実らない恋だと思ってたのに!?〜小さな天使は僕らの恋のキューピットだった♡〜

むらさきおいも

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第一章 舞い降りた天使

ピンチヒッター(夏希)

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冬弥を送り出した後、俺と涼二は赤ちゃんの様子を見に、冬弥の部屋へと向かった。


「お邪魔しまぁす…」

「寝てるのかな…?」


そっと扉を開けてベビーベットを覗き込むと、赤ちゃんはまだスヤスヤと眠っていて一先ず胸をなでおろした。


「よかったぁ…まだ俺らの出番はなさそうだね」

「うん、そうだな…けどさ、俺さっきから思ってたんだけど」

「うん、なに?」

「俺ら何すればいいの?」

「えっ?何って赤ちゃんのお世話でしょ?」

「うん…だから赤ちゃんのお世話って何をすればいいの?」


しまったぁ…っ!
肝心な事、何も聞いてなかった…っ!

しかも俺、さっきは空の宿題見てて赤ちゃんのお世話一切してなかったんだった。

なぜ俺はあんな意気揚揚と出来るから任せてっ!なんて言えたんだろう。
今になって自分の無責任さに嫌気がさしてくる…


「涼二、オムツ替えた事ある?」

「ない」

「ミルクは?」

「うん、ない」

「あ、じゃあ抱っこ!抱っこは?」

「ないな!」

「ですよねぇ…」


涼二のその、「ない」は、清々しいほどに自信たっぷりで、全く役に立ちそうにない。

さて、どぉしよ…
今から冬弥に連絡するなんてそんな野暮な事は出来ないし、誰かに助けを求めるにしたって誰がいる?
それにこんな夜中に誰も掴まるわけが無い…

一人慌てふためく俺を他所に、涼二は普段と変わらない様子で冷静にベットに腰をかけた。


「まぁ寝てるんだし大丈夫だろ?俺らもちょっと休もうぜ?」

「なんでそんな余裕なんだよ…」

「慌てたってしょうがないだろ?ほらっ、夏希もこっちおいで?」

「うん…わかったよ」


それからしばらくは何事もなく俺は涼二の隣に座り、今度お店で新しく出すメニューの写真を見せてもらったり、俺の塾での仕事の話なんかをしたりして時間は過ぎていった。

そして俺も涼二も疲れて2人ベットに横になりウトウトしてきた頃…それは起きた。

ふぇーんと泣き出した赤ちゃんに思わず体を起こし、ついにこの時が来てしまったと二人して顔を見合せた。

何をどうしたらいいのか分からなくて慌てふためく俺の横で、動揺する素振りも見せずに冷静に携帯と向き合う涼二…

この、無駄に落ち着いてる感じが今はなんだか頼もしく見える。


「あぁどうしよっ!とにかく抱っこ!?抱っこしたらいい?」

「まぁ落ち着けって。泣いたからってすぐ何かしなきゃいけないわけじゃないだろ?」

「そ、そうだけどっ…」

「えっと。うーん…夜泣きの原因…色々あるんだなぁ…とりあえずオムツ替えてみる?」

「オムツねっ!わかった!!…って、だからやった事ないんだってぇ…!」


まごまごしてる俺を他所にベットの周りに置かれてる荷物の中からオムツを探し当てた涼二は、俺の顔を見つめニヤッと笑った。


「ふふっ…あった♡」

「でもどうやるのかわかんないよぉ…」


携帯で調べながらやっとのことオムツの取替完了…
結構なおしっこの量に驚きながら、そして女の子という事にだいぶ戸惑いながら一仕事終えたにも関わらず、赤ちゃんのご機嫌は良くならない。


「うーん、となるとやっぱりお腹空いたのかな?この位の子は乳幼児って言うのか?おっぱいかミルク…まぁどう考えてもこの場合ミルクだよな。夏希もしかしておっぱい出る?」

「出るわけないでしょっ!」

「ふはっ!冗談にきまってんじゃん」


涼二はいっつもこうやって俺をからかって遊ぶんだからっ…
でも、俺はそんな涼二が先輩としても友人としても大好きなんだ。


「…夏希?怒った?」

「え?あぁ、全然っ!で、ミルクってどうやって作るの?」

「えーっと…哺乳瓶、粉ミルク、人肌にあっためたお湯…哺乳瓶は消毒済みの綺麗な物…か」

「あっ!キッチン!多分そこにあるんじゃないかな?冬弥と春人がそこでやってた気がする!」

「じゃあ行ってみよう」

「赤ちゃんほっといて平気かな…?」

「じゃあ夏希、見ててくれる?」

「うん…わかった…」


涼二がキッチンに降りていってからと言うもの、赤ちゃんの泣き声は大きくなるばかりで一向に泣き止まない。

抱っこしてあげた方がいいんだろうけど俺にそんな勇気はなくて、トントンとあやすだけで精一杯。

冬弥も春人も凄いなぁ…
今頃あの二人どうしてるだろう。
ちゃんと分かり合えたかな?
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