実らない恋だと思ってたのに!?〜小さな天使は僕らの恋のキューピットだった♡〜

むらさきおいも

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第一章 舞い降りた天使

モヤモヤ

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あの後、勇気を振り絞って何度も電話してるのに出ない冬弥に、やっぱり何かあるんじゃないかと不安ばかりが募っていく。

そして、いても立っても居られずに冬弥の家に向かうと、その不安が的中したかのように冬弥の家の方から見覚えのある車が走ってきてすれ違った。

あれは千秋の車だ…なんで千秋が?
今の今まで一緒にいたってことかよ…
やっぱりあの後…何かあったんじゃないの?

そう思ったら会う事さえもしんどくなりそうで、電話に出ないのをいい事に引き返そうかと思ったその時、運悪く前から走ってきた冬弥に呼び止められた。


「春人っ!はぁっ、悪ぃバタバタしてて気付かなかったわ…」

「さっき千秋の車とすれ違ったけど…」

「あぁ、さっきまでここにいたから…」


さっきまでいた?何のために?何しに?

どんどんモヤモヤが増して、さっきの真相どころか今この状況でさえ辛くてどんどん胸が苦しくなっていく。

結局何も話さないまま冬弥の家に着いて部屋に入り、ベビーベットを覗き込むと…ゆきがいない…!?

一人、何食わぬ顔でベットに寝っ転がり携帯を眺めている冬弥にイライラして、ベビーベットを凝視したまま目も合わさずに呟いた…

「なぁ…ゆきは?」

「あぁ、暫く千秋の家で預かってもらう事になった」

「は…?なんで…?」

「俺一人じゃもう大変でさ…」

「いや、何で…?何で俺に相談しねぇんだよ…俺だって手伝える事あっただろ?なんで千秋なんだよっ…」

「いや、それはさっきたまたま声掛けてくれたから…春人にも話そうと思ったんだけどさぁ…」


あぁ、そっか。
俺が冬弥の大変さに気が付けてなかったんだ。

ずっと一緒にいたのに、俺の事ばっか気にして自分は大丈夫だって言い張って何も言わねぇから、俺はそれに甘えてただけなんだ。

けど、千秋は気が付いてたんだな…

自分が情けなくて悔しい、やっぱり千秋には勝てないっ―――


でもそれでも一言くらい欲しかったのに…


「何ですぐ言わねぇんだよ…」

「…っ、お前だって俺に話せない事あるんじゃねぇの?」

「は?なんの事だよっ…」

「さっき…店寄ろうと思ったけど…涼さんと真剣な話してたっぽかったから声掛けられなかった…俺には話せない事?」


は?涼二?
ぱっと思い出せなくて店での出来事をひたすら振り返り、帰りがけの事を思い出せば、あれはお前のせいだろっ?て喉まででかかったのを止めて別の言葉にすり替えた。


「あ、あれはっ!別に俺が話したくて話したんじゃねぇし!涼二が勝手におせっかい焼くから…っ」

「ふぅん…涼さんは春人の事何でもお見通しってわけかよ…」

「…っ、そんなこと俺に言われたって」


静まりかえる部屋に、重たい空気が二人の間にどんよりと流れていく。

これじゃ事の真相どころかどんどん変な方向に拗れて何しに来たのかわかりゃしないから、勇気を出して話を切り出した。


「あの…俺っ、さっき商店街で冬弥が千秋といるとこ見ちゃって、それで凹んで…涼二が気にしてくれただけだから…」

「商店街…?あ…っ」      

「何してたんだよ…」

「あん時たまたま千秋に会って…ちょっとしんどいって話ししたら千秋のママがゆきの事預かってくれるって言うから…」 

「…でもお前ら何か、距離…近かった」

「あれはっ…ちょっとフラついただけだからっ…相談しなかった事は謝る。でも俺、春人にちゃんと相談しようと思って店まで行ったんだよ?けど涼さんといたから入っていけなかった…ごめん」


ムクっと起き上がってベットの上に正座して、頭を下げて謝ってくる冬弥に免じてとりあえず許してやる事にした。


「いや、おれも疑ってごめん。でもたまにはさ、千秋より先に俺にも弱音吐いてよ…」

「うん…じゃあ、ちょっと…」

「うん…」

「春人…っ、おれ…」


そう言いかけた冬弥は、そのままベットの上に倒れ込んでしまった。


「え…っ、ちょっ、冬弥!?」

「…じゃない」

「えっ!?何!?」

「だぃじょぅぶじゃなぃ…みたい…」


聞こえないくらい小さな声で呟いた冬弥は、そのまま静かに目を閉じて意識を失ってしまった。


「冬弥!?冬弥ぁ!!」


声をかけても揺さぶっても反応のない冬弥に、俺は完全にパニックになってあの時の事が一瞬でフラッシュバックする…

冬弥に何かあったらどうしよう!!
怖くて怖くて涙が溢れて止まらない…
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