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第一章 舞い降りた天使
緊急事態(冬弥)
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いつものように上手い事言って客とキャストにガンガン酒を煽って、自分は程々にそこそこの売上を叩きだす。
ゆきが来てからというもの酔っ払って帰るわけに行かずあみ出した技だが、我ながらなかなかだと思ってる。
でも周りに気を使いながらの仕事も、そのうちボロが出そうだし
結構しんどい…
さっきから携帯がずっと震えてるのも分かってたんだけど、指名の客が機嫌を損ねては困るとタイミングを見計らって席を立ち、やっとの事電話を取ったのだ。
春人の様子からして今すぐ帰った方が良さそうなのは明確だけど、どう切り抜けようか…
ゆきの事が心配なのは当たり前だけど、それ以上に春人が心配でとにかく出来るだけ早く帰れるように、仕方なく事情を説明してその場を繋いでもらい、何とか店を出る事に成功した。
「遅くなってごめんっ、大丈夫か?」
「冬弥ぁっ…」
すぐにでも涙目の春人を抱きしめたい気持ちを抑え、まずゆきの様子を確認する。
泣き疲れたのか眠たそうにはしてるけど、少し苦しそうだしほっぺが真っ赤だ。
「熱計った?」
「ううん、体温計どこにあるかわかんないし…けど体熱くて」
「うん、具合悪いのかも…でもこんな時間に病院開いてないし朝まで様子見るしかないな…」
「朝まで?そんなにほっといて平気なの!?」
「うーん…とりあえず熱計ってみよ」
終始心配そうにゆきを見つめる春人…
ピピっと体温計が鳴り体温を確認すると、8度台と高めだけどウトウトと寝始めてるからまぁ大丈夫だろうと、とりあえず朝まで様子をみて明日病院に連れていく事にした。
「大丈夫かな…」
「まぁ大丈夫だろ…」
ゆきをベットに寝かせて、心配そうに覗き込む春人を後ろからギュッと抱きしめる。
「ゆきが寝てる間に俺らも寝とこ…体力持たねぇよ?」
「うん…」
ベットに入り向かい合い、春人の顔をよくよく見れば目が真っ赤…
そして俺の服をギュッ掴んで甘えてくるから、ほんと可愛くて仕方ない…
「仕事…大丈夫…?」
「あぁ…大丈夫大丈夫。気にすんな」
「ごめんっ、俺なんもわかんなくて…」
「いいのいいの!それに俺も心配だったし…」
「うん、赤ちゃんだし…心配だよな…」
真面目な顔して呟く春人に、俺は思わず吹き出した。
「ふはっ、俺が心配だったのは春人の方だわ」
「は?俺?」
「いや、ゆきの事だってもちろん心配だったよ?けど春人、今頃パニクってないかな?泣いてないかな?ってもうそればっか考えてたわ」
「…っ、んだよっ、子供扱いすんなっ」
「いいじゃん…負担かけて悪いなぁと思ってるしさ…」
「…んな事ないから」
「そぉ?」
「ん…」
俺の服を握ったまま眠くなってきたのか春人の瞼が段々閉じていき、握った手の力が抜けていってストンと落ちた。
俺もだいぶキツイけど、春人だって昼間仕事してきてからここに来てんだから負担も結構なもんだろうし、マジで春人にばっか頼ってらんないよな。
スヤスヤと寝息を立て始める春人の頭を撫でていると俺もだんだん眠くなってきて自然に瞼が閉じていく…
そして名残惜しいとばかりに遠のく意識に逆らい薄目を開けて春人の頬に触れながら顔を近づけると、唇に触れるだけのキスを落とした。
ゆきが来てからというもの酔っ払って帰るわけに行かずあみ出した技だが、我ながらなかなかだと思ってる。
でも周りに気を使いながらの仕事も、そのうちボロが出そうだし
結構しんどい…
さっきから携帯がずっと震えてるのも分かってたんだけど、指名の客が機嫌を損ねては困るとタイミングを見計らって席を立ち、やっとの事電話を取ったのだ。
春人の様子からして今すぐ帰った方が良さそうなのは明確だけど、どう切り抜けようか…
ゆきの事が心配なのは当たり前だけど、それ以上に春人が心配でとにかく出来るだけ早く帰れるように、仕方なく事情を説明してその場を繋いでもらい、何とか店を出る事に成功した。
「遅くなってごめんっ、大丈夫か?」
「冬弥ぁっ…」
すぐにでも涙目の春人を抱きしめたい気持ちを抑え、まずゆきの様子を確認する。
泣き疲れたのか眠たそうにはしてるけど、少し苦しそうだしほっぺが真っ赤だ。
「熱計った?」
「ううん、体温計どこにあるかわかんないし…けど体熱くて」
「うん、具合悪いのかも…でもこんな時間に病院開いてないし朝まで様子見るしかないな…」
「朝まで?そんなにほっといて平気なの!?」
「うーん…とりあえず熱計ってみよ」
終始心配そうにゆきを見つめる春人…
ピピっと体温計が鳴り体温を確認すると、8度台と高めだけどウトウトと寝始めてるからまぁ大丈夫だろうと、とりあえず朝まで様子をみて明日病院に連れていく事にした。
「大丈夫かな…」
「まぁ大丈夫だろ…」
ゆきをベットに寝かせて、心配そうに覗き込む春人を後ろからギュッと抱きしめる。
「ゆきが寝てる間に俺らも寝とこ…体力持たねぇよ?」
「うん…」
ベットに入り向かい合い、春人の顔をよくよく見れば目が真っ赤…
そして俺の服をギュッ掴んで甘えてくるから、ほんと可愛くて仕方ない…
「仕事…大丈夫…?」
「あぁ…大丈夫大丈夫。気にすんな」
「ごめんっ、俺なんもわかんなくて…」
「いいのいいの!それに俺も心配だったし…」
「うん、赤ちゃんだし…心配だよな…」
真面目な顔して呟く春人に、俺は思わず吹き出した。
「ふはっ、俺が心配だったのは春人の方だわ」
「は?俺?」
「いや、ゆきの事だってもちろん心配だったよ?けど春人、今頃パニクってないかな?泣いてないかな?ってもうそればっか考えてたわ」
「…っ、んだよっ、子供扱いすんなっ」
「いいじゃん…負担かけて悪いなぁと思ってるしさ…」
「…んな事ないから」
「そぉ?」
「ん…」
俺の服を握ったまま眠くなってきたのか春人の瞼が段々閉じていき、握った手の力が抜けていってストンと落ちた。
俺もだいぶキツイけど、春人だって昼間仕事してきてからここに来てんだから負担も結構なもんだろうし、マジで春人にばっか頼ってらんないよな。
スヤスヤと寝息を立て始める春人の頭を撫でていると俺もだんだん眠くなってきて自然に瞼が閉じていく…
そして名残惜しいとばかりに遠のく意識に逆らい薄目を開けて春人の頬に触れながら顔を近づけると、唇に触れるだけのキスを落とした。
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