っ、俺の事着けてたの?」

「いや、そんなつもり無かったんだけど、上がった後…その…方向がたまたま一緒で…ごめんなさい…っ」


まさか尾行までするとはね…

そこまで俺に興味があるのかそれとも、これをダシに揺さられたりすんのか…
なんて思ったりしたけど、別に俺はこの仕事に対してなんの偏見も後ろめたさも無いし、知られた所で俺にとってマイナスになることなんて特に何も無いから、まぁいいかと高を括る。

まぁ、ただここの居酒屋には居ずらくなるかもしんない…か。


「別にいいよ、隠してねぇし」

「え?そうなの?」

「うん、なんで?」

「や、そういうのって…隠したいものなのかなっ…て」

「別に…そんなのただの偏見だろ?」

「じゃあ、その…夏川くんってさ…男の子が好きなの?」

「いや?別に女も好きだよ?」

「女も、か…じゃあその…男の子も?」


こいつは本当に、俺の何をそんなに知りたいのか…

俺と関わったって面白いことも、何のメリットもないのに。


「てか、そんなこと聞いてどうすんの?」

「え?あ、いや俺…っ、夏川くんと仲良くなりたくて…っ」

「仲良く!?ははっ、変なの。俺と仲良くなっても別に良い事なんもねぇよ?」


俺より背は高いしイケメンだしモテそうなのに、なんで俺なんかに狙いを定めたんだろう…

俺と仲良くなりたいなんて、本当に物好きなやつがいたもんだな。

それともこいつもこっちの人間か?
そんな事を考えながらもこれ以上深堀されるのも面倒だと、彼から目を逸らしまた準備に取り掛かる。


「あっ、あの!」

「んだよ、まだなんかあんの?」

「今日も…予定…ある?」

「ん、まぁな…」

「じゃあ明日!明日、俺に時間くれませんか?」

「えっ、…まぁ、別に…いいけど…」

「ほんと?ありがとう!」


子供のように目をキラキラ輝かせ喜ぶ彼…
興味本位なのか何なのか知らないけど、どんどん質問をぶつけられた挙句、結局約束まで取り付けられてしまった。

思わずいいって言っちゃったけど、あんま関わりたくないなぁと思いながらも、誰かに必要とされるなんてどれくらいぶりだろう…
なんて思うと悪い気はしないし、その綺麗な笑顔にちょっとドキッとしてしまったのも事実…

うぅ…やっぱり変な奴っ!
これ以上何かを変えようとは思わないし、今の生活に満足してるから余計な感情は持ちたくないのに…っ。

お願いされると断れない性格上、グイグイ来るタイプに流されやすい俺は、こいつに特別な感情を抱いたりしないように、余計な興味を持たないように、湧き出してきた気持ちにそっと蓋をした。
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