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第一章 舞い降りた天使
ヤキモチ!?(冬弥)
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程なくして涼さんと夏希が家に来た。
戸惑う俺を他所に玄関先で急かす夏希と、それに比べればいくらか冷静な涼さん…
「赤ちゃんは?」
「とりあえず寝てる」
「じゃあ早く行ってきて?」
「…っ、いや…けどさ?行ったところでどうすりゃいんだよ…何で怒ってるのかもわかんないのに…」
夏希は今すぐにでも言ってこいと言わんばかりに俺に圧をかけてくるが、当の本人の理解が全く及んでいない。
すると、涼さんがぼそっと一言呟いた。
「多分拗ねてるだけだと思うんだよね…」
「は?何で?何に?意味わかんねぇ…」
拗ねてる?怒ってるとかではなくて?
「俺が帰り際に会った時…春人泣いてたの。理由を聞いても教えて貰えなかったけど…」
「え…泣いてたの?」
「うん、思い当たる節…ない?」
夏希がいつ帰ったのか知らないけどその時から泣いてたんなら俺が出て行ってからもうずっと泣かせてたってこと?
それはさすがに心配だ…俺なんかしたか?
よく考えろ…俺…っ!
一先ず二人をリビングに通すと、テーブルに着きまた考え直す。
思い当たる事と言えば一番には昨日のあの事…
けど、だったらそもそも今日くるか?
後は春人一人に赤ちゃんを押し付けた事、濃厚なのはこれだよな…
一人記憶を巡らせ考えていると、涼さんが突然全く関係ない話をし始めた。
「冬弥さ?千秋とは久しぶりに会ったの?」
「ん?あぁ、そうだな…結構久しぶりに…」
「千秋、元気だった?」
「おぅ、まぁ普通に…?あ!そうそう!千秋またダンスの大会出るらしくてさぁ!明日もイベントだって言って張り切っててさ?てかあいつさぁ、あんなイカついのに赤ちゃんに触るのめっちゃ緊張してんの!ふふっ…ウケるっしょっ?」
話し終わってふと二人を見ると、二人は視線を合わせて揃ってキョトン顔…
俺、何か変な事言ったか?
からの二人揃ってのため息にいよいよ焦り出す俺…
「あ…?え…っ!?…何!?」
「そりゃさぞかし楽しかっただろうねぇ…いや、いいんだよ…いい事だよ仲がいいってことはね」
「なっ…何だよ…っ、夏希!」
「まだわかんない?ヤキモチだよ!ヤキモチっ!」
ヤキモチ!?だからそれは何に対しての!?
未だ混乱してる俺に対して、やたら冷静な涼さんが静かに話し出す。
「春人ね、千秋が冬弥ん家に向かってる事知って急いで支度して出てったの。それまで仕事中もずっと寝てたのにね。冬弥の事千秋に取られたくなかったんじゃない?」
取られるも何も元々千秋とはただの友達だし、ヤキモチなんて…
それに別に千秋とは、いつも通り話してただけだぞ?
確かに久々でテンションは上がってたかもしんないけど…
いや、まて…でも逆にそんな事でヤキモチ妬いちゃうの?
だとしたら、春人めちゃくちゃ可愛くない!?
ややや、でも…でもあいつは俺があんな事して怒ってんだろ?
俺の事嫌なんじゃねえの?
あああぁ、やっぱわっかんねぇよ…っ!
「冬弥…1人100面相だけど…大丈夫…?」
「ふふっ…面白い…」
俺、絶対二人に完全にからかわれてる…
「笑うなよっ…俺だって真剣に考えてんだからっ…」
「ねぇ、ぶっちゃけ冬弥って春人の事どう思ってんの?」
「えっ、どうって…」
夏希の質問に正直どう答えていいか分からない。
好きなのは確かだけど、こんな事簡単に言えることじゃないし…
それに―――
「だって春人はどう見たって冬弥の事好きでしょ?冬弥だって気が付いてるんじゃないの?」
俺だってそう思ってたよ?けどあんな事言われて避けられたら、違うのかなって思うじゃん…
もし気持ち伝えて拗れて春人に嫌われたら、それこそ俺立ち直れないと思う。
「まぁまぁ、夏希。そこら辺は二人でさ…ね?」
「そっか…そうだよね!じゃあ早く行ってきな?」
「や、でも…」
「ん?あれ…?」
涼さんの間の抜けた声に俺と夏希が注目すると、涼さんはそこに脱ぎ捨ててあった上着をひょいっと持ち上げた。
「これ…春人のじゃない?」
そのしっかりとした冬物のダウンは間違いなく春人が今日来てきた物で、それがここにあると言う事は、あいつは着の身着のまま出て行ったって事が確定したのだ。
「ねぇ…しかも鍵入ってる…」
「は?じゃあ帰れてないって事!?何で戻ってこねぇんだよっ!ったくどこにいんだよっ!」
「電話したけど出なかったし…どこいっちゃったんだろ…」
「夏希、もう一度かけてみたら?」
そして夏希が春人の携帯にかけたその時…
シーンと静まりかえる脱衣所の方から、バイブ音がかすかに聴こえた。
俺は音のする方に近づくと、洗面台の上で震えてる春人の携帯を発見。
風呂掃除の時にポッケから出してそのままか…あのバカっ…
「俺探してくるっ…!あと頼んだっ!」
俺は春人の携帯とダウンを握りしめ、急いで部屋を出た。
戸惑う俺を他所に玄関先で急かす夏希と、それに比べればいくらか冷静な涼さん…
「赤ちゃんは?」
「とりあえず寝てる」
「じゃあ早く行ってきて?」
「…っ、いや…けどさ?行ったところでどうすりゃいんだよ…何で怒ってるのかもわかんないのに…」
夏希は今すぐにでも言ってこいと言わんばかりに俺に圧をかけてくるが、当の本人の理解が全く及んでいない。
すると、涼さんがぼそっと一言呟いた。
「多分拗ねてるだけだと思うんだよね…」
「は?何で?何に?意味わかんねぇ…」
拗ねてる?怒ってるとかではなくて?
