実らない恋だと思ってたのに!?〜小さな天使は僕らの恋のキューピットだった♡〜

むらさきおいも

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第一章 舞い降りた天使

春人と香月

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風呂から出てくると案の定香月はゲームに夢中で、俺が戻ってきた事に全く気が付いてはいないらしい。

ほんっと動物以外はゲームにしか興味無いのか?


「香月、出たから入るか?」

「あ、うん。でもこれ終わってから…」


こりゃいつになるかわからんなと思いながら赤ちゃんを見ると、小さなおててにさっきまでなかったおもちゃがしっかりと握られていた。


「香月?これどうしたの?」

「ん?おもちゃ箱にあったよ?ほら、ここ」


香月が指さす場所ベットの下に、赤ちゃん用のおもちゃが沢山入っていた。
お世話する事にいっぱいいっぱいで全然気が付かなった…

ほっと一息つくと、今度は赤ちゃんてお風呂どうするんだろ?と、ふとそんな事が頭をよぎるが…もし入れなきゃいけないとて出来る訳もないので知らんぷりをかます事にした。

そして次のミルクの時間が来る頃にはもう夜中の11時を回り、俺は眠気の限界を迎えていた。

だけどそこは言われた通り、1階に降りてミルクを用意する。

ここまでは何となく慣れてきたが、オムツはやっぱり何か嫌だ…
男の子ならまだしも、女の子なんて恥ずかしすぎてしんどい…


「香月?オムツやって」

「ん?いいよぉ!」


何でそんなにノリノリなんだ…
俺には理解できない…

そして結構手際よく作業をこなしていく香月に唖然としながら、こいつ一体どこでこんな技身につけてきたんだろうという疑問が頭に浮かぶ。


「お前なんでそんな出来んの?」

「ん?動物もオムツするよ?大体同じでしょ?」


同じでは無いと思うんだけど…
でもそれでもこなしてしまうなんて香月もやっぱり凄い。

オムツの替えも終わってミルクをあげるのは俺がやろうと思って抱っこしようとするが、やはり赤ちゃんを抱き上げるのはまだ凄く緊張する。

ふにゃふにゃの体を持ち上げ床にあぐらをかき、その上に赤ちゃん乗せると手足をバタバタさせてミルクを欲しがるから、哺乳瓶の先をお口に持っていけば勢いよく吸いついてくれた。

ゲームに夢中になっていた香月も、いつの間にかその様子を覗き込むようにじっと眺めていた。


「わぁ~、やっぱ可愛いねっ!いっぱい飲んで大きくなるんだよぉ~!」

「なぁ、この子の親…なんで置いてったんだろうな」

「そうだねぇ…なんでだろうね…」

「この子、どうなるのかな?」

「うーん。冬弥のママが何とかするんじゃない? 」

「幸せになれるのかな?」

「あら?春くん情が湧いてきちゃった?」

「そんなんじゃねぇよ…」


強がってそんな風に言い放ったけど、情が湧いてないと言ったら嘘になるかもしれない。

今この子には俺がいなきゃいけなくて、俺がやらなきゃこの子は
生きていけないんだ。
そう思うとなんだか凄く身が引き締まったんだ。

ミルクを飲み終わりスポッと哺乳瓶を口から外すと、物足りなかったのか顔を歪めて泣き出すから、もっと飲ませた方がいいのか?と思い香月に相談すれば、飲ませすぎも良くないと言われ
仕方なくさっき教わったゲップを促す為に赤ちゃんを担ぐと、上手に空気が出て一安心。

そのままトントンすれば徐々に泣き止みウトウトとしてきた様で、ベットに下ろし眠るまで様子を見てると何だかこっちまで眠くなってくる…


「春人ぉ?」

「ん…?なに?」

「眠かったら寝ていいよ?」

「ん…じゃあ後よろしく…」

「了解っ!」


こんな夜中まで何でテンション高くいられるんだかわからないけど、ここは香月に任せて俺は明日も仕事だし寝る事にした。

久々の冬弥のベットに何だか複雑な心境だが、そんな事を考える余裕もなく俺は秒で眠りについた。

そしてその後…ぴぇーんと泣き出した赤ちゃんと、慌てふためく香月に起こされ時計を見たのが夜中の2時頃…


「ん…なに?どぉしたの?」

「急病!医院長だけじゃ無理だって言うから悪いけど後頼むねっ!」

「あ…うん…」


寝ぼけ眼で赤ちゃんを抱き抱え香月を見送ると部屋に二人きり。
突然の出来事にどうしていいかわからなくなった俺は、赤ちゃんを抱きしめて途方に暮れた…

そして徐々に頭が冴えてきて、やっと3時間置きのミルクの事を思い出した。

あ…作らなきゃ…その前にオムツ…

テープを剥がすもそこからどうしたらいいのかわかんなくて、取り敢えずサッとだけ拭いて新しいのに取り換えた。

やっぱりこれだけはどうにも恥ずかしい…

ギャンギャン泣きじゃくる赤ちゃんに背中を押され、寒さに震えながら1階に降りていけば使いっぱなしの哺乳瓶がそのまま並んでいて、これをどうしていいかも分からずまた新しいのを取り出す。

しかし、きちんと用意されてるところが冬弥の凄いところだ。
ミルクも小分けにしたものがまだ残ってる。

普段面倒くさがりなくせにこういうとこマメなんだよな…
だからモテんのかな…

なんて事を考えてる自分に恥ずかしくなって邪念を振り払うと、2階の赤ちゃんがいよいよ爆発したように泣き出し、急かされるようにミルクを作り哺乳瓶をホッカイロ替わりに手を温めてながら急いで部屋に戻った。

眠くてしんどい俺は、ベット上で壁によりかかりながら赤ちゃんを抱っこしてミルクを飲ませた。

赤ちゃんは哺乳瓶を掴み一生懸命ミルクを飲んでいる…

周りには結婚して子供もいる友達もいるが、こんなに大変な日々を送ってるのかと思うとマジで尊敬だと思った。

結婚のけの字どころか彼女もいない俺には一生縁がない事だと思ってたのに、結婚して子供も悪くないかなぁなんて…

けどその為には1つ諦めなきゃいけない事がある。

ある人への思いだ…

はぁ…と溜息をついて無くなった哺乳瓶を口から離すと例のごとく物足りないと泣くから、一連の手順であやしゲップを促す。

さすがに夜中だから空達を起こす訳にもいかず、眠気と戦いながら頑張ってたんだがついに俺にも限界が来た。

ベットの壁際に赤ちゃんを寝かせトントンしながら、自分もウトウトし始めてしまい、赤ちゃんが寝たのを確認する前にいつの間にか隣で寝てしまっていたのだ。
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