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第二章 真実とは…
やっぱり好き(春人)
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無言のままタクシーで病院に向かい、手当をしてもらった。
お医者さんには、傷はすぐに塞がるけど暫く水仕事は無理だね。と言われ、お風呂も濡らさないように気をつけて。と説明されると、頭とかどうやって洗えばいいんだろう…なんて、どうでもいい疑問が浮かんだ。
待合室で会計を待つ間も、俺らの間に会話はない。
冬弥が気まずくなるのはわかる…
けど俺が気まずくなる必要は無いわけで、ここで何でもない顔してやっちゃたよ~なんて笑い飛ばせれば、冬弥にこんな辛そうな顔させなくて済むんだろうなとは思うんだけど、俺にそんな器用な事は出来なくて、ただ俯いて呼ばれるのを待つ。
そこに突然夏希が現れて、今さっきあった事、冬弥の無実が証明された事を逐一説明してくれた。
冬弥はやっぱりそうだろ?なんて言いながら、心底安心したようにほっと胸を撫で下ろしていたが、俺の気持ちは晴れなかった。
冬弥の元カノ…
それだけでモヤモヤしてたのに、実際に見ればそれなりの美人だったし、俺が冬弥に実ることの無い片思いしてる間にこの人は
、冬弥に愛されてたんだって思ったら胸が苦しくなった。
それに相手が男ってだけであんなに軽蔑されるのも、その事で冬弥が普通じゃないって思われるのも、俺には我慢できなかったんだ。
付き合っていくならこれから先もこの事は付きまとうわけだし、その度に傷付いてたら…
冬弥が変なこと言われたりしたら、俺は耐えられないかもしれない。
そして、病院からの帰り道…
俺の家と商店街との分かれ道で立ち止まり、俺は初めて口を開いた。
「病院…ありがとう。じゃあ…」
「や、待てよ…俺も行く」
「え…?」
「俺も家行く…ダメ?」
「だって…仕事は?」
「休む、もう今日は休む…っ」
嬉しい…けど本当に俺なんかでいいの?って、何かすごく申し訳ない気持ちでいっぱいなのに、今甘えたらもう絶対離れられなくなるから、今日はちょっとそっとしといて欲しい気もする。
黙ったまま俯く俺の人差し指を冬弥が掴んで、俺の反応を確かめるようにブラブラと揺らしてくる。
「なぁ…春人ぉ…」
「…ん?」
「もうやんなっちゃった…?俺の事…」
「…っ、んなわけ…ねぇだろ」
モヤモヤした気持ちが歯切れの悪い返事となって、余計に冬弥を困らせたかもしれない。
冬弥は俺の指を離して眉毛を下げ今にも泣きそうな顔で、俺にもたれ掛かるように抱きついてきた。
「ごめんな…俺、春人の事…傷つけてばっかだ…」
「別に…冬弥のせいじゃ…」
「気にしてんだろ…?あいつが言った事…」
「…っ、してねぇよ」
「俺は春人が好き…春人じゃなきゃヤダ…」
冬弥の俺を抱きしめる力が強くなるから、俺も冬弥の背中にそっと手を回す…
こんなところで恥ずかしいけど、暖かくて離れたくなくて冬弥の肩に頭を預ける。
俺だって…冬弥じゃなきゃ嫌だよ…
何でもない事ならすぐ口に出るのに、肝心な事はいつも飲み込んでしまう…っ
ちゃんと伝えなきゃ―――
俺は、冬弥の背中に回した腕にギュッと力を込めた。
「俺も…」
ちゃんと聞こえたかな…?
