実らない恋だと思ってたのに!?〜小さな天使は僕らの恋のキューピットだった♡〜

むらさきおいも

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第一章 舞い降りた天使

お名前は?

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鈍い痛みが腰を伝い夢から覚める…

薄目を開けつつ体を動かそうとするが、冬弥にガッチリホールドされ全く身動きが取れない。


「ん…っ、冬弥ぁ…?」

「…ん……?朝ぁ?」

「離して…」

「…やだ」

「苦しいっ…からっ…」

「じゃあちゅうしてくれたらいいよ?」

「なんだよっ…それっ…///」

「いいじゃんっ…ちゅ~っ」


冬弥の顔が近づいてきたその時、赤ちゃんがふにゃふにゃと
泣きはじめ、俺はやっと冬弥の束縛から開放された。


「あっ、そうだ。今日、海璃と楓が来るって」

「ふぅん」

「楓が赤ちゃん見たいって張り切ってるらしいぞ?」

「あいつ赤ちゃんとか好きなんだな」


まだ寝起きの頭で理解すると、冬弥が赤ちゃんを抱き上げリズム良く揺さぶるのを俺はただぼぉっと眺めていた。

そういえば…


「なぁ、この子名前ってどうなるの?」

「あ?そうだなぁ…付けてやんないと可哀想だよな?」

「でも、勝手につけていいもんなの?」

「さぁ…俺の時はどうしたんだろうな?」


どう答えていいかわからなくて思わず口をつぐむと、冬弥の手が俺の頭をポンポンと撫でた。


「別に気にしてねぇよ?」

「うん…」

「付けてやるか!名前!呼ぶだけなら別にいいだろ?」

「えっ、けど責任重大じゃない?」

「別に役所に届けるわけじゃないんだし」

「まぁ…そうだけど…」


そうだなぁ~とか言いながら、冬弥は思いついた名前を軽いノリでポンポン上げていく。


「あ、愛菜は?」

「は?お前それ俺の元カノだろっ…マジ最低っ」

「俺の元カノでもあるけど?結構可愛かったし、良くない?」

「良いわけねぇだろっ?よく見ろ!こんな純粋無垢な可愛い子につける名前が、元カノと同じでいいのか?」

「うーん、じゃあ春人くんどんなのがいいの?」


そう言われても人に名前なんかつけた事ないし…

それに少なくとも何かしら意味があったりした方が良いんじゃないのかな?
女の子だし、何かこう可愛いとか綺麗とかそう言う…


「あ、そろそろ海璃着くって!わっ、外雪降ってるってさ…」

「どうりで寒いわけだよな…」

「そういやこの子が家に来た日も雪…降ってたわ」


そうだ…あの日。
店を出た時、冬弥ん家行くのやめようかと思ったくらいめっちゃ寒くて、雪…降ってた…  


「あっ!」

「おっ、どうした?」

「ゆき…ゆきが良いんじゃない?」

「ゆき…いいなぁ!この子色白いし合うかも!」

「ゆきっ…」


キャッキャッと笑う赤ちゃんに俺も嬉しくなって、思わず抱き上げてもう一回その名前を呼んだ。


「ゆーきっ」

「あー」

「ねぇっ!冬弥!返事したよっ!」

「ふはっ!気に入ったんじゃね?」

「ゆきで良い?ねぇ、良いかな?」

「春人が気に入ったならそれでいいよ♡」

「ふふっ…ゆーきっ♡」


俺がつけたこの名前を、この子が一生使っていくのかどうかは分からないけど…
でも今この瞬間、名前もなかったこの子に初めて名前がついたんだ。

俺の子でもなんでもないけど何かそれがすごく嬉しくて、親になるってこんな気持ちなのかなぁなんて思うと同時に、俺らがこの関係を続けていく限り子供を授かるという未来はない訳で、少し複雑な気持ちになる…


「どうした?喜んだりしょぼんとしたり、忙しいな?」

「うん…何でもない。大丈夫…」


冬弥は少し困った顔をして俺の顔を覗き込んで来るから、黙ってるのも良くないかと思って想いを口に出した。

「冬弥はさ、子供好きじゃん?」

「うん」

「俺じゃ冬弥の事パパにしてあげられないんだなぁと思ったら…何かさ…」

「んな事気にしてたの?」

「だって…」

「子供は好きだけどさ…俺、春人のが好きだからそんなこと気にしないよ?」

「っ…////」


恥ずかしすぎて言葉が出ない…っ
お、俺も好きだとか返した方がいいんだろうか…


「それに養子って手もあるんじゃない?」

「養子…?」

「うん、別に春人が産まなくても…」

「何で産むの俺前提なんだよっ」

「だって俺がパパなら春人がママだろ?」

「…ん、まぁどっちでもいいけど…」

「まぁ今の時代、色んな選択肢があると思うよ?」

「そっか…」

「そんな深刻に悩むなって、俺らまだ付き合い始めたばっかじゃん?」

「うん…確かに…」
 

何だか一人先走って思い悩んだことが少し恥ずかしくて、ゆきをあやす素振りをしながら立ち上がり、冬弥が携帯をいじっているのを少し離れた所から眺めていた。


「やーけど嬉しいわ」

「えっ?」

「だって俺との将来考えてくれてるってことだろ?」

「やっ、別にそんなっ////わ…っ!」


携帯を置いてすくっと立ち上がった冬弥に、後ろからゆきごと抱きしめられて恥ずかしくて思わず首をすくめる。


「ずっと一緒にいような♡」

「…うん////」


冬弥からこんな事言われる日が来るなんて、思ってもみなかった…

嬉しさと恥ずかしさでいっぱいの中、後ろから覗き込む冬弥の顔をゆきがガッチリ掴んで、痛い痛いと言いながら笑う冬弥の優しい笑顔に癒される。

俺だって冬弥が一番好きだ…
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