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第一章 舞い降りた天使
夏希先輩
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「こんばんは~っ!」
「あっ、夏くんだっ!」
なんだ、今日は随分と人が来るんだな…
そう思いながら豚汁を食べ終わると、俺の出番てそんなにないんじゃないか?とぼやっと考えながら食器をキッチンに運んだ。
そして置きっぱなしになっていたみんなの食器もついでに洗いながら、昨日も寝てないしもう帰ろうかな?なんて考えがよぎる…
一通り片付け終わりリビングに戻ると、赤ちゃんを抱っこさせようと冬弥が夏希に詰め寄り、夏希が全力で拒否しているところだった。
「無理無理っっ!!怖いからっ!」
「大丈夫だって」
「お、俺おっちょこちょいだからっ…落としそうで怖いしっ」
「床に座って抱っこすれば落とすって事ないじゃん、ほら」
「う、うん…」
丁寧に床に正座する夏希の隣に冬弥が座り、夏希の腕の中にゆっくり赤ちゃんを移動させると、わかりやすいくらい緊張してた夏希の表情が次第に柔らかくなっていく。
「わぁっ…軽いし柔らかい…」
「女の子って柔らかいのよ」
「えっ?赤ちゃんだからじゃなくて?」
冬弥の一言に思わず疑問をなげかけた俺。
赤ちゃんって男女問わず、みんなふわふわしてるもんだと勝手に思ってた…
「うん、男の子ってもっとなんて言うか…がっちりしてる気がする」
「へぇ…生まれながらに男女の体の質って違うんだな」
千秋も感心してる様子…
なのに冬弥と言ったらまた余計な事を口走るから…
「うーん、俺も良くわかんないけどそんな感じ?ふわふわもちもちで女の子って感じしていいよねぇ♡」
「やめてよ、そういう言い方っ!」
空の言う通り、本当にそういう言い方良くない…
分かってる…
分かってるよ?
冬弥が当たり前に女の子が好きな事くらい。
だけどそんな風に言われたら、俺みたいな普通の男なんて入り込む隙もないじゃん。
当たり前なんだけど…っ
「ね…もう大丈夫…やっぱり緊張しちゃう…っ」
「ふふっ、冬弥ぁ?夏さん無理だって」
「あいよ」
これ、こういうところ。
なんか俺が敵わないって思っちゃうこの二人の空気感…
これが堪らなく俺を追い詰めるんだ。
「ねぇ、そしたら夏くん、勉強教えてくれない?」
「あ、うん!いいよっ」
「じゃあ僕、先にお風呂洗ってきちゃうね」
「偉いなぁ空…いつもやってるの?」
「うん、今ママ達いないからさ」
するとすかさず冬弥が赤ちゃんを抱っこしながら、夏希に呼びかける。
「あ、そしたら夏希さ、桜も見てやってよ」
「うん!もちろん、桜ちゃん部屋?」
「おう、いつも通り」
「了解っ」
え、待って!
夏希と空いなくなっちゃうの!?
冬弥と千秋と三人だけとか無理…っ
帰るって言うなら今だよな…
だけど夏希の離脱には意味があって…俺は?
寝てないから帰るって言うなら、最初っから来なきゃ良かったよな?
飯だけ食って帰るとか…気まずいじゃん!
あぁどうしよ…
あっ!そうだ!!
「空!俺風呂洗うわ!勉強大事だからなっ」
「え?あ…いいの?」
「お、おうっ!」
「そ?じゃあ…お願いしまぁす!」
「任せとけっ」
他人の家の風呂洗います!とか自分で言ってて意味がわかんないけど…
だけど、ここから離脱できる安心感には変えられなかった。
ホッと胸を撫で下ろす俺だったが、冬弥と千秋が不思議そうな顔で俺を見てて、何か言わない事には先に進めない雰囲気だ。
「あ…ほら!俺掃除得意だしっ?」
「…おう、何か悪いな」
「いや、せっかく手伝いに来てんだし…風呂洗うくらいしないと!」
そしてそそくさと風呂場に向かうと、無我夢中で掃除を始め時間稼ぎにと排水溝やらカビ取りやら、普段しなくていい様なありとあらゆる所を隅から隅まで綺麗にした。
掃除し始めてからどれだけの時間が経過したのだろう…
俺を呼ぶ声にも気が付かず夢中になっていると、肩をちょんっと突っつかれ我に返った。
「ぉわっ!?どっ、どうした?」
「トイレに来たらまだ掃除してるから…」
「あっ…おぅ…」
「もう結構時間経つけど…大丈夫?」
俺を心配してか、声をかけてきたのは夏希だった。
「大丈夫…別に…集中しすぎただけ…」
「ねぇ春人。あんま抱え込まないでよ?」
「…っ、そんなんじゃないから」
「ならいいけど…空も心配してたよ?」
まさか、昨日の事…!?