「俺が帰り際に会った時…春人泣いてたの。理由を聞いても教えて貰えなかったけど…」
「え…泣いてたの?」
「うん、思い当たる節…ない?」
夏希がいつ帰ったのか知らないけどその時から泣いてたんなら俺が出て行ってからもうずっと泣かせてたってこと?
それはさすがに心配だ…俺なんかしたか?
よく考えろ…俺…っ!
一先ず二人をリビングに通すと、テーブルに着きまた考え直す。
思い当たる事と言えば一番には昨日のあの事…
けど、だったらそもそも今日くるか?
後は春人一人に赤ちゃんを押し付けた事、濃厚なのはこれだよな…
一人記憶を巡らせ考えていると、涼さんが突然全く関係ない話をし始めた。
「冬弥さ?千秋とは久しぶりに会ったの?」
「ん?あぁ、そうだな…結構久しぶりに…」
「千秋、元気だった?」
「おぅ、まぁ普通に…?あ!そうそう!千秋またダンスの大会出るらしくてさぁ!明日もイベントだって言って張り切っててさ?てかあいつさぁ、あんなイカついのに赤ちゃんに触るのめっちゃ緊張してんの!ふふっ…ウケるっしょっ?」
話し終わってふと二人を見ると、二人は視線を合わせて揃ってキョトン顔…
俺、何か変な事言ったか?
からの二人揃ってのため息にいよいよ焦り出す俺…
「あ…?え…っ!?…何!?」
「そりゃさぞかし楽しかっただろうねぇ…いや、いいんだよ…いい事だよ仲がいいってことはね」
「なっ…何だよ…っ、夏希!」
「まだわかんない?ヤキモチだよ!ヤキモチっ!」
ヤキモチ!?だからそれは何に対しての!?
未だ混乱してる俺に対して、やたら冷静な涼さんが静かに話し出す。
「春人ね、千秋が冬弥ん家に向かってる事知って急いで支度して出てったの。それまで仕事中もずっと寝てたのにね。冬弥の事千秋に取られたくなかったんじゃない?」
取られるも何も元々千秋とはただの友達だし、ヤキモチなんて…
それに別に千秋とは、いつも通り話してただけだぞ?
確かに久々でテンションは上がってたかもしんないけど…
いや、まて…でも逆にそんな事でヤキモチ妬いちゃうの?
だとしたら、春人めちゃくちゃ可愛くない!?
ややや、でも…でもあいつは俺があんな事して怒ってんだろ?
俺の事嫌なんじゃねえの?
あああぁ、やっぱわっかんねぇよ…っ!
「冬弥…1人100面相だけど…大丈夫…?」
「ふふっ…面白い…」
俺、絶対二人に完全にからかわれてる…
「笑うなよっ…俺だって真剣に考えてんだからっ…」
「ねぇ、ぶっちゃけ冬弥って春人の事どう思ってんの?」
「えっ、どうって…」
夏希の質問に正直どう答えていいか分からない。
好きなのは確かだけど、こんな事簡単に言えることじゃないし…
それに―――
「だって春人はどう見たって冬弥の事好きでしょ?冬弥だって気が付いてるんじゃないの?」
俺だってそう思ってたよ?けどあんな事言われて避けられたら、違うのかなって思うじゃん…
もし気持ち伝えて拗れて春人に嫌われたら、それこそ俺立ち直れないと思う。
「まぁまぁ、夏希。そこら辺は二人でさ…ね?」
「そっか…そうだよね!じゃあ早く行ってきな?」
「や、でも…」
「ん?あれ…?」
涼さんの間の抜けた声に俺と夏希が注目すると、涼さんはそこに脱ぎ捨ててあった上着をひょいっと持ち上げた。
「これ…春人のじゃない?」
そのしっかりとした冬物のダウンは間違いなく春人が今日来てきた物で、それがここにあると言う事は、あいつは着の身着のまま出て行ったって事が確定したのだ。
「ねぇ…しかも鍵入ってる…」
「は?じゃあ帰れてないって事!?何で戻ってこねぇんだよっ!ったくどこにいんだよっ!」
「電話したけど出なかったし…どこいっちゃったんだろ…」
「夏希、もう一度かけてみたら?」
そして夏希が春人の携帯にかけたその時…
シーンと静まりかえる脱衣所の方から、バイブ音がかすかに聴こえた。
俺は音のする方に近づくと、洗面台の上で震えてる春人の携帯を発見。
風呂掃除の時にポッケから出してそのままか…あのバカっ…
「俺探してくるっ…!あと頼んだっ!」
俺は春人の携帯とダウンを握りしめ、急いで部屋を出た。
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