ゆっくり体が離れると、冬弥が優しく微笑んでくれてほっとする…
「じゃあ行っていい…?」
「うん」
何の躊躇もなく、俺の手を握り歩き出す冬弥。
俺が恥ずかしがるのを知ってか知らずか、寒みぃ…っなんて言ってそっぽを向きながら、握った手をさりげなくコートのポケットに突っ込んだりするから…
だから、冬弥への好きがどんどん溢れてくんだ…
お医者さんには、傷はすぐに塞がるけど暫く水仕事は無理だね。と言われ、お風呂も濡らさないように気をつけて。と説明されると、頭とかどうやって洗えばいいんだろう…なんて、どうでもいい疑問が浮かんだ。
待合室で会計を待つ間も、俺らの間に会話はない。
冬弥が気まずくなるのはわかる…
けど俺が気まずくなる必要は無いわけで、ここで何でもない顔してやっちゃたよ~なんて笑い飛ばせれば、冬弥にこんな辛そうな顔させなくて済むんだろうなとは思うんだけど、俺にそんな器用な事は出来なくて、ただ俯いて呼ばれるのを待つ。
そこに突然夏希が現れて、今さっきあった事、冬弥の無実が証明された事を逐一説明してくれた。
冬弥はやっぱりそうだろ?なんて言いながら、心底安心したようにほっと胸を撫で下ろしていたが、俺の気持ちは晴れなかった。
冬弥の元カノ…
それだけでモヤモヤしてたのに、実際に見ればそれなりの美人だったし、俺が冬弥に実ることの無い片思いしてる間にこの人は
、冬弥に愛されてたんだって思ったら胸が苦しくなった。
それに相手が男ってだけであんなに軽蔑されるのも、その事で冬弥が普通じゃないって思われるのも、俺には我慢できなかったんだ。
付き合っていくならこれから先もこの事は付きまとうわけだし、その度に傷付いてたら…
冬弥が変なこと言われたりしたら、俺は耐えられないかもしれない。
そして、病院からの帰り道…
俺の家と商店街との分かれ道で立ち止まり、俺は初めて口を開いた。
「病院…ありがとう。じゃあ…」
「や、待てよ…俺も行く」
「え…?」
「俺も家行く…ダメ?」
「だって…仕事は?」
「休む、もう今日は休む…っ」
嬉しい…けど本当に俺なんかでいいの?って、何かすごく申し訳ない気持ちでいっぱいなのに、今甘えたらもう絶対離れられなくなるから、今日はちょっとそっとしといて欲しい気もする。
黙ったまま俯く俺の人差し指を冬弥が掴んで、俺の反応を確かめるようにブラブラと揺らしてくる。
「なぁ…春人ぉ…」
「…ん?」
「もうやんなっちゃった…?俺の事…」
「…っ、んなわけ…ねぇだろ」
モヤモヤした気持ちが歯切れの悪い返事となって、余計に冬弥を困らせたかもしれない。
冬弥は俺の指を離して眉毛を下げ今にも泣きそうな顔で、俺にもたれ掛かるように抱きついてきた。
「ごめんな…俺、春人の事…傷つけてばっかだ…」
「別に…冬弥のせいじゃ…」
「気にしてんだろ…?あいつが言った事…」
「…っ、してねぇよ」
「俺は春人が好き…春人じゃなきゃヤダ…」
冬弥の俺を抱きしめる力が強くなるから、俺も冬弥の背中にそっと手を回す…
こんなところで恥ずかしいけど、暖かくて離れたくなくて冬弥の肩に頭を預ける。
俺だって…冬弥じゃなきゃ嫌だよ…
何でもない事ならすぐ口に出るのに、肝心な事はいつも飲み込んでしまう…っ
ちゃんと伝えなきゃ―――
俺は、冬弥の背中に回した腕にギュッと力を込めた。
「俺も…」
ちゃんと聞こえたかな…?
ゆっくり体が離れると、冬弥が優しく微笑んでくれてほっとする…
「じゃあ行っていい…?」
「うん」
何の躊躇もなく、俺の手を握り歩き出す冬弥。
俺が恥ずかしがるのを知ってか知らずか、寒みぃ…っなんて言ってそっぽを向きながら、握った手をさりげなくコートのポケットに突っ込んだりするから…
だから、冬弥への好きがどんどん溢れてくんだ…
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