実らない恋だと思ってたのに!?〜小さな天使は僕らの恋のキューピットだった♡〜

むらさきおいも

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第一章 舞い降りた天使

真面目な話(冬弥)

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キッチンでコーヒーを煎れながら、頭の中を整理すべく考えた。

春人は素直なのに天邪鬼で不器用で、自分の事となると途端に黙り込む。

それはわかってた事だったのに…
もっとちゃんと向き合ってれば、逃げないでちゃんと伝えてればこんな事にならなかったのかな?

でも、あの時はわかんなかったんだ…
あの感情がなんなのか…

春人の事は友達として好きだったし、何なら本当にちょっと可愛いとさえ思ってた。

けど、まさかあんな風に求められると思ってなかったし、それがどういう意味なのかもわからなかったから、わからないまま自分がどんどん春人にのめり込んでいきそうになるのが正直怖かった。 

だから泣いてる春人を見た時、ハッキリさせない方が春人も俺も傷つかずに済むだろうって、酔ったせいにしてはぐらかしたんだ。
その方が…いつも通りの方が楽だったから…

まさか、その事で春人を苦しめてたなんて思ってもいなかった。

ケトルのお湯をコーヒーの入ったカップに注ぐと、一呼吸を置いてリビングに向かう。

毛布にくるまったままソファーで膝を抱える春人に声をかけると、少しは落ち着いたのかひょこり顔を出し両手を伸ばしコーヒーを受け取ってくれた。


「ん、熱いからな」

「うん。ありがとう」


「あの時…俺、どうしたらいいかわかんなかった。お前の気持ちも自分の気持ちもわかんなかったし、泣くくらい後悔させたなら忘れた方がいいのかもって思ったから…だから忘れようって…」

「俺は後悔なんてしてないっ!でもっ、怖かった…俺のせいで元の関係がぐちゃぐちゃになっちゃったらどうしようって…そしたら何か訳わかんなくなって、気付いたら泣いてた。だから冬弥が忘れようって言うなら忘れようって…っ」

「そんなのさぁ、言ってくんないとわかんないじゃん。あの時だって昨日だって、肝心な事は何も言わねぇんだもん。我慢すんなよ、嫌なら嫌って言って?」

「ちがっ、嫌じゃないっ!そうじゃなくて…っ」 

「じゃあ何で俺が好きって言ってんのにはぐらかすの?」

「ごめんなんて言うからじゃんっ…!」

「だっ、だからそれはそんな意味じゃないって言ってんだろ?大体お前だって俺が他の奴と仲良くしてれば拗ねるくせに、近づけば避けるじゃんっ…意味わかんねぇよっ…!」

「意味わかんねぇのはお前の方だろ…っ!?ふざけてんのかマジなのか全然わかんねぇんだもんっ…」


あぁダメだ…こんな事が言いたいんじゃない…
これじゃまた同じことの繰り返しだ。

あの時は答えが出せなかったけど今は違う…今はちゃんと―――

カップを握りしめたままホロホロと泣き出す春人の両手を包み込みしゃがむと、今度こそはちゃんと春人と向き合おうと覚悟を決めた。


「春人、ちゃんと聞いて…?おふざけ一切無しだから」

「うん…っ」

「俺マジだから…あの時は混乱してどうしていいかわかんなくてあんな事言ったけどあの時から俺…お前の事気になって仕方なかった。だからちょっかい出して気を引こうとしたりしてたけどもうそういうのやめる。春人は俺の事怒ってるかもしんないけど今更受け入れてもらえるかわかんないけど、俺…本気で春人の事…好き」

「え…嘘だ…っ」

「嘘じゃない、本当」

「後で後悔しない…?」

「するわけねぇだろ?好きなんだから」

「でもっ、俺ふわふわモチモチじゃないしっ…」

「はぁ?なんだそれ?」

「男だよ…っ!?俺…っ」

「だから何だよ…お前こそ俺の事怒ってんだろ?嫌だったら嫌だって言っていいんだぞ…?」


そうは言ったものの本当に嫌だなんて言われたら、俺ショックで寝込むかもしれない…

春人の答えをドキドキしながら待っていると、春人はほっぺを膨らまし唇をとがらせた。


「怒ってる…忘れたくても忘れらんなくて振り回されて、千秋と仲いいところ見せつけられて、今更マジとか…どうしてくれんだよっ…」

「…っ、ごめ…あ、いや」


ごめんって言ったらまた怒られそうな気がして言葉を詰まらせれば、照れながら顔を真っ赤にする春人を見て少しほっとする…


「…っ、ギュッてして?そしたら、許す…」

「うん、わかった…」


カップを受け取りテーブルに置くと、俺は毛布ごと春人を抱きしめた。

俺だって春人の本音が知りたい…
これ以上はぐらかされるのは嫌だ。

毛布で隠れる春人の耳元に顔を寄せて、抱きしめる力を強めて呟いた…


「春人の気持ち…ちゃんと教えて…?」

「…っ、苦しい…って」

「俺も苦しい…お願いっ…言って…?」


祈るよな気持ちで今か今かと春人の返事を待つ俺の心臓は、聞こえてしまうんじゃないだろうかってほどバクバクだ…


「好き…大好き…冬弥…っ」

「ほんと…?」

「うん///」

「よかったぁ…」


心底ほっとした俺は、春人と顔を見合わせて笑いあった。


「体、少しは暖かくなった?」
 
「ううん、まだゾクゾクする…」

「暖かくしてもう寝な?」

「うん…あっ、そう言えば赤ちゃんどうしたんだよっ…?早く帰った方がいいんじゃない?」

「あぁ、平気。夏希と涼さんが見てる…はず」

「え?なんで!?」

「助っ人…的な?」


春人はまだ少し赤い顔で不思議そうに首を傾げた。

あとで夏希と涼さんにも連絡しておかなきゃ…
これも2人のおかげだもんな。

「冬弥…だとしても早く帰った方が…」

「ん?なんで?」

「あの二人に出来ると思う…?赤ちゃんのお世話…」

「…あぁ、出来るわけないな…」


改めて考えただけでゾッとした…
頭は良いが不器用な夏希に、真面目で面倒見は良いがどこかすっとぼけてる涼さん。

そもそも赤ちゃんの面倒なんて見たことないであろうあの二人に、俺は何故任せても平気だと思ったんだろう。

それだけ春人のことで頭がいっぱいだったんだ…
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