この事はどんなに仲が良いみんなでも誰も知らないし、ましてや話した事なんかない。
さすがに昨日の一件だけじゃ俺の思いまでは気付かれないだろうし、あれだけ見れば冬弥が俺を羽交い締めにしてたってだけだから、多分バレてはいないだろうけど…
「…何か…言ってた…?空…」
「うん、昨日の事?あれは何だったんだろうって…」
「あれ…ですか…?」
「うん。冬弥と何かあったの?」
「あっ、いや…」
「空も思春期だからさ…あんま家では…」
「な…っ////違うからっ!あれは冬弥が勝手に…っ」
いやまて、空はどこまで知っててどこまで夏希に話した?
ここで余計なことを話したら墓穴を掘ることになる。
もう恥ずかしすぎて口から心臓がとび出そうだ…っ
「抱きつかれたって…?」
「う、うん…」
「冬弥は春人の事好きなんだね…」
「いやっ、あいつはいつもふざけてるだけで…っ」
「まぁ、とにかくあんま色々一人で抱え込まないでよ?」
「あ…っ、うん…」
夏希の言う好きって、友達としてじゃれ合ってる程度の好きだろ?
何を真に受けてんだよ…俺。
超絶恥ずかしいじゃん…
夏希に気づかれてないよな?
気持ちを落ち着けてそろそろ掃除を終わらせるべく、泡にまみれたふろ場を水で洗い流すと、排水溝に飲まれていく泡を見つめながらため息をついた。
俺のこんな気持ちも、泡と一緒に全部流れてしまえばいいのに―――
「あっ、夏くんだっ!」
なんだ、今日は随分と人が来るんだな…
そう思いながら豚汁を食べ終わると、俺の出番てそんなにないんじゃないか?とぼやっと考えながら食器をキッチンに運んだ。
そして置きっぱなしになっていたみんなの食器もついでに洗いながら、昨日も寝てないしもう帰ろうかな?なんて考えがよぎる…
一通り片付け終わりリビングに戻ると、赤ちゃんを抱っこさせようと冬弥が夏希に詰め寄り、夏希が全力で拒否しているところだった。
「無理無理っっ!!怖いからっ!」
「大丈夫だって」
「お、俺おっちょこちょいだからっ…落としそうで怖いしっ」
「床に座って抱っこすれば落とすって事ないじゃん、ほら」
「う、うん…」
丁寧に床に正座する夏希の隣に冬弥が座り、夏希の腕の中にゆっくり赤ちゃんを移動させると、わかりやすいくらい緊張してた夏希の表情が次第に柔らかくなっていく。
「わぁっ…軽いし柔らかい…」
「女の子って柔らかいのよ」
「えっ?赤ちゃんだからじゃなくて?」
冬弥の一言に思わず疑問をなげかけた俺。
赤ちゃんって男女問わず、みんなふわふわしてるもんだと勝手に思ってた…
「うん、男の子ってもっとなんて言うか…がっちりしてる気がする」
「へぇ…生まれながらに男女の体の質って違うんだな」
千秋も感心してる様子…
なのに冬弥と言ったらまた余計な事を口走るから…
「うーん、俺も良くわかんないけどそんな感じ?ふわふわもちもちで女の子って感じしていいよねぇ♡」
「やめてよ、そういう言い方っ!」
空の言う通り、本当にそういう言い方良くない…
分かってる…
分かってるよ?
冬弥が当たり前に女の子が好きな事くらい。
だけどそんな風に言われたら、俺みたいな普通の男なんて入り込む隙もないじゃん。
当たり前なんだけど…っ
「ね…もう大丈夫…やっぱり緊張しちゃう…っ」
「ふふっ、冬弥ぁ?夏さん無理だって」
「あいよ」
これ、こういうところ。
なんか俺が敵わないって思っちゃうこの二人の空気感…
これが堪らなく俺を追い詰めるんだ。
「ねぇ、そしたら夏くん、勉強教えてくれない?」
「あ、うん!いいよっ」
「じゃあ僕、先にお風呂洗ってきちゃうね」
「偉いなぁ空…いつもやってるの?」
「うん、今ママ達いないからさ」
するとすかさず冬弥が赤ちゃんを抱っこしながら、夏希に呼びかける。
「あ、そしたら夏希さ、桜も見てやってよ」
「うん!もちろん、桜ちゃん部屋?」
「おう、いつも通り」
「了解っ」
え、待って!
夏希と空いなくなっちゃうの!?
冬弥と千秋と三人だけとか無理…っ
帰るって言うなら今だよな…
だけど夏希の離脱には意味があって…俺は?
寝てないから帰るって言うなら、最初っから来なきゃ良かったよな?
飯だけ食って帰るとか…気まずいじゃん!
あぁどうしよ…
あっ!そうだ!!
「空!俺風呂洗うわ!勉強大事だからなっ」
「え?あ…いいの?」
「お、おうっ!」
「そ?じゃあ…お願いしまぁす!」
「任せとけっ」
他人の家の風呂洗います!とか自分で言ってて意味がわかんないけど…
だけど、ここから離脱できる安心感には変えられなかった。
ホッと胸を撫で下ろす俺だったが、冬弥と千秋が不思議そうな顔で俺を見てて、何か言わない事には先に進めない雰囲気だ。
「あ…ほら!俺掃除得意だしっ?」
「…おう、何か悪いな」
「いや、せっかく手伝いに来てんだし…風呂洗うくらいしないと!」
そしてそそくさと風呂場に向かうと、無我夢中で掃除を始め時間稼ぎにと排水溝やらカビ取りやら、普段しなくていい様なありとあらゆる所を隅から隅まで綺麗にした。
掃除し始めてからどれだけの時間が経過したのだろう…
俺を呼ぶ声にも気が付かず夢中になっていると、肩をちょんっと突っつかれ我に返った。
「ぉわっ!?どっ、どうした?」
「トイレに来たらまだ掃除してるから…」
「あっ…おぅ…」
「もう結構時間経つけど…大丈夫?」
俺を心配してか、声をかけてきたのは夏希だった。
「大丈夫…別に…集中しすぎただけ…」
「ねぇ春人。あんま抱え込まないでよ?」
「…っ、そんなんじゃないから」
「ならいいけど…空も心配してたよ?」
まさか、昨日の事…!?
この事はどんなに仲が良いみんなでも誰も知らないし、ましてや話した事なんかない。
さすがに昨日の一件だけじゃ俺の思いまでは気付かれないだろうし、あれだけ見れば冬弥が俺を羽交い締めにしてたってだけだから、多分バレてはいないだろうけど…
「…何か…言ってた…?空…」
「うん、昨日の事?あれは何だったんだろうって…」
「あれ…ですか…?」
「うん。冬弥と何かあったの?」
「あっ、いや…」
「空も思春期だからさ…あんま家では…」
「な…っ////違うからっ!あれは冬弥が勝手に…っ」
いやまて、空はどこまで知っててどこまで夏希に話した?
ここで余計なことを話したら墓穴を掘ることになる。
もう恥ずかしすぎて口から心臓がとび出そうだ…っ
「抱きつかれたって…?」
「う、うん…」
「冬弥は春人の事好きなんだね…」
「いやっ、あいつはいつもふざけてるだけで…っ」
「まぁ、とにかくあんま色々一人で抱え込まないでよ?」
「あ…っ、うん…」
夏希の言う好きって、友達としてじゃれ合ってる程度の好きだろ?
何を真に受けてんだよ…俺。
超絶恥ずかしいじゃん…
夏希に気づかれてないよな?
気持ちを落ち着けてそろそろ掃除を終わらせるべく、泡にまみれたふろ場を水で洗い流すと、排水溝に飲まれていく泡を見つめながらため息をついた。
俺のこんな気持ちも、泡と一緒に全部流れてしまえばいいのに―――